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小説【間法物語】6 音はソト。至福はウチ。

【間法物語】
日本語人が古来より持っている「魔法」がある。 それは「間法」。
「間」の中にあるチカラを扱えるようになった時、「未知なる世界」の扉が開かれ、「未知」は、いつしか「道」となって導かれていく。

「間法使いへの道」を歩き始める僕の物語。
【PROFILE】
イエオカズキ 「間」と「日本語」の世界を探求し続けるストーリーエディター。エッセンシャル出版社価値創造部員。


鬼は外。福は内。

昔、世界のはじまりの頃、鬼は内に住んでいた。内に住んでいたとき、オニに、スガタカタチはなく、オニは、ただのオンだった。内側では、鬼は、「ON-I」で、音でしかなく、音(ON)と愛(I)はひとつにくっついたままだった。それが、世界のはじまりの頃の、ONIという存在の正体だった。

昔々、まだ、世界のはじまりの頃、人々はシンプルな音の連なりを口にしていた。
アーーーとかオーーーとかウーーーとか、エエエとかイイイとか。
そう、赤ちゃんの泣き声や野生の動物の鳴き声のような音の連なり。
それは、決して、コトバという文化が彼らになかったわけではなく、簡単な音の連なりだけで、彼らは充分な意思の疎通が出来ていた。
シンプルな音には、深くて、広い、母のように、全てを包み込む愛があった。

世界のはじまりの頃、ツヅミのエネルギーは、世界を包み、フエのバイブレーションで、世界は震え、コエのパワーが、世界を超え、音は階段のように、多重なシステムを内包していたのだ。そのくらい、シンプルな音は、大きくて、豊かな、宇宙のように、全てを動かす力を持っていた。

あるとき、季節の分かれ目に、鬼は外に出され、福が内にしまわれた。

季節は巡る。世界は、ただ循環し、巡回し、順応する。
ただただ、長い時間が流れ、すべては流れ、とどまり、また、すべては流れる。
ひとつひとつ超えていくと、ひとつずつ単純になり、ひとつになると、ふたつに増える。
さまざまな場所を発見し、いろいろな道具を発明し、たくさんの家族が増え、人々は、音を進化させていく必要に迫られる。

音の豊かな多重システムは、外に出され、そのシステムは、複雑な構造になって、自動で繁殖し、外側を支配し、ついには、巨大な魔城となって、世界を囲み始めた。

内から外へエネルギーを反転させることで、人間をミイラにしてしまう装備を整え、音のシステムは、いつしか、恐ろしい鬼のようになってしまった。

世界に響き渡り、輝きを生み出してきた、真の声という至福の喜びは、内にしまわれ、外側でシフクだった『至福』は、内側に入ると『私腹』となり、簡単に、シフクは、私腹を肥やし始めた。
『至福』は、いつしか、『私福』となり、真の声は、私欲という高い塀に囲まれ、生きた屍のようになって、幽閉されてしまった。

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音は外。至福は内。

(つづく)

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これまでの「間法物語」はこちらから↓



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