ウグイス、つかまえた
風が気持ちよく頬をかすめる春の日、
ちーちゃんは、お父さんお母さんと公園にお花見にやってきた。
お父さんが手作りしたサンドイッチをほおばっていると、鳥の鳴き声がした。
ホーホケキョ!
「ウグイスだわ」
お母さんが言った。
「どこどこ?」
と、ちーちゃん。
でも、ウグイスの姿は見えない。
ホーホケキョ!
「どこで鳴いているのかな」
お父さんもきょろきょろ。
「いい声だね」
ウグイスの声が気に入ったちーちゃんは、おうちに持って帰ろうと思った。
ホーホケキョ!
「今だ!」
ちーちゃんは、両手で耳をふさいで、鼻の息を止めて、口をぎゅっと結んだ。
ホーホケキョ!
今度は、ちーちゃんの体の中で声が聞こえた。
急にちーちゃんがだまったから、お父さんとお母さんは心配そう。
「どうしたの、ちーちゃん」
「耳が痛いのかい」
でも、ちーちゃんは、じっとだまっている。
そこに、さっと鳥が飛んできて桜の枝に止まった。
緑色の小さな鳥だ。
お父さんとお母さんはまだ気づかない。
思わず、ちーちゃんが耳から手を離して小鳥を指さすと、
つかまえた声が、ちーちゃんの中から飛び出した。
ホーホケキョ!ケキョ、ケキョ、ケキョ!
あたりにひびきわたるウグイスの声。
ちーちゃんは、三人でいつまでも聞いていたいなと思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?