アジアンビューティーと言わないで
アジアンビューティーと褒められて怒ってしまったことがある。
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私は、たまに、年に1回くらい「アジアンビューティーだね」と言ってもらえることがある。
最初はビューティーという響きに心躍り
単純に嬉しかったのだけれど、
数回目に言われた頃から少しずつ違和感を覚えるようになった。
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「アジアンビューティーだね」の真意
「アジアンビューティーだね」というフレーズは、「美人だね」と言われるのとは、少し違う意味があると思う。
両者は言葉だけ見れば似ているけれど、
「アジアンビューティーだね」の方からは、
(日本以外のアジア圏で綺麗とされる顔だね)
だったり、
(僕のかわいいの基準からは外れるけど、世界的には綺麗とされている顔だね)というニュアンスを感じる。
だって、日本の王道かわいい女の子たちにアジアンビューティーという言葉は使われない。
それに、自分が本当にかわいい、美人だと思っている相手に対しては、きっと「アジアン」なんて枕詞は必要ない。
ただ単に「かわいい」「きれい」と言うはずだ。
つまり、「アジアンビューティー」という言葉には使い手の感情は入っていない。使い手がその人を美しい、綺麗だ、と思っているわけではないのだ。
「アジアン」がついていることによって、無意識的に「僕の基準ではなくて、アジアの基準で」という意味合いが含まれてしまっているように思う。
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ただ、
もちろん、アジアンビューティーは褒め言葉だ。
私をその言葉で表してくれる人が、褒め言葉として使ってくれているのもとてもわかる。
褒めようと思ってくれたその気持ちも純粋に嬉しい。
友達や初対面の人に言われたら、ありがとうと返すと思う。
でも、やっぱりもやもやする時もある。
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褒められたのにキレてしまった理由
以前、大学2年生くらいの時、
気になっていた人に「〇〇はアジアンビューティー顔!」と言われた時には、心にぐさっときた。
まず「ああ、私は彼の「かわいい」には入ってないんだな」と悲しくなった後に、
「褒めてるつもりで人を傷つけてるよ、あなた」と何も気づいていない能天気なその人に腹が立った。
そのあと、私は、トゲトゲと
「アジアンビューティーって言葉、あんまり嬉しくない。だって、そのアジアって日本じゃないんだもん。日本ではかわいくないって言われてる感じする。」と言い返した。
彼は、普段怒らない私が強い言い方をしているのに少し驚いて、褒めたのに私が怒り気味なことにもしょんぼりしたような様子だった。
せっかく褒めてもらったのに、それまで色んな人に言われて違和感を感じていた、その言葉に込められたニュアンスだけを引っ張り出して、その人に当たってしまった。バカなことだ。
実際、彼は何も間違っていない。
紛れもなく私は「アジアンビューティー顔」である。
目が細くて薄くて鼻は下に向かって伸びていて顎がシャープで顔の余白が大きくて
まさに江戸時代の浮世絵のような、
クールジャパン顔。
その言葉をチョイスするのは至極当然なくらいそんな顔なのだ。たしかに「かわいい」ではないよなと冷静になればわかる。
でもその時はそれを受け止められなかった。
どうせ王道かわいいが好きなんでしょ!このやろう!と思ったままに言い返してしまった。
・・・
ここまで書いていて、分かってしまったことがある
私はその人に かわいい と言って欲しかったのだと。すごくそう言われたかったのだと。
王道かわいいとはかなり程遠い私が、何を言ってるんだと言われたら全く反論できないけれど、本当はそうだったんだなぁと振り返った今しみじみ思う。
ただ、その人のかわいいの範囲内に入っていたかった。
アジアのどこかで、ではなく。
私にとって、アジアのどこかでかわいいことはその時全く意味のないことだった。
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いつか、心からの「かわいい」が私に向けられたらいいなと思う。
でも、日本の王道かわいいに無理して寄せることはしない。
このクールジャパンアジアンビューティー顔で「かわいい」を獲りにいく。
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