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完全失業率の上昇は何を意味するのか?

 12月1日付の日経新聞の記事に「完全失業率が上昇した」という記事が掲載されていました。ここではこの「完全失業率」について整理しておきたいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

 まず、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたものを「労働力人口」と呼びます。就業者には実際に収入を伴う仕事をしている従業者と休業者とが含まれます。「完全失業者」とは、働く意思をもち求職活動をしている、またはその結果を待っている者を指します。つまり、完全失業者には働く意思を持たずに求職活動をしていない者は含まれないことになります。

 以上の言葉の定義を踏まえ、完全失業率は次のように定義されます。

完全失業率=完全失業者÷労働力人口

以下、この値が上昇することの意味を整理しておきたいと思います。

人々の労働意欲が損なわれたわけではない

 簡易な例で考えます。労働力人口が100人とします。就業者が80人、完全失業者が20人とします。上記の定義より、完全失業率は20%となります。

 不況などによって、就業者が80人から10人減少したとします。その10人が完全失業者になる、すなわち働く意思を持って求職活動をしている場合、完全失業率は30%に上昇します。

 仮にその10人が就業意欲を失ってしまったとします。すると、労働力人口が10人減ることで90人になります。同時に完全失業者も10人減り、10人になります。その結果、完全失業率はおよそ11%になり減少します。

 以上の例から、完全失業率の上昇の背景には、働く意思があるのに就業できていないことがあります。ただし、必ずしも人々の労働意欲が損なわれたわけではないことは注目に値します。

世帯主が失業している家計はどれくらいいるか?

 完全失業者が世帯主である場合、その家計の収入は大きく落ち込むことになります。特にその家計の所得の大半が労働所得から構成される場合は尚更です。対して、もし完全失業者が扶養の対象になっている世帯構成員である場合、家計の収入の落ち込み具合は相対的に小さくて済みます。つまり「完全失業率が増加した」という結果からは家計がどれだけ苦しいかを正確に捉えることは難しいと思います。


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