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ボスニアヘルツェゴビナトレラン大会参加録:Vucko Trail2024 Red Course 60km

はじめて行く国がトレラン大会というのは、今年の個人的トレンド(?)になっていて、4月のスロベニア、5月のハンガリーともレースで訪れたのがそれぞれ初訪問であった。


ということで6月も新規の国でレースに出てみようということで、バルカン半島にあるボスニアヘルツェゴビナのトレラン大会がちょうどあったので申し込んでいた。2月いっぱいのEarly Birdで申し込めば60kmの部で35ユーロというヨーロッパ基準、いや日本含めても破格の安さである。アクセスだけ不安だったので、申し込み前にメールで聞いてみたら例年サラエボからのシャトルを用意していて今年もそのつもりということで、公式サイトも英語完備だし、とりあえず申し込みをした。ロンドンからサラエボは2024年6月は直行便が週三回だけだったので、土曜のレースのためには木曜の便で入ることになった。なんだかそれならせっかくなので、と有給をさらに取って火曜夜便でクロアチアのドブロニクから安いBAの便があったのでそれを予約した。ということで5泊6日のサラエボIN。ボスニアトレラン経由クロアチアOUTの旅である。

1、レース概要

UTMB index raceの検索で見る限り、2024年ボスニア開催の唯一のIndex Point認定レースと思われるVucko Trail。今回は2番目に長いRedに申し込み、60km、3700m+、ふつうにしんどそう。

必携品などはだいたいよくある感じで準備段階で特別気になる点はなし。公式サイトの英語情報完備、FacebookとInstagramで頻繁に現地語と英語でアップデートしてくれるのでちょいちょいチェックする。サラエボからのシャトルバスもしれっと案内があったので、申し込みをした。土曜6時にNational Museumの前出発でスタート地点7時着とのこと。サッと調べた限り、サラエボから近郊の山への公共交通機関はなさそうだったので公共交通機関での移動メインのものとしては、大会シャトルは行動範囲を広げてくれる意味でも助かると常々思っていてシャトルがあればせっかくなので申し込んでみようかなと思ってしまう。

2、当日、スタート前

朝6時に国立博物館前発のシャトルに乗るために5時20分ごろ宿を出てトラムに乗る。明らかにトレランに行く夫婦がいたのでお互い笑顔で挨拶、スロベニアから来ているらしい。シャトルはチケットなどはなく、名簿で確認。

シャトル

バスの中はほぼ寝ていたので気づいたら到着、さっきのスロベニアのおじちゃんに起こしてもらった。予定通り1h弱で着いたところは公園のようでカフェレストランの施設がある。その中で受付、BIB Pick。Tシャツ含め参加賞などもたくさんある、この大会Early Birdで申し込むと60kが35ユーロ(!)と欧州最安値(多分)なのに太っ腹である。


ついでにカフェでエスプレッソを頼む、3マルク(1.5ユーロ)。みんなが口々に今日は暑いぞ、というようなことを言っている。

近隣諸国が多いものの、スタートリストをみたところそこそこ外国人ランナーもいてアナウンスもボスニア語のあと英語でちゃんとしてくれて助かる。レース直前に簡単なブリーフィングあり、8時レーススタート。

3、レース中

60kと僕が出るレースにしては長いので、最初は飛ばさずに行こうと思っていたのでゆるゆるできるだけ楽にはじめの森の中の丘を進む。

20分ちょっとで森を抜けて開けた芝のゾーンに出る、奥には山も色々見える。その後前がおちてきて、まだ涼しかったこともあり、なんだかんだで4、5番手あたりの集団に落ち着きそのままカルスト地形のような気持ちいい原っぱをゆるくアップダウンしながら進んでいく。

9:20ごろに第一エイド、11.8k 690m+の後とあるので、まぁいいペースな気がする、まだまだ余裕。引き続き似たような景色の中を走りつつも着実に山に近づいて行く。途中たくさんの牛が歩いていてのどか。第二エイドまでは短い6キロちょっとで10:10ごろにLukomirという小さな集落にあるエイドに着く。少しづつ暑くなってきているので意識的に塩を取ろうとスイカにかけて食べたりする。この手前くらいから暑いので道にある水道で頭に水をかぶるランナーなどもでてきた。第二エイドを過ぎると一気に谷底まで降りて行くのだが、序盤はまだ多少岩っぽいが走れる感じ。その後、少しテクニカルな下りがあり、川にかかった橋を渡る。このあたりからちょっと暑さにやられたのかしんどくなってしまい、前後離れた一人旅ということもあり休憩しながら登る。足に違和感もあったので靴下を脱ぐと大きな水ぶくれが両足にできてしまっていた、昨日の山かも。11:20ごろに次のエイドに着くが、とにかく暑さにまいったので一旦座り込む。ここから先は多分全てのエイドで座り込むか寝転んでいる。ついでに足の裏を見てもらうが、まぁできることはないので絆創膏を貼ってもらうだけ。



かなり後ろに差はあったはずだが、エイドで待ってる間にどんどん後ろの選手も来るが、追いかける気力は今日はもはやない。一瞬DNFもよぎるが、ここから一番のハイライトの登り+山なので、とりあえず歩いてでも行ってみようと思い腰をあげて歩いて行く。森の中を登っていき、抜けると眺望の良い稜線上に出る。これは確かに絶景だが、とにかく動けず何度も日陰や風通しのいいところで休みながら進む。追い抜いて行く選手たちは「大丈夫?」「なんか要るものある?水持ってる?」と声かけてくれるので優しい。

しばらく進むと1個目のピークのMARO BRDO(1820m)の表示があるが、この先もなかなか迫力のある稜線は続き小さく選手の姿が見えて絶望する。

しかし景色はとにかく最高で、もっと元気なときにここを走りたかったなーと思わずにはいられない。13時前にVITO(1960m)に着く、山頂にはピッケルのようなものをモチーフにしたモニュメントもある。

山を下るとおそらく正規のCPではないが簡単に水を補給させてくれるところがあったが、水のキャパも少なそうだったので遠慮してボトル一個だけに入れる。ただここからの下りと登り返しにかなり時間がかかってしまい結果的にここでは次のエイドまでに最後水切れになってしまった。レース後、尿が茶色かったのでどこかのタイミングで確実に脱水症状になっているのだが、もっと前になっているのかもしれないが、この区間では確実に追い討ちをかけているはずだ。



15:30ごろフラフラになりながら歩いて、エイドに着く。ちょっとキツすぎて日陰で横になる。エイドスタッフも今日はマジで暑いでしょ、と言っているしみんなにそうしてるのといって帽子に水をかけて送り出してくれる。普段エイドはあまり長居しないものの今回はフラフラだったのでエイドに長くいたこともあり、エイドスタッフともちょくちょく話をしていたが、ゴールした後にみんな「よかったねゴールできて!」と声かけしてくれて嬉しかった。



次のエイドまでは7km弱、450m+ちょっとなのだが、この区間も当然ヘロヘロでほぼ歩き通し。1h半以上かかってエイドに流れ込む。コース上には羊やヤギもいたのだけ覚えている。後確か川沿いをしばらく進むので、川で何度も水を被ったり帽子を水につけたりした。

次も7km、400m弱+の区間でラストエイドのLukavac(52k地点)だが、ここもへろへろで1h半以上かけて雪崩れ込む。コース的には大した登りもなく、元気なら概ね走り通せる感じ。羊飼いが羊を移動させているところだけ覚えているが、羊以外あまり覚えていない。

なんとか19時ごろにラストエイドに着く。本来の目標タイムが9h半〜10hくらいだったが、もうここで11hかかっている。そして帰りのシャトルバスが19時発なのでもう間に合わない。

もしかしたら今日は暑いから多少遅れるかな?とかまぁ最悪ヒッチハイクでなんとかなるかな?としか思えない、とりあえず行くしかない。ここからゴールは7km、300m弱の+。暗くなる前にはゴールしたいな、という気持ちだけで進んでいく、日が落ちて涼しくなってきたこともあってか最後の樹林帯の下りはそこそこ身体も動いたのでまぁ悪あがきで走れることろは走っていき、20時20分前になんとかゴール。非常にタフなレースになってしまったが、なんとか完走。20kmトレラン+40km歩きって感じ。ゴールしたらメダルをもらい、とりあえずカバンを回収、もしやと聞いたがシャトルは19:30に出発したとのこと。

4、ゴール後

ゴールした僕を途中のエイドであったボランティアの人たちが、見つけて「よっくやったじゃん!」などと声をかけてくれる、ボスニアの人たちがとにかく優しい。ゴールして靴下脱ぐなどしていたらとにかく攣るので苦しんでいたらマグネシウムタブレットをくれたりもした(ていうかレース中に摂取すべきだな、と反省)。その中で話をしていたら、1人のボランティアのお姉ちゃんが今からサラエボまで車で帰るから、乗せてってあげるよと申し出てくれて恐縮だが公共交通機関もないしタクシーも来るような場所じゃないので、ありがたくお言葉に甘える。おそらく僕より歳下の彼女は、お父さんがネパールまで登山にもいく山男らしく、レース主催者とも仲の良い関係でボランティアに来たらしく普段は馬の仕事をしているようだ。サラエボまで1hちょっとのドライブの最中に、色々な話ができてよかった。特にボスニアという国は、つい30年前まで紛争があったこともある歴史の国でいまも国家の中に別の国家があるという複雑なところだが、セルビア人の友達ももちろんいるけど一度教科書をお互いみたら全く別のことが書いてあったみたいな、まぁ同じ出来事でも見る方向で違うよね、みたいな話だったり興味深かった。サラエボ市内まで行ければなんとかなるから大丈夫と言ったが、わざわざ宿のある旧市街まで遠回りして送ってくれてとにかく感謝である。

今回のレース、しばらく長めの距離のトレランはいいかな、と思わされる散々の結果だったが(といいつつまた出るんだろうけど)、脱水症状対策などにより今後意識しようと思えたり、何より期間をかけた分ボスニアの自然とボスニアの人たちの優しさに長く触れることができたのは良かった。大会も情報のアップデートはインスタおよびFacebookで随時英語込みでしてくれるし、問い合わせメールでしても素早いレスポンス、コースマーキングは完璧で景色も最高と非常によかった。敢えてあるとしたら、エイドの内容は全てほぼ同じなのでそこが飽きちゃうかな、というのと帰りのシャトルバスは19時発というのは結構厳し目でもあるかな、とは思った。あと時期柄今回のように暑い日になると対策が必要(けど今年は特別暑いとスタッフも言っていた)。機会があったら来年も出たいが、もう一つ短い距離(35km?)カテゴリでいいかも、、、と思った。そしてやはり今回歩いた距離は長く筋肉的には強度は低かったのか、水ぶくれにはしばらく苦しんだが、普段のように筋肉痛にはほぼならなかった。

追記:1か月半経ってITRAのサイトからリザルトをみると完走率は47%程度で2023年と比べ優勝者のタイムも1時間半ほど違い(2024年: 9h22m, 2023年:7h42m )、10h内ゴール者も23年の13人に対し今年は4人だったので、少なくとも昨年比では相当厳しいコンディションだったと思われる、主に暑さ。ITRAのIndexは反映されたが、8月時点でUTMB Indexには反映されていない(8月末更新された)。

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