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07.人口構造の変化

人口構造の推移は、最も予想がつきやすく将来を予測しやすい。
しかし同時に、誰も経験したことがなく、将来を確定することができないという意味では他の3つの変化と変わらない。
変化は毎日起こっていながら、サービスを環境適応させるには少なくとも10年以上の長い時間を必要とする。
人口構造が影響を与えないサービスもある。

人口構造の変化によってサービスの再定義を求められるのは、年齢対象を絞ってサービスを提供している提供者である。
レディースブランドの20代向けアパレルを展開しているサービス事業者は、現在が人口の最も多い最盛期であると仮定すると、例えば利用者と共に年を取りながら洋服を提供し続けるのか、これから人口が減っていく20代に対して服を提供し続けるのかを問われることになる。
このような方向性を決定する前提は、それぞれのサービスのコンセプトによって変わる。
いずれにしても人口構造の変化にサービスが影響を受けやすい業種はある。

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同様に人材紹介、人材派遣、就職斡旋などのリクルート関係など、人に直接かかわるサービス提供者も直接的な問題として再定義が求められる。
高齢者社会を前提としている社会では、高齢者の労働、外国人の雇用、知識労働者の確保などが課題になる。
このような雇用問題の回避を提案する、アウトソーシングのサービスを提供する事業はサービスを再定義する必要性が生まれる。

人口が減る層への嗜好を提供するサービスは、商品を含めた路線変更も視野に入れてサービスを再定義する必要に迫られる。

人口構造の変化に対応するには、観察よりもプランニングをより必要とする。
コンセプトを中心に人口増、人口減に対してどのような対策と戦略を立てるか。
コンセプトを守りながら最も成功する確率の高い再定義をどのように見出すか。
コンセプトと再定義が反目する場合に選択できるオプションはどのようなものがあるか。
このようなプランニングを、10年を1単位として検討する。

なぜなら10年を経ると現在の労働力は一定数退職し、子供が成人となることで労働市場に参入するからである。
サービスを提供する労働力の変化は、サービスの再定義を促すきっかけとなる。
利用者の人口増減もサービス提供を考える重要な要素だが、サービス提供における実務運営に直接影響を与える労働力をより早く検討しなければならない。

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たとえば、高度経済成長を支えた団塊世代の定年退職は、技術の伝達が十分でないままに労働力が若年層に移り、メーカーの技術力を低下させる直接の原因になる。
現に兆候はある。
これまでの技術を維持できなければ製品に対する信頼は失われる。
このような悪循環はサービス提供にとって致命的となる。
この致命傷を解決するために必要とされる再定義のプランニング案は、10年を1単位として計画され見直されることで人口構造の変化への対応を可能にする。

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これまでの環境適応の4つの変化とは別に、例外的に社会環境が変化することで、サービスに再定義と再生を迫ることがある。

前提条件の変化とは、基本的なルールが突然変わることを指す。
時間的に一瞬で変化することもある。
即時性がある反面、商売の論理よってサービスが淘汰されるという前提も持ち合わる。

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まずたとえば、自然災害が起きて食料が手に入らなくなるというように、急に前提条件が変わることがある。
食料供給のサービスは、流通も含めてこれまでと同じではなくなる。
これが時間的に最も早くサービスが変化するケースである。
24時間を要さないこともある。

次に、提供場所の違いによって前提条件が異なることがある。
富士山では、飲料の値段が高いことはよく知られている。
受けるサービスが同じであるにもかかわらず、交換条件が変わる。
これは単純に労力分が加算されているということではない。
市街地で缶ジュースを買う場合と富士山で買う場合では、それを手にすることのできる「意味」が異なる。

また、日本で衣服をチェーン展開し販売しているメーカーが、ロンドンに店舗を構えて衣服を販売するとする。
社会の前提条件が変化するため、提供するトータルサービスも異なる。
たとえば、衣服のサイズを変更する必要がある。
日本のサイズより大きめになる。
同じ商品を同じ量提供するとしても、用途は異なるかもしれない。

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たとえば日本ではフリースを寝巻き代わりとして利用することが多いが、イギリスでは普段着として使用することが多いかもしれない。用途の違いは、サービス提供の意味を変える。
社会背景が異なると、社会システムとしての存在意義も社会貢献の価値も変化する。
それによってサービスを提供する意味は何であるかということに影響を与え、コンセプトをどのように反映するかも異なる。
全ては、それぞれの場所における社会のルールが異なるために起こる。

サービスは、商売上の影響を受けることもある。
マーケットの変化が、前提条件を変化させることがある。

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インターネットの世界では、初期にサーチエンジンが乱立した。
現在ユーザーの大半はgoogleを利用する。
マーケットの発展は必ず競争を生み、成熟するに従って大手とニッチに二極化する。
二極化すると、その業界でサービスを提供する前提条件が以前とは変わる。

極論すれば大手の1位か2位として大量のサービスを提供するか、ニッチとして深く狭くサービス提供を行うかの選択を迫られる。
あるいは合弁によって違う意味を提供するサービスとなるかを迫られる。
サービスが活躍するフィールドの前提が、マーケットによって左右されることになる。
現代のサービスが商売と密接な関係にある以上、商売の影響を全く受けないということはない。

商売による変化の場合、再定義・再生のプロセスを経るよりも、先に商売の論理を優先し対応する方が事業存続は確実になる。

前提条件が変化するということは、コンセプトが通用するかどうか、その社会で貢献できるかどうかわからない状況になるということである。
このような場合は、お客視点がサービスが生き残るために効果を発揮する。

お客の声に耳を傾けるというところからまずスタートする。
そして状況が明らかとなり、どのようにコンセプトを反映してサービスを提供すれば良いのかが明らかになった時点で、徐々にサービスの条件を当てはめていく方法を取る。

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サービスは社会あっての機能である。
提供者のコンセプトの反映は、前提として社会に受け入れられていることが必要条件になる。
前提条件が変化するときは、まず社会に適応することからはじめなくてはならない。
たとえ一時期サービスの主体性を失うとしても、

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なぜならサービスは最終的に社会貢献であり、社会を構築するのしくみの一部として機能するからで、サービスの存在が消えてしまうことは結局社会的な損失につながるからである。
逆に言えば、消えてしまうサービスは社会的に必要性のないものを提供していたということでもある。
例外的な変化には、例外的に対応することでサービスを守らなくてはならない。



前話: 06.嗜好の変化
次話: 08.サービスを再定義する



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