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【コラム】「戦略的な進め方」について[4ポジクラブ]で話してきた #038


■「戦略」という言葉が好き勝手に使われている


もともと軍隊で使う用語を経済で使うことに疑問を持つ人もいる。
さらにつ変わるうちに混同されて「戦術的行為」をカッコ良く?戦略だと言い回る人たちも少なくない。

戦略を「成果を取るための作戦」あるいは手順なりプログラムだと思っている人は多い。これはもちろん戦略ではなく、しかも戦術ですらない。
世の中でそんなふうに言い回られていることのほとんどは画一的な方法論でしかない。方法をやれば→上手くいく、という至極単純なことだ。
説明書を読めば→配線を組むことができる、と言っていることと同じことが起こっている。

もう少し複雑な作戦があるなら、そのほとんどは「戦術」で、戦術とは成果を得るための方法の駆使だ。
一方戦略は成果を頂点にする一大体系を構築することにある。たとえば、戦争が起こったとしよう。3日で武力を使わず勝利できたなら戦術や戦闘は行われなかった。しかし勝利した。こういうことを戦略は可能にする。
戦いが必要ならどのような戦いが、どの程度必要で、どこでは勝つ必要があるがどこでは別に膠着すればいい、というようなことを想定する。
これが「戦術」なら膠着が目的にはならない。

戦争においての戦略の話は簡単に説明できるものではないので、話を進めるためにここでは成果を頂点にする一大体系を構築することだけ覚えておいてもらえたらいい。
ピラミッドの全体を作る、というようなイメージも外していない。


■全ての戦略は今何が起こっているか?の【観察】からスタートする


もう少し厳密にいうと、今「まで」何が起こってきたのかの観察をする。
状況を知ることに時間をかける。時間がかかる。
状況というのは成果を導く周辺状況のことではない。現在どのようなピラミッドが作られてしまっているかの全体把握になる。

そのためには業界なり地域のルール、法律関係、業界のセオリー・イレギュラーなケース、業界における強みと弱み、その業界に関係する二次関係者のあり方・関わり方、どのような成果を成果としているか、マーケットの規模と限界、などを調べる。
全体像を捉えることが重要で、細かな決定要因を知る必要は基本的にない。

そしてその全体から「成果に必要なもの」と「成果に不要なもの」をゼロベースで区分けする。その世界そのものを捉え直す。
これは「不要なのに必要だと思われていること」と「必要なのに不要扱いされていること」を捉え直す作業になる。簡単に言えば無駄を省き、効率を整え直す。
観察の結果に対して判別をしっかりつけてから、わかっている範囲のことをやり直す。良かれという意図や飛躍させようとする働きは必要ない。むしろこの時点では将来のリスクを作るのでやってはいけない。

昔コンサル入ったセミナー事業の会社では大きく集客できていたが、高額商品の販売につながらなかった。会議に出席し7日間黙って会議を聞いた。翌日「いい加減何か言ってください」と言われたので『当日会場でスタッフがジャケットを着る』ことと『席についたお客に、企画が始まる前に声をかけ挨拶をし今日のサポートをすると言う』ことの2つだけをやってもらうことにした。結果売り上げは3倍になった。


■メタ認知を完成させる


どういうわけか、我々の頭の中には分野や物事を詳しく知っている人ほど偉いだとか、頼りになるという脳の働きがある。これは幻想だ。
専門職はそれがどのような職業であれ、その道を深め極める方向にベクトルが働く。

メタ認知はこれと全く逆の働きをする。

とりわけ業界や分野について要点を知ることが重要で、どのような常識があり、どのような勝ちパターンの状態にあるのかを把握する。
次に大事なことは同業他社で、しかし競合する同業他社である必要はない。また同業他社を真似る目的もない。同業他社は平均的に、あるいは突出的に、他の誰かが可能にしていることや可能になっている条件が何か?と言うことを探る。どこまでもメタで考える。

混同しがちなのはマス思考ではないところだ。マス思考はマーケティングでよく聞く単語だけど、マーケットのニーズを一義的に捉えるような考え方はメタ認知にはない。あくまで全体を包括的に、しかし重要条件を複数つかむやり方をする。

たとえば「村おこし」をしようと考えているとする。畑で自給自足をしてきたが、仲間と共に小規模なコミュニティで進められたらいいと考える。しかし往々にしてそう考える人のほとんどは、農作業や土地に関することには詳しい(深い)が、ではどのように全体構築をするのか(メタ)わからない。
考え方は、日本中の先駆者の情報を集め、話を聞いたり見に行ったりする。滞在し足を使いまず【観察】する。20も数が集まれば、その世界でのセオリーや押さえるポイント、やってはいけないこと、なぜ誰もやらないのかわからないことなどが出てくる。この時点の把握でメタ認知はできている。
あとは「ならうちはまずここから手をつけよう」「ひとまずこの辺りを目指そう」ということもわかってくる。


■戦略の9割は構造の把握によって決まる


これは情報収集とも言えるし、情報戦ともいえる。
そもそも何かの作戦は必要なサンプルが十分あって初めて機能する。十分な判断材料がなくても踏み切らないといけないことや決断が必要なこともある。これ以上情報を得られないという物理的な壁もある。しかし、だからこそ、普段からそうなった時にうまく判断できるための情報をどのように取得しているか?が戦略では最も大事なことだ。
頭を使って逆転するような発想は、全くの不要ではないにしても良い戦略家の頭の使い方ではない。

情報は要点さえ押さえられていれば深く知る必要はない。
たとえばAの方法はリスクがあるが売り上げ倍増が見込める。Bの方法は安牌だが飛躍的には伸びない、という場合。どちらの方法を取るかは極めて【重要ではない】。どちらを行なっても売り上げは上がる。売上金の量が現状になるか倍になるかだけの違いだ。メタ認知で捉えるなら「失敗しても現状維持→何も変わらない」要素が入っただけで、何も変わらないなら重視する必要がない。もし売り上げが倍増しても、そこから情報を変更して練り直せばいい。
このように現場においては重要な判断であっても、戦略にとっては瑣末な物事になることがある。

こうして業界を知り、情報を取得し、業界外との連携や要点要所が何か?の輪郭がかなりはっきりと作られるとその道の構造社会が全体像として浮かび上がる。迷宮の地図を手に入れたのと同じ状態になる。
何が起こっているか。今後起こるか、起こらないか。変化するものは何で変化しないものは何か。何は安泰で何は不安定か。結果どのようなリスクが想定できるか。今後の目的に対して必要なことは何で、不要なことは何か。
この時点で初めて「ものを考える」ことができるようになる。


■目指すところは人と違う


目指す物事が他人と同じでいいなら、そもそも戦略は必要ない。上手く行っている人の真似をして二番煎じ三番煎じをすれば間に合う。余計な苦労も努力も必要なく、ただセオリーに従えばいい。
戦略が必要な理由はひとえに、自分独自の目的を成立させることだ。そのためには成果だけではなくピラミッドを造る必要がある。どのようなピラミッドを造ることが可能かは構造によって決まる。構造を理解することをここまでに書いてきた。

この可能に従って、どのような何を構築するかを決める。構造の可能路線に合わないものを造ることはできない。
目指すものがあるなら、その目指すもののルートを構造の中に道筋として描く必要がある。描いたら組み立てる。組み立てるのには方法論が必要で、理論上可能でも方法論が不足していれば机上の空論に終わる。
ただ勝てばいいのではなく、戦略まで組む・・・・観察やメタ認知に時間をかけるなら、それだけ組み上げるものは壮大なはずだ。壮大であればあるほど難度は比例して増す。途中で修正を求められる。その中で他者とは違う何かを打ち出す必要がある。ブランドイメージやプロデュースも合わせる。それが頭ひとつ抜き出たピラミッドに結びつく必要もある。
戦略は統一的に、しかし流動的に、またメタ的に構築される。

逆にまとめよう。
人と違う壮大なことを試みるなら、人と同じことをしていてもそうはならない。といって、人と違えばそれでいいというわけではない。ならどうするか?
自分が成そうとしている分野と業界をメタで知る必要がある。そのためには観察に時間をかける。座って得られる情報と足を使って得られる情報のどちらもを使う。全体の把握に時間をかけて必要なことを頭に入れる。
その構造社会で何をどのように動かせば成立させられるのかルートを探る(一通りとは限らない)。探ったルートに従って動き始めたら必ず方法論が必要になる。最初の計画通りに行くことはなく、フレキシブルさと構造に従った可能な修正を常に加えながら進む。ときに退く。その間も時系列と共に情報とメタ認知を更新する。そしてまた可能な構築をやり直す。

これが戦略を考える上での基礎の基礎になる。



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