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教育格差とイノベータ③

「教育格差に対して支援そのものを不要にする」という改革アプローチに「イノベータ育成」が処方箋のひとつになりえないか の第3回です。

未来のイノベーターはどう育つのか
  子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの
http://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2179

著者 : トニー・ワグナー
訳者 : 藤原朝子

今回は「3章 STEM系イノベーター」で掘り下げてみます。


ジョディ・ウーは、2009年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で機械工学の学士号を取得。その後、カリフォルニア大学バークレー校の全額支給奨学金を断って、タンザニアで「グローバル・サイクル・ソリューションズ」を立ち上げた。

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014

ジョディは、「自転車をイノベーションの手段にする」をモットーに同社の社長兼CEOを務めている

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014

前回のカーク・フェルプスのように余裕のある家庭ではなかったジョディ・ウーですが、イノベータへ育つに仮定において2つの共通点がるように感じられました。

1つは、子どものころに様々な世界を見ることができた点です。

どの授業でも実践的な研究プロジェクトが用意されていました。生徒はプロジェクトとトピックを選ぶ。

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014

子どもに知らない世界を見せ、自ら考え経験させるということが今の世の中、どのくらい実現されているのでしょうか。知らないことを知りうることはできないですし、決まったレールの上を行く限り自ら考えるという状況は作られにくいと考えます。

2つめは、分野横断的なコラボレーションを指導する教員の存在です。教員とはいえサラリーマンであり、決まった一定のルールを専門分野で教えている場合が普通なのではないかと思われます。
分野横断的なプロジェクトの経験は子どもたちに新たな未来を拓く扉を用意する素晴らしい機会と考えますが、一般にはこのようなことを教員が行うのは困難なのではないかと思います。
ジョディのケースでは、MITデザイン(D)ラボのエイミー・スミス共同所長です。

「Dラボの哲学はどこまでも実験的であること。実在する人のための現実的なプロジェクトをやって、本物のフィードバックを得ること。学生たちが自分の活動について意味あるフィードバックを得ていないことは非常に多いのです。

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014

運不運や程度の差はあるにしても、カークとジョディがイノベータへ向かう経路に存在するこれら2つの点は、経済的な原因に端を発する教育格差との関連性は高くないように思えます。

これらから、教育格差に関しては親の経済格差への個々の支援も重要ですが、親や地域といった周りの環境や学校教育そのものを大きく変えることによる効果の方が期待できるような気がします。

次回は社会イノベータについて考えます。
厳密ではないけれど、STEMではなく、文系に近いイノベータ達と解釈すると分かりやすいかもしれません。

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