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教育格差とイノベータ⑤

「教育格差に対して支援そのものを不要にする」という改革アプローチに「イノベータ育成」が処方箋のひとつになりえないか の第5回です。

未来のイノベーターはどう育つのか
  子供の可能性を伸ばすもの・つぶすものhttp://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2179

著者 : トニー・ワグナー
訳者 : 藤原朝子

今回は「5章 学びのイノベーション」で掘り下げてみます。


今生徒たちが身につけなければならない最も重要なスキルは、新しい問題を解決するために、新しい知識に関心を持ち、新しい知識を作り出す能力だ。成功を収めたイノベータはみな、「その場その場で」学び、その知識を新しい方法に応用する能力を持っている。

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014

現在の一般的な学校教育では、イノベータが育ちにくいと筆者は主張しています。
いったいなぜなのでしょうか。

高校は大学へはいるための教育を重視、大学では社会で必要とされる論理的思考や批判的思考、文章能力のレベルを上げることが困難であるという話は、どこかで聞いたことのあるようなある意味一般化されている内容ではないでしょうか。

一方で、外部環境の変化に学校教育がついていっていないといった論理展開を筆者はしています。これらは妙に納得感のある新しい話ではないでしょうか。

大学のあり方を見直すべき圧力が高まっているもうひとつの理由は、インターネットによって知識の伝播方法が変わってきたことが挙げられる。高校と大学で教えられている知識の大部分は、いまや無料で手に入れることができる。

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014

現在の経済的、環境的、社会的な問題のほとんどは非常に複雑で、これまでとは違う教育を必要としている

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014

なんだかおかしな話です。裕福な家庭が十分な教育を受けることができるというのが教育格差の1つであるならば、そもそも一般の学校教育がイノベータを生み出すことにあまり貢献できていない現状では、格差とは何だろうかということになります。

もちろん、そもそも学校教育はイノベータ育成に主眼を置かず、様々な知識を習得するという点では格差というカタチになって現れてくるケースはあると思います。

とすると、学校教育とは距離を置いた教育や経験からイノベータが生まれてくるという経路があるならば、その点では格差はないのかもしれません。

では、相対的に格差が少ない義務教育の中でイノベータが育つような改革はできないものでしょうか。

フィンランドは40年前、比較的貧しい農業国で、教育レベルも世界の平均点以下だった。国の指導者たちは、フィンランドが経済的に生き残るには、教育制度を全面的かつ劇的に変革する必要があり、若者がイノベータや起業家になる能力を伸ばす必要があると考えた。

フィンランドの例は参考にすべき一例かもしれません。

筆者は新旧の学習文化の比較の中でイノベータを育成する教育機関の特徴を以下にまとめています。

・ コラボレーション
・ 分野横断的な学習
・ 思慮深い冒険と試行錯誤
・ 創造
・ 内的モチベーション:遊び、情熱、目的

出典:トニー・ワグナー. 「未来のイノベーターはどう育つのか」. 英治出版, 2014


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