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有効求人倍率の低下は、大量失業の予兆?

厚生労働省が発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.39倍(先月比0.06ポイントのマイナス)でした。ここ数年、右肩上がりに上がっていた有効求人倍率なので、下がったことはニュースになったのでしょう。

確かに、4月・5月と有効求人倍率は下がると思います。しかしながら、私はコロナショックのような状況は起こらないと思っています。

なぜなら、有効求人倍率が今、下がるのは当たり前だからです。有効求人倍率は正社員だけでなく、契約・パート・アルバイトなどすべての雇用形態の求人を母数にしています。

コロナの影響を受けているのは、パート・アルバイトが圧倒的で、この減少が有効求人倍率に影響していると考えられます。

また、エンワールド・ジャパンが2020年4月に調査した結果では、7割の企業は採用を継続するとしていること、有効求人倍率の中身を考えなければならないことが挙げられます。

■二極化する採用活動

調査数が224社なので、少し少ないなと感じますが、傾向はつかめると思います。

この調査を見ると、外資系企業が採用を手控える一方(40%がストップ)、内資系企業は採用を継続する企業(85%が継続)が多くあります。業種を見ると、「旅行・レジャー」「小売・消費財」「商社・卸売」といった、コロナで明らかに売上が減少した業界は採用活動求める一方、「金融サービス・保険」「医薬・製薬・ライフサイエンス」といった、コロナで影響を受けづらい業界は採用活動を継続しています。(10社未満の回答業種は除く)

飲食業界も大打撃を請けていると思いますが、リストになかったので、ここでは分かりません。

職種も「営業」「エンジニア・技術(IT、ゲーム、web、通信)」「マーケティング・商品企画・広報」の採用を積極的に行っています。

コロナ禍でも営業を減らすと売上に直結するので、営業は増やしたいのでしょう。一方で、「エンジニア・技術(IT、ゲーム、web、通信)」「マーケティング・商品企画・広報」はビジネスの根幹を支える重要な職種です。個人的には、今後、企業は営業以上に内製化・組織強化を図っていく職種・部署だと思っています。

■すべての企業はIT・Web・デジタル技術が求められる

少しだけ話をずらすと、現在、多くの企業がデジタル・トランスフォーメーション(DX)と称して、自社のサービスをWeb化したり、ビジネス活動にITやデジタル技術を活用しています。

たとえば、トヨタのKintoは好例でしょう。MaaSと呼ばれる、移動をWebサービス化した事例です。そこには多くのマーケティングや商品開発が企画を考え、実装に多くのITエンジニアが導入されています。営業活動はCMやWebなので、営業という職種は必要ありません。

NetflixやAmazon、メルカリなど、さまざまなサービスを見ていただければ、(営業は消滅しないが)営業の役割は減少していくことは明らかです。

一方で、マーケティング・商品企画とITエンジニアは重要な役割を担っていきます。そうすると、特にITエンジニアは、これまでSIerなどがになっていたものを、企業は自社で囲い込もうとします。

今後も、この職種は転職市場でのニーズが高いでしょう

■対面が必須でない仕事は、コロナ後も変わらない

このように、DXが進んでいたなかで、上記のような職種の採用を止めるわけにはいきません。

一方で、販売サービスや飲食はFace to Faceのビジネスモデルを変革できません。宅配という業態でも、配達員はお客様に接するわけですから。だから、新しい人員は必要なく、採用活動を停止しています。

営業も、これまで「対面でなければ営業できるはずがない」と思われていました。しかし、実際にWeb面談などで受注しており、対面が営業の必須条件ではなくなりました。

できるのであれば、ビジネスを止める理由はなく、そもそも人手不足であった企業は採用活動を継続しています。

■本質的なソリューションが成否を分ける

ただ、リモートワークやWebでの商談などが一般化するなかで、求められるのは効率化です。これまで大量に採用し、人海戦術でビジネスを運営していた企業は、ビジネスのあり方の変更を求められます。

なぜなら、

・移動がなくなる
・Web上だから「空気」ではなく「本質」が求められる

という2つの要因で、勝ち組と負け組がはっきり分かれるからです。

営業活動では、相手企業やお客様に訪問するのが普通です。あるいは、お客様が企業や店舗にやってくるか。しかしWebでは、その時間的制約はなくなります。移動時間がなくなるぶん、より効率的な働き方が可能になります。

すると、売れる営業はますます売れ、売れない営業は変わらず売れない状況になります。売れない営業は必然、効率や生産性を求められます。

また、商談は良くも悪くも「空気」が重要でした。「人が良い」「こちらを理解してくれる」など、言語化できないスキルが商談にはあります。自分がWeb会議などをしているなかで感じたことは、「空気」をつくるのが難しいこと。

その代わり、Web商談では「自分のメリットになるか」を求められます。今どきの言い方をすれば、ソリューションが求められるのです。営業のなかには曖昧にして、雰囲気だけで「この人はやってくれるから」と見せて受注する営業もいます。今後、そのような手が使えなくなります。

このように、営業(だけでないですが)は本質的な提案やソリューションが求められる時代になるでしょう。

■まとめ

以上のように、採用活動を手控える業界はあるものの、多くの業界・企業は採用を続けます。

しかも、その採用活動はビジネスの変革を伴います。これまで「なんとなく」仕事をしてきた方たちは、空気で乗り切っていた技は使えなくなるはずです。

その意味では、大失業時代は来ないものの、評価が一変するのではないでしょうか。

中長期的には、生産性や本質的な提案・ソリューションができる企業が成長するでしょう……って、大企業病に罹った企業は潰れますね。


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