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Qiita「エンジニア白書2022」から見た自社開発と受託開発の違い

毎年、Qiitaがユーザーのエンジニアに調査した結果をまとめた「エンジニア白書」。そこからみえる自社開発と受託開発の違いを考えてみたいと思います。

結論から言えば、顕著な違いはありませんでした。
受託開発よりも自社開発のほうが環境・給与は良いようですが、世の中が言っているような「自社開発しか勝たん」というほどではありません。

「エンジニア白書」で調査対象になっているエンジニアの属性は一定の経験値や業界在籍歴をもつエンジニアです。開発側が多く、インフラ側が少なく、一般社員が多く、所属の企業規模も100~300名未満がもっとも多いので、全体傾向と大きな乖離は見られません。

ただ全体傾向の20~30%と比べて、自社開発が57.4%と自社開発の比率が高くなっています。また、Qiitaに登録しているエンジニアなので、エンジニアの中でも感度や意識が高い傾向にあると考えられます。やや自社開発寄りになってしまうのは、Qiitaユーザーの特性上、仕方ないことでしょう。

開発形態

■残業時間

さて、その前提を踏まえて、自社開発と受託開発を比べてみたいと思います。
まず平均残業時間。もっとも多いのは月20時間未満(50%)でした。自社開発は63%に対し、受託開発も63%と同じ。ただ、0時間で比べると自社開発15%、受託開発12%と、やや自社開発のほうが残業時間は少ない。

残業時間(1ヶ月)の割合

■リモートワーク

続いてリモートワーク状況はどうでしょう。フルリモートでは自社開発32%、受託開発35%でした。完全出社(リモートなし)は自社開発14%、受託開発10%でした。
リモートワーク比率では、やや受託開発のほうが高い結果となりました。とはいえ、フルリモートで3%、リモートワーク全体で4%の違いなので、決定的な違いとはいえません。

リモートワーク

ちなみに。企業規模別のリモートワーク比率は以下の通りでした。フルリモートでは企業規模が小さいほど実施され、リモートワーク全体では企業規模が大きいほど実施されているという結果に。
しかしながら、世の中がいう大企業ほど恵まれている、という状況ではなさそうです。

リモートワーク(企業規模別)

■給与(現在の年収)

では、多くの人が転職時に求める給与はどうでしょうか。結論から言えば、自社開発のほうが給与は高い傾向にありました。
自社開発の最頻値は年収500万円~800万円未満(36%)に対し、受託開発は年収300万円~500万円(36%)でした。ビジネスモデルを考えると、受託開発は2次請け、3次請けも含まれるので利益率が低くなる=給与が低くなる傾向になるのは間違いないでしょう。
ただ、意外だったのはWebサービス・SIer・ネイティブアプリで比べるとSIerよりもWebサービスのほうが年収500万円未満のエンジニアが多いこと。

現在の年収(ビジネス・開発形態別)

また、企業規模別に見ると、企業規模が大きくなるほど高い年収をもらっているエンジニアの比率が多い。全体の傾向では企業規模には勝てないようです。
これは余談ですが、フリーランスの約半数(46%)が年収500万円未満となっています。年収1000万円超えが6%という事実を見ると、インフルエンサーが喧伝するようなフリーランス=稼げるというわけではないようです。
(「わからない、答えたくない」が21%なので、この全員が1000万円超えなら夢のある話ですが)

現在の年収(企業規模別)

■転職回数

転職が多いとされるIT業界ですが、実際はどうなのでしょうか。全体では1~3回未満がもっとも多く(53%)、頻繁に転職していないのがわかります。Webサービス・SIerでみても、その傾向は変わらず、SIerで転職回数0回が22%と多い結果に。
ここからSIerのほうが転職にネガティブ、後ろ向きの傾向にあることがわかります。とはいえ、Webサービス・ネイティブアプリも頻繁に転職しているわけではなく、Web業界=転職が当たり前、というわけではないようです。

転職回数

一方で面白い結果も。年収が高い方ほど転職を繰り返しています。
ここから考えられる可能性は2つ。一つは優秀なエンジニアほど転職を繰り返す傾向にある。もう一つは転職したほうが年収は上がりやすい可能性がある。
このデータから、これ以上は読み解けませんが、優秀なエンジニアで給与が低いと感じている方は今の会社で評価を上げるより転職したほうが早いかもしれません。

年収別の転職回数

■まとめ

以上、Qiita「エンジニア白書2022」から、自社開発と受託開発を比べてみました。
大きく違ったのは給与のみという結果でした。しかし、WebサービスとSIerを比較すると、SIerのほうが高い結果に。また今、エンジニアが求めているフルリモートは受託開発のほうが多いという事実が判明しました。
この結果を踏まえると、一概に「自社開発がいい」とはいえないことがおわかりでしょう。

蛇足ですが、フリーランスはフルリモートはできるものの、年収は高くなく、必ずしもインフルエンサーが言うような状況ではないことも明らかになりました。インフルエンサーは良い例だけを挙げて、「だからフリーランスは最高なんだ」と言っているようです。多くの方には「エンジニア白書」のようなデータから判断してほしいですね。

「エンジニア白書」をもう少し詳しく分析すると、面白いことが見えてきそうです。他のデータも分析し、今後、公開したいと思います。


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