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ITエンジニアにとって、資格は必要なのか

ITに限らず、転職で資格は有利かそうでないかの議論がよくされています。私は「転職において資格は有効ではない」と考えています。もちろん、業種・職種、状況によって有利に働くこともありますが、多くの場合は有効ではないでしょう。

たとえば、医師・弁護士・税理士・会計士などは、資格が必須であり、業務独占資格でもあるので、取得した人が有利になります。
「業務独占資格」とは、取得した人だけが独占して業務を行える資格のことです。医療行為は医師にのみ許可された業務なので、資格を持っていない人は参入できません。

一方で、フィナンシャルプランナー資格(FP)や英検・TOEIC(R)テスト、簿記などは業務独占資格ではありません。
確かに、経理に就職する際に簿記は有利に働くことがありますが、経験者>簿記資格という関係性です。しかも、簿記の場合、2級以上で業務に生かせるレベルです。3級では優遇しないという会社も少なくありません。

ITエンジニアの資格とは

以上のように、転職において資格は強いワイルドカードではないことがご理解いただけたでしょう。では、ITエンジニアにおける資格とは、どんな存在なのでしょうか。

ここではアプリとインフラに分けて話したいと思います。

アプリにおいて資格は意味がありません。確かに、「基本情報技術者資格」や「オラクル認定Java資格」「ITアーキテクト」など、いくつも存在しますが、中途採用で「基本情報技術者資格」くらいしか出てきたことがありません。それも、「レベルを図るのに、持っていてくれれば分かりやすい(=必須条件ではない)」くらいの話でした。

それよりも、アプリエンジニアはコードを書けるか、論理的に設計できるかが求められます。
そのため、最近ではpaizaやAtCoderのように、コーディングスキルを可視化し、そのレベルで転職活動できるサイトも増えてきました。

実力>>>資格のように、実力が圧倒的に物を言う世界です。

インフラエンジニアは資格を取得したほうがいい

しかし、インフラになると話は別です。インフラについては、資格を取得したほうが転職に有利な傾向にあります。なぜならば、コードのように客観的にスキルを判断できる指標がないからです。

・LPIC(Lv.1/Lv.2/Lv.3)・LinuC
・CCNA・CCNP・CCIE
・ORACLE MASTER(Bronze/Silver/Gold/PLatinum)

インフラは大きく分けて「サーバ」「ネットワーク」「データベース」に分かれます。サーバの場合、LinuxというOSが圧倒的にシェアを持っているので、その資格であるLPIC・LinuCがスキルの判断材料になります。
ネットワークは、ネットワーク機器メーカートップのCiscoが主催するCCNA/CCNPが、判断材料に使われます。同じように、データベースはDBメーカートップのOracleが主催するORACLE MASTERが判断材料です。

転職においては、LPIC・CCNAがよく応募条件に問われます。さきほど説明したとおり、コードのようにスキル判定できる共通項がないため、資格がその枠割を果たしているからです。

また、人出し系のSIerやSES、技術派遣では、クライアント(常駐先)への説明として、「〇〇は、この資格を持っているのでスキルがあります」という営業トークにも使われます。

アプリ側(Webエンジニアやスマホアプリエンジニアも含む)と比べ、インフラ側は資格が有利に働くことが多いので、資格を取得すれば未経験でも参入しやすいといえるでしょう。そのため、未経験ITエンジニア募集で、3カ月研修・6カ月研修をうたう会社では、最初の研修でLPIC Lv.1やCCNAを取得させるケースが多く見受けられます。

ITパスポートは、ITエンジニアにとって何の役にも立たない

さて、ここまで有名な「ITパスポート」は一切登場しませんでした。というのも、ITエンジニアには不要な資格だからです。

ITパスポートは基本情報技術者資格の前段階、という位置づけにされることが多いですが、内容はIT(もっといえばITシステム)の基礎理解とビジネスにおけるIT活用です。この内容を知っていても、コードを書けるようにも、インフラを構築することもできません。
もし、Web記事などで「ITパスポートは、ITエンジニアになるための第一歩」などと書かれていたら、その記事はIT(あるいはITパスポートの中身)を知らない人が書いた可能性があります。

非ITエンジニアでも取得したほうがいい場合

ただし、非ITエンジニアがITパスポートを取得するのは意味がある、と考えています。
というのも、さきほど説明したとおり「ITの基礎理解」と「ビジネスにおけるIT活用」なので、IT企画、あるいはDX・新規事業でITに関わるという人にはうってつけだからです。

ITのアの字もわからないのに、「若者はデジタルネイティブだから」というだけでIT企画やDX担当にさせられた、というのは、なくはない話です。そのような人が基礎理解のために、ITパスポートを勉強するのは非常に効果的です。

また、フリーライターとして活動している人が、この資格を取得し、ITライターとして第一歩を歩むなど、別のスキルの掛け算として使うこともできます。

ITエンジニアにとっては一般常識のような内容ですが、非ITエンジニアからすると、「ITを理解する」「ITを理解しているとアピールする」のには、良い資格ではないでしょうか。

今後、ITを理解している非ITエンジニアの存在は、とても重要になると考えています。というのも、現状のプロジェクトではビジネスサイド(企画・営業側)とデベロッパーサイド(開発側)との間に、大きな溝が横たわっており、プロジェクト進行の妨げになっています。

その間を取り持つ仕事は、恐ろしく大変ですが、一方でなくてはならない存在です。

新たな存在として登場するのか、企画側あるいは開発側から反対側へつなぐブリッジのような存在として発展するのかはわかりません。しかし、この存在はプレゼンスが高く、市場価値も高くなると考えています。

ITエンジニアより、IT×別のスキルに市場価値が

また、今後、ビジネスはIT抜きに発展することはありません。企画側でITの知識が求められるのも間違いないでしょう。

これらのことから、私見ですが、これからITエンジニアになるよりも、今の経験・スキル(営業や販売スタッフ、事務職など)とITを掛け合わせるほうが、よっぽど市場価値の高い存在になるはずです。

たとえば、「Timee」やリクルートの「AirShift」などは、店長職としてアルバイト管理やシフト管理をしていた経験が生かせます。むしろ、よりユーザーに刺さるような企画やサービスを生み出せるのではないでしょうか。

IT化やデジタル化されていない領域では、ITエンジニアのスキルと同じくらい、その業界・職種の経験・スキルが物を言います。おそらく、今後、隆盛するであろうライブコマース(生配信で商品を販売する通販番組のようなもの)も、アパレルや化粧品などの販売スタッフの経験・スキルがサービスに生かされるのでは、と思っています。

ただ、その人たちにITの知識がないと、「面白いけれど、実現性が低い」となってしまいますが。

資格を取得してITエンジニアに、となるよりも、資格×経験・スキルでサービス企画へ、というほうが、その人の価値を最大限に高めてくれるのではないでしょうか。

以上から、資格はインフラや非エンジニアにとって意味があります。

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