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第1回「商品・サービス開発プロジェクト」レポート/後編

「これからの地域を支えるデザイン経営」を本気で学ぶ場所として、2023年にスタートした越前鯖江デザイン経営スクール。今回は、2023年9月23日(土)、24日(日)に開催された第1回目の「商品・サービス開発プロジェクト」の様子をレポートします。

前編はこちら


参加事業者を訪問!

曽明漆器店

2日目に訪れたのは、鯖江市河和田地区にある曽明漆器店。4代目の曽明晴奈さんと3代目の曽明富代さんに案内していただきます。1923年創業の曽明漆器店は、実は今年で創業100周年。卸業をメインに商品の企画・販売も行います。2003年にオンラインショップを開設し、2016年には実店舗「漆器久太郎」をオープン。重箱やお椀を中心とした越前漆器を販売しています。

Kyutarou BLUE

自社ブランド「Kyutarou BLUE」は、木製の木地のあたたかみと、鮮やかな青色が人気の商品。青い半透明の食器用ウレタン塗料を使用し、食卓を彩ります。名入れサービスも行っており、ノベルティや贈答品としても人気があるのだそう。
「漆や塗料が全部に塗ってあると、素人にはその素材が木なのかプラスチックなのかわからない。そんな言葉から生まれたのがKyutarou BLUEです。手にとって木のあたたかみと塗りの魅力を感じてほしいです」

今回は特別にショップの奥も見学させていただくことに。漆器について初めて知るメンバーもおり、興味津々です。
「若い世代では漆器になじみのない方が多いと感じていて、20〜30代への入り口となる商品を作れたら」と曽明さんは言います。

倉庫に眠る大量のデッドストック

また、倉庫に眠るデッドストックの多さにも悩んでいるといいます。ショップやオンラインストアで販売する商品を置くスペースを確保するには、在庫を整理する必要がありますが、なかなか手をつけられていません。大量のデッドストックの中には、今では手に入らない貴重な木地も。これらの木地の活用方法についても考えたいところです。

チームごとのディスカッション開始!

事業者見学の後は、チームごとにディスカッションを行いました。参加メンバーが事業者から課題や現状をヒアリングし、アイデアを付箋に書いていきます。

業務の流れや会社の売り上げについてヒアリング
講師陣が会場内を回り、アドバイスする場面も。

約3時間にわたるディスカッションが終了。2日間の最後は、チームごとにプロジェクトの方向性をプレゼンします。

チームごとのプレゼンテーション

2日間の集大成としてチームごとのプレゼンテーションを行いました。各チーム約5分のプレゼンに、講師陣の質疑応答が続きます。

曽明漆器店チーム

まずは曽明漆器店チームから。事業者見学やヒアリングの内容を踏まえ、
・倉庫にある大量のデッドストックの活用
・青色に特化した商品のブラッシュアップ
の2点に取り組みたいと発表しました。

デッドストックの活用について、講師陣から「他の漆器店も同じ問題を抱えているので、地域全体で課題解決に取り組めたら」「デッドストックを箱に入れたままではもったいないので、きれいにして並べるといいのでは」といった意見が出ました。

また、Kyutarou BLUEの青色には「漆器の既存の概念をこわしたい」という晴奈さんの想いが込められていました。従来の漆器らしい色や女性らしさに捉われない、自由さを体現した商品でもあります。

講師陣からは、「青色の意味合いや歴史についてリサーチし、青色である必然性を共感してもらえるストーリーづくりを」「『青色といえば曽明漆器店』と連想するくらい広められたら」「気持ちが落ち着く、婚礼に喜ばれるなど、客観的な青色の価値を踏まえて売り先を決めるといい」など様々な意見が。

曽明漆器店チームは講師陣のアドバイスをもとに、次回までに漆器業界のリサーチや青色の価値や歴史についてのリサーチを行うことに。

沢正眼鏡チーム

沢正眼鏡チームは、澤田専務と参加メンバーで出し合ったアイデアを発表。眼鏡の製造工程や会社の現状についてヒアリングを行い、
・「磨き」など特定の工程に特化する
・地域に根ざした事業
というアイデアを提案しました。
「地域の高齢者や障がいのある人が働ける仕組みや、地域の人がふらっと来れる場づくりなど、地域に根差した動きができるといいと思います」と発表者の井上さんは話します。

「移住されてきた新山さんや森さんに地域を盛り上げていただいて感謝している一方で、地域住民としてもっと頑張っていかなければと感じています。持続可能な経営をしながら、地域の産業や地域で暮らす人たちの課題解決につながるような取り組みをしていきたい」と澤田専務。

講師陣からは、「1社だけがいいのではなく、持続可能な眼鏡産業のモデルづくりを目指してほしい」「捨てる勇気と行動する勇気も大切。やりたいことがたくさんある場合は、何をするかを絞ることも大事」「商品ブランディングも大切だけど、人や働き方のブランディングも大切。地域でシェアハウスをするなど事業を広げてみてもいいかも」といった意見が出ました。

次回までに、眼鏡業界全体の流れや課題を把握し、アイデアをブラッシュアップしていきます。

小柳箪笥店チーム

続いてのプレゼンは小柳箪笥店チーム。まずは5代目見習いの小柳勇貴さんが「越前箪笥の魅力と価値で唯一無二を創造する」というコンセプトを発表。「いい鉄、漆、木材を使って正確に作られた値段がつく価値と、飾り金具の文様などの値段をつけられない魅力を組み合わせることで、唯一無二をつくる」のだといいます。

小柳箪笥店チームでは、
・アウトドアブランドの立ち上げ
・木、鉄、漆、テキスタイルの要素ごとに分解したアプローチ
・大人向けの指物技術の体験
など様々なアイデアが出ました。

講師陣からは、「技術力は十分なので、営業や販売戦略に重きを置くタイミング。商品自体は変えず、リーチの仕方を工夫するといいかも」「ビンテージ箪笥の修理・販売をするといいのでは」「越前箪笥の魅力と価値を言語化することで、魅力がたくさんの人に伝わるはず」といった意見が。

アドバイスを踏まえ、次回までに販売戦略の検討やリサーチを進めます。

越前セラミカチーム

最後のプレゼンは越前セラミカチーム。今回は参加事業者が不在ということで、全国の瓦産地のリサーチを中心に発表しました。

「国内で製造される瓦のうち、石州瓦、三州瓦、淡路瓦が85%を占めており、越前瓦は全国的にあまり知られていないことがリサーチを通してわかりました。次回までに競合産地のリサーチを行うほか、事業者を訪問し、課題や魅力を発見したうえでアイデアを詰めていきたいです」と発表者の牛島さん。

講師陣からは、「越前瓦の風景を将来に残していくために、越前瓦をまちのアイデンティティにする必要がある。まちの人にも魅力と価値を気づいてもらう方法を考えてみては」という意見が出ました。

***

2日間にわたる1回目のプログラムが無事終了。全国から集まった様々なメンバーと、越前鯖江の事業者が出会い、どのような事業や商品が生まれるのでしょうか。次回に続きます。


(文:ふるかわ ともか)


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