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みんなが知らない”金”のお話

今回は、みなさんが大好きな”金”の話をしたいと思います。

普段、科学の記事を書いているのに、急にお金の話とか胡散臭いなと思われるかもしれませんね。

そうです。お金(マネー)ではありません。

今回紹介するのはみんな知ってるけれど、意外と知られてない金(ゴールド)のお話です。


金とは

金メダル、金貨・金塊など、すべての金属の中でも最も有名といっても過言ではない”金”ですが、身近にもっているよ!という方は少ないのではないでしょうか。

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Wikipediaより引用

そんなに身近ではないものの、金属としての基本的な性質はとても有名です。

中学校の頃に習ったのを覚えている方もいるかもしれませんが、金は電気をよく通し、叩けばよく伸び薄い金箔になります。このよく伸びる性質を展性・延性というんでしたね。

今回は、そんな誰もが知っていると思っている金のちょっと不思議な特徴を紹介したいと思います。

金は小さくなると赤く見える

金というと皆が思い浮かべるのは黄色みがかったちょっと濃いめの色でしょう。だれもが金色、黄金色なんて呼んだりします。

しかし、金は光学顕微鏡で見えないぐらい小さくなると、色が変わって見えるんです。みんなが黄色っぽいと思っていた金は赤く見えます。

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Wikipediaより引用

ここで重要なのは、金が赤くなったというわけではないんですね。そもそも、私たちは物質が発した光や、物質に反射した光を見て色を決めています。

つまり、金塊や金箔も黄金色だったわけではなくて、黄金色っぽく見えているだけなんです。そんな金がナノメートルサイズまで小さくなると、赤く見えるようなります。

これは表面プラズモンという現象によって、緑色の光を強く吸収するために補色の赤が見やすくなるということなんです。ステンドグラスの赤い色なんかは、実は金だったりするんです。

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Wikipediaより引用(金ナノ粒子で有名なリュクルゴスの聖杯)

表面プラズモンは物質と光(電磁波)の間に生じる面白い物理現象なので良かったら、こちらの記事をご覧ください。


金がひらく未来の科学

赤くなる金もそうでしたが、ナノテクの世界では金は非常に優秀な材料です。というのも、金属ナノ粒子の中で(プラズモニクス的に)興味深いのは銀なんです。

しかし、銀のナノ粒子は光に弱く、室内に置いておくと非常に不安定という課題があります。その点、金は安定性が高く、様々な基礎研究に使われています。

さて、ここからは、そんな基礎研究に重宝される金を使った面白い最新科学を紹介していきましょう。


◆金触媒

最近では基礎研究の領域を抜けていますが、数ナノメートルの金を使った触媒なんかも開発されています。触媒というのは、それ自体は変化しないものの、周りの化学反応を促進させる作用のある物質のことです。

少々堅苦しい表現になってしまいましたが、金触媒を使うと有害な一酸化炭素(CO)を無害な二酸化炭素(CO2)に変える作用があるようです。

中でも注目されているのは、その反応温度です。通常、触媒反応というと高温で実施されるものなんですが、この金触媒は低温下でも反応するという優れた機能を持っているんです。

そんな金触媒ですが、どうして昔から知られていなかったのでしょうか?

これは、金がナノサイズでないと発現しないという特殊な性質だったからです。しかも、数十ナノメートルでは、その実力を発揮せず、さらに小さくなければならないというのが昔の技術では不可能だったわけですね。

金触媒が発見された当時は、これまたナノサイズの酸化チタンという物質の上にさらに小さな4nmぐらいの金が乗っかっている状態でした。

そして、この数ナノメートルサイズの金になったことにより、低温下で一酸化炭素の酸化を助ける優れた触媒が見つかったわけです。


◆バイオセンサー

触媒と同様にナノサイズなった金はセンサーとしても利用できます。

バイオセンサーと聞いてもどんなセンサーなのか想像するのが難しいかもしれませんね。例えば、発見するのが難しいウイルスを高速で見つけ出すなんてこともバイオセンサーならできてしまいます。

ところで、金を使ったバイオセンサーとはどのような原理なんでしょうか。

上述したように、金は小さくなると黄金色から赤色に変わります。この赤色というのはナノ粒子のサイズが大きくなったり、複数の粒子が集まったりすると赤紫から青っぽい色まで少しずつ色が変わるんです。

この現象は極端な状況では目で見てもわかるぐらい変わります。

それじゃあ、ウイルスが近くにあるだけで金ナノ粒子の色が変わったりするのか、といわれるとそんなに簡単でもないんですよね。

色を変えるためには、もう少し工夫が必要です。実は、金のナノ粒子の表面に特別な分子をくっつけておきます。この特別な分子はウイルス(RNA)に反応するものをあらかじめ選んでおきます。

金ナノ粒子のバイオセンサーの近くにウイルスがあると、表面にくっつけた分子が反応します。すると、金の表面の状態が分子レベルで少し変わるんです。

面白いところは、この表面のほんのわずかな変化に応じて、金ナノ粒子の色が変わって見えるようになります。

当然、ここでは精密機器を使って色測ることになりますが、従来の方法よりも微量なウイルスを検知できるというのが利点です。

最後に

noteで発信を続けていると、タイトルがキャッチーなものっていいよな~と思い書いてみました。ある意味お遊び回でしたがいかがでしたか。

誰もが知っているようなことでも、意外と知られていなかったりすることは多くありますよね。ただ単に高価な金属とか、ジュエリーに使われると思われているような金が私たちの生活を大きく変える未来の技術に重要であるというのは面白いところだと思います。

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