DXの初めの一歩はルールづくりから
デジタルトランスフォーメーション(DX)というと多くの人はIT知識が必要なんでしょ?とかデジタルやシステムについて詳しくないといけないんでしょ?と想像するかもしれません。
最近ではAI技術の発達も大きく、もはや一般人ではついていけないのでは?と思われている方も多いでしょう。
しかし、実際はそんなことなく、基礎的な知識だけ抑えていれば全ての人がDXに取り組むことができるんです。
そのためにはプログラミングも機械学習もできなくても問題ありません。最近ではプログラミング不要なのノーコードや非常に簡単なコーディングだけで十分なローコードというものも開発されており、学習のハードルは急激に下がってきています。
それではDXのためにはどんな知識を持ち合わせておく必要があるのでしょうか?
DXに必要な知識
DXに必要な知識はそんなに多くありません。知識というよりは簡単な考え方だけわかっていればあとは少し詳しい人に任せてしまえば良いでしょう。だいたいシステム開発会社でもない限り、DXの議論をするような環境は全くデジタル化が進んでいいない昭和な世界である場合が多いです。
DXに必要な考え方というのは何なんでしょう?私が考える最も重要なことはデータの一元管理です。
データ管理ならしているよ!と思われるかもしれませんが、それは本当の意味で管理されているのでしょうか?誰でも勝手に編集できたり、顧客情報が異なるところに複数あったり、そのような状況では正しく管理できていると言えません。
例えば、顧客情報であるAさんの住所が記載されたファイルが2つ見つかったとします。片方には東京都○○ともう片方には神奈川県××と住所が書かれています。この場合どちらが正しいかわかるのは実際に入力を担当した人ぐらいでしょう。これでは管理されているとはいえませんね。
これをIT用語ではOne Fact in One Placeと言います。一つの場所に一つの事実とも言われ、データベースの世界では最も重要な考え方です。
顧客の住所が異なるファイルに2つあってはいけないのです。
今回紹介したのは一例にすぎません。このようなデータの信頼性がないパターンは多くの会社で抱えている問題ですよね。ここで考えなければならないのは、いったい誰がこのデータを入力しているかということです。
完全に自動化していない限り、異なる住所の記載された謎のファイルの出現は人間の手によって起きています。謎のファイルは何かしら作業者の意図をもって作成されています。構造的には間違っているのですが、1つ目のファイルの存在を知らずに、作られてしまったとも言えますね。
仮に自動化していれば、システムの不具合か、システム設定のミスです。システムの不具合であれば、ベンダー企業に修正の依頼をすればいいですが、そもそも不具合のでるシステムを販売しているとも思えないので、たいていの場合はシステム設定のミスでしょう。すると、こちらも人間のミスと言えます。
何かの手違いでミスをしたのなら、ミスしないように是正する必要がありますが、最初に考えるべきことではないでしょう。なぜなら、ミス(無意識)よりもわざと(意識的に)間違ったファイルを作ってしまっていることの方が多いからです。
このような、状態の中、データを適切に管理するにはどうしたらよいのでしょうか?
実際のDXでやること
DXというと素晴らしいシステムを導入すればできそうな気がします。
しかし実際は数億円もするすごそうなシステムを導入しても、適切なルールや文化がなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。
全ての社員がデータを適切に管理できるITリテラシーを持っており文化として醸成していれば多少はマシですが、人間社会である企業活動において文化だけでは解決できない厳密性もあります。
そのため、データを管理をするためには適切なルールを用意しなければならないのです。なぜなら、現状DXがなされていない会社におけるデータ入力役は十中八九人間が担っているからです。
人間という機能がデータを入力しているのであれば、その機能が正しく動作するルールを設定してやる必要があります。このように書くと人間を人と見ていないのか!と感じられるかもしれませんが、会社においては人は機能(役割)を持っています。その機能を適切に動かさなければ、いつまでたってもDXはおろかデジタル化さえ実現できないでしょう。
ここで厄介な問題となるのが、論理的に正しいルールを設定しても完璧ではないということです。システム開発であれば、論理的に正しいアルゴリズムを用意すればよさそうなものですが、相手は人間です。正しくてもわかりにくければ動作しないという側面もあります。
そのため、データ管理を実現するわかりやすくかつ論理的な2つの意味で適切なルールを設定しなければならないのです。そして、そのルールがきちんと守られるような文化を醸成する必要があります。ときに教育が必要になることもあるかもしれません。
しかし、これらをあわせて業務を進めていかなければDXとは実現できません。私自身、DX推進業務に携わって身をもって体感しています。
DXがデジタル・トランスフォーメーションといわれ、組織改革や業務改革の意味を含んでいるのはここで述べたような背景があるからだと思います。
単にシステムを導入するだけで良ければ、それはシステム化やデジタル化です。それに対してDXは業務フローや組織体制まで含めて変えていくということになります。そこまでやって初めてDXが実現できるというわけですね。
最後に
今回はDXにおいて必要だと考えられるルール作りについて紹介しました。
繰り返しになりますが、DXに必要な知識はそれほど多くありません。最低限のIT知識と豊富な業務知識を組み合わせて、正しくデータを管理できる体制を作っていく、そのためにはルールを適切に設定していくというのがポイントです。
意外とこの事実がわからずに、システムを入れれば大丈夫、コンサルに頼めば安心、ベンダーのいいなりでOK、といった安易な考え方でDX推進を進めているケースがありますが、個人的にはアンチパターンだと思います。
この記事が少しでも社内DXに苦しむ人たちの助けになれば嬉しいですね。
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