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【0℃でも凍らない!】ナノの世界の氷の秘密

世の中に水や氷を知らない人はまずいないと思いますが、そんなに私たちの身近にある水や氷についてもわかっていないことがたくさんあります。

その1つとしてナノの世界での水のふるまい氷のでき方です。

ナノの世界では話題の量子力学が出てきたり、私たちには想像が難しいような現象が出てきます。氷のでき方に関しても同様に、想像とは異なる不思議な性質が隠されています。

今回はそんなナノの世界での氷のでき方について研究した論文を紹介したいと思います。

ナノの世界の不思議

ナノの世界になるといったい何が変わるのでしょうか。

今回特に重要とされるのは界面の状態と液滴内の圧力です。
このように書くとなんのことやら…となってしまいますよね。安心してください、もっとかみ砕いて説明します。

界面というのは水滴とそれが触れ合う間の面のことです。例えば、雨粒であれば界面というのは雨と空気の間のことを指します。

今回の研究ではナノの水滴を調べるため、数ナノメートルの液滴を油の中に閉じ込めます。そのため、ここでの界面というのは水と油の分子が触れ合っている面を指します。なぜこの界面が重要なのかというと、一般的に液体が固体に変わるときに重要になってくるのが界面のエネルギーです。

余計わけがわからなくなると思いますが、簡単に言えば水と油の間(界面)の状態が、水でいる方が安定なのかそれとも氷になった方が安定なのかを決めるということです。そしてナノになるとこの界面の影響がかなり顕著に効いてくるということです。

この界面というのは固体物理(たとえば結晶)の分野ではとっても大事なことなんです。そしてナノならではの現象を注視してみてみると、いろいろと面白いことがわかってきました。

氷になる温度を測る

水は何度になると凍るでしょう?聞かれたら、0℃だよね、わかるでしょう。厳密には圧力などの条件も出てきますが、一般回答としては0℃でいいはずです。

それでは、2nmの水滴が凍る温度は?と聞かれたらどうでしょうか?0℃かなとも思いますが、ナノの効果でもう少し低いのかな?と予想する人もいるかもしれません。

この研究で測定した結果、なんと2nmの水滴が凍る温度は-41℃だったそうです。家庭用の冷凍庫に入れても凍らないんですね。

それではここからはもう少し具体的にどんな方法で測ったのか紹介していきましょう。

まず、2nmの水滴を作り出す空間を用意してやる必要があります。

そこで研究グループはanodic aluminum oxide(アルミニウム陽極酸化被膜)と呼ばれる材料を使いました。私も初めて聞きましたが、ナノサイズの穴がたくさん開いた酸化アルミニウムといった感じです。

anodic aluminum oxide (wikiより引用)

さて、この穴に油と水を入れて、凍らせるわけですが、どうやって凍ったことを確かめるのでしょうか?

これには電気抵抗を測るという方法を使っています。これは液体の水から固体の氷になる際に電気特性が変わることを利用したようです。

温度を下げていくと氷になったタイミングで電気抵抗が一気に上がり、そのジャンプしたところを凍った温度としています。そしてその結果が面白いんですね。

参考文献より引用

約150nmの水滴は-9~-11℃で、約20nmの水滴では-18~-20℃で、5nmの水滴は-36℃で、そして2nmの水滴は-41℃でようやく凍るということがわかりました。私たちの想像している0℃からはるかに低い温度にならなければ、凍らないというのは驚きですね。

氷の始まり=核生成

水が氷る際に重要な核生成がポイントになります。要点は冒頭に述べた通りですが、核生成というのは水が固体の氷になる最初の小さな核が生まれるときを言います。その小さな核が徐々に大きくなる、つまり周りの液体の水を取り込み固体の氷になっていくことで全体が凍っていきます。

そしてその核ができるには障害となるエネルギーを乗り越える環境が必要になるんです。

過冷却という言葉をいいたことがあるかもしれませんが、あれは0℃を下回った水が凍っていない状態です。寒い環境で静置された水は核ができるエネルギーが足りないため、凍らずに水のままでいます。そこに衝撃を与えると、突如核が生まれて、一気に凍りだすというわけです。

一般的にこの核は何もないところから生まれるよりも界面と呼ばれる水とそれ以外の物質が触れ合っているところでできやすいんです。この研究の場合は水と油の触れ合った界面がそれにあたります。

そしてその界面のもつエネルギーによって、核のできやすさが決まり、ナノスケールになるとこれが低温側に-40℃も必要になるということです。

詳細は結晶成長の理論の話になってくるので割愛しますが、今回は実際に測定することで驚異的に凝固点が下がることを明らかにしました。

興味がある方はオープンアクセスなので論文を読んでみてください。

最後に

論文のタイトルからしてもシンプルで、それでありながら非常に面白い実験でしたね。こういった研究ができるのは憧れますね。

さらに実験などにおけるツッコミどころはしっかりと自分たちで説明しており、ざっくり読んだ感想にはなりますがきちんとやってる感じはあります。

ナノの世界の研究は言葉にしてしまうと簡単に思えますが、そのものを直接見れない上に直接触れないという本当に難しい世界です。

最後に、この研究が何の役に立つのか?そう思われる方もいるかもしれません。ナノレベルで氷を操るということは、実は環境や素材、生命科学や食材といった様々な研究分野で注目されていることなんです。つまり、基礎科学ではありますが、この研究の調査結果は将来広い分野の研究者たちに使われることになるでしょう。

参考文献

Freezing of few nanometers water droplets


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