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ウイルスをコーティングして耐熱性ワクチンをつくる

約3年前ウイルスが蔓延した際に問題になったのがワクチンの供給問題。せっかく効果的なワクチンを開発製造しても、それを届けるのが難しいという課題がありましたよね。日本でも冷蔵したワクチンを誰がどうやって届けるのかといったニュースが流れていました。

このようにワクチンの供給というのは社会インフラとも密接に紐づいており、これらを解決するにはワクチンの熱に対する耐久性を上げる必要がありました。

今回はそんなワクチンの熱耐性を上げるために開発された基礎的な技術について紹介したいと思います。

ハイライト

ほとんどの生物と生物学的製剤は熱に弱く、ワクチンはその効力を維持するために低温保存が必要です。

そのため冷蔵保存に依存しないワクチンを開発することで、より貧しい地域にもワクチン接種プログラムを広げることができるんですね。

このような理由から耐熱性ワクチンを製造するために、さまざまな自然由来のアプローチが開発されていますが、複雑な処理手順を必要とし、熱安定性を適度に改善する程度に留まっています。

今回注目するのはポリオワクチンです。このポリオワクチンはポリオウイルスの病原性を弱めてつくります。つまり、ワクチンとは言えすごく弱いウイルスということになりますね。

この弱いウイルスも同様に熱には弱いので、しっかりと熱耐性を向上させていかなければならないようです。

この厄介な熱耐性を向上するためにウイルスをシリカで固めるという方法が開発されました。この方法はシリカ化ポリオワクチンにも適用でき、液状で熱安定性が著しく向上し、室温で1ヶ月以上保存した後でも効率的に使用できるそうです。

それでは、この研究をもう少し詳細に見ていくことにしましょう。

ウイルスを使ってシリカの殻をつくる

まずはウイルスを使ってシリカの殻を作ります。そもそもシリカって何?と思われるかもしれませんね。簡単に言えば、ガラスや石英(砂の成分)であるケイ素酸化物の一種です。

ウイルス懸濁液に調製したばかりのケイ酸を加え、pHを弱酸性に調整することでウイルスをシリカ化し、直径約100nmのシリカナノ粒子を形成させました。

参考文献より引用

シリカ化したウイルスの内部のビリオンコアは、ウイルス粒子の周囲に堆積した不均一な無機質の外装で囲まれていることが確認されました。このシリカをX線などで調べた結果、アモルファスという原子が乱れた構造であることがわかりました。簡単に言えばガラスと同じですね。

そして肝心の耐熱性に関してですが、シリカ化ウイルスは、高温環境下での耐熱性が向上し、37℃と42℃の高温環境下で感染力の低下速度をそれぞれ6倍以上、10倍以上抑制したようです。

修飾ウイルスのシリカ水和物外装は、室温での感染性を効果的に延長し、40日間の保存でシリカ化ウイルスの感染力は、4℃で保存した場合と変わりませんでした。

参考文献

考察

研究者らは、個々のウイルス粒子に水和シリカナノクラスターを人工的に作製し、熱に敏感な生物学的製品の熱保護外装の製造に使用できるウイルスを作製しました。

今回作製されたシリカコーティングを使えば、ウイルス感染性とワクチンの効力を維持することができます。

室温でのワクチンの保存期間が、カルシウムバイオミネラルでは3倍しかないのに対し、シリカコーティングでは10倍も長くなります

このように開発されたシリカ製剤は、過酷な環境下での生物の性能を向上させることができることがわかりました。このアプローチは他のあらゆるワクチンに容易に適応できる、耐熱性ワクチンの大規模生産への実現可能な道を提供するかもしれません。

最後に

今回はウイルスの外表面をシリカ化することで熱に対しての耐性を高める技術を紹介しました。この技術を応用することによりワクチンを冷却することなく世界各地に届けることができるようになるかもしれませんね。

そうなれば、次のウイルスパンデミックの際にはワクチンの供給におけるインフラ問題も解決するでしょう。まだまだ技術は基礎的な領域を出ていませんが、近い将来実用化されることを楽しみにしています。

参考文献

Hydrated Silica Exterior Produced by Biomimetic Silicification Confers Viral Vaccine Heat-Resistance

ChatGPT-assisted Journal Reading

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