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【読書感想文】ゲンロン戦記

私は活字が苦手なタイプですが少しずつ本を読もうと思い前から気になっていたゲンロン戦記を読みました。

著者は哲学者の東浩紀さん。普段メディアで見かけるといつも興味深いことを語っているので知っていましたが、その方が書いたゲンロン戦記が哲学とは違う視点から面白いと前に話題になっていたので読んでみました。

研究者でもある東さんなので、科学本っぽい感じかと思いきやどちらかと言ったら自伝的な本でサクサク読み進めることができました。

そして読んでいく中でいろいろな気づきがあったので、備忘録として記事にしてみたいと思います。

誤配に満ちた人生

個人的に興味深く少し哲学的だな、と感じたのは、著者が頻繁に主張していた“誤配”という点です。

哲学書というわけではないですが、この“誤配”に関していろいろと考察されています。

ここでの“誤配”というのは、何かの挑戦や取り組み(事業)が予期せぬ事態を引き起こすことに使われています。

ゲンロン戦記はその名の通りゲンロンという会社の設立から今までを綴った作品ですが、その中で多くの失敗があり、同時に成功がありました。そして多くの成功というのはいずれも予期していたものではなく、“誤配”によって生まれたと書かれています。

上手くいっている事業はいくつかあるものの、初めから狙ったような挙動はせずに、ときに回り道をしながらも、著者の予想に反した結果をもたらしているそうです。実際に本ではその実例がいくつも紹介されています。

このような話を見聞きすると未来を予測することは人間には難しく、そこにはいつも“誤配”が付きまとっているんだなと感じます。

最近のイグノーベル賞では、「成功するのは才能がある人よりも運のいい人」という研究が取り上げられて、一時期話題になっていましたが、やはり運の重要性を考えさせられます。ただ、それは単なる運ではなく、行動や挑戦した結果、起こる“誤配”という可能性もあるのではないでしょうか。

未来の予測は困難で、ときの運で人生が駆動されるのであれば、常に行動し挑戦し続ける人生が良いのでは?なんて思います。何が正解かもわかりませんが、出不精の私は考えを少し改めた方が良いのかもしれませんね。

仕事と身体性の密接な関係

DXやIoTと騒がれる昨今、会社の将来にとってデジタル化は必須の課題と言えるでしょう。実際、私の会社でも名ばかりDXをやっており、私は個人で何かまともな提案ができないかと日々四苦八苦しています。

そんなデジタル化が必要とされる社会において、ゲンロン戦記ではかなりアナログな仕事ぶりをしている側面も書かれていました。これはデジタルを否定するというものではなく、デジタル化によって失われていった身体性の重要さを再認識させてくれるいい気づきになります。

ゲンロンでは、代表だった東さんは大事な書類をファイルにまとめて、テプラでわかるように区別して棚にまとめていたそうです。

なんでもデジタル化した方が良さそうですが、なぜそんなことをする必要があるのでしょうか?そこには少し面白い視点がありました。

デジタルデータではなく、実物としてファイルを用意して棚にわかるように配置することで、日々そのファイルの存在を認識することができ、自分でテプラを打ったりしたことで重要な書類だということを感じることができます。

会社の存続に寄与するような“お金”関係の書類を紛失してしまうことで起きるリスクを、自らの身体性をもとに記憶に刻み込み仕事をするというのは最近の社会では忘れられていった感覚なのかもしれませんね。

なんでもかんでもデジタル化して、データの行方が分からなくなり、大惨事になることは良くあります。このファイルとしてまとめる話は少し広げると、デジタル化で起こりえる弊害に対する一つの解決策のようにも思えます。

私たちは科学の発展とともに気づけば身体性を見失っていたともいえるのかもしれません。そういった点でも、いろいろと考えさせられるエピソードでした。

最後に

ゲンロン戦記は、活字が苦手な私にとっても読みやすく、同時にいくつもの気づきを得られる本でした。

難しいことを考えずとも読める本なので、興味がある方は是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

次回はゲンロン戦記を読んで感じたことをもう少し広げて考えてみたいと思います。ということで、2回連続になりますが読んでくれたら嬉しいです!


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