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科学に1ミリも興味がない人にフーリエ変換を説明する試み

おそらく多くの人はフーリエ変換という言葉を聞いたことがないでしょう。

聞いたことがある人も大学で関連する分野を勉強していないと何のことやらと思われるかもしれません。大学で習ってもよくわからなかったという人もいるでしょう。

フーリエ変換とは

今回はそんなフーリエ変換を誰にでもわかるように超ざっくりと説明しようと思います。実際、科学の知識が皆無の知り合いに話してみたところ、何となく雰囲気がわかったようなので、本当に誰でもわかるはずです。

一方で、科学的な正確さは置き去りにするので、しっかりと理解したい人は是非教科書を読んでください。

さて、フーリエ変換とは何なんでしょうか?

フーリエ変換は周期性をわかりやすく表現するための変換手法です。シグナル分析の世界では時間領域を周波数領域に変換するとも言われますが、どちらにしてもわけわからないですよね。

そもそも、このような話をするといったい何のためにフーリエ変換を使うのか?というのが疑問として出てきます。そのため、ここでは現実世界でフーリエ変換を利用しているX線構造解析を具体例としてみましょう。

みなさんが道端で目にする石ころの多くは結晶の一種です。大昔、まだこの世のものが何からできているかわかっていなかった時代の科学者は、これらの石ころが何からできているのか調べようとしました。

結晶とは目には見えない原子や分子の粒が規則正しく整列した物質のことを指します。しかしながら、どんなレンズを使って石ころを覗いたとしても決して原子を見ることはできません。(今では電子顕微鏡があるため見えますが、当時はありませんでした。)

そんなときにX線という特殊な光を石ころにあててやります(レントゲンとも言われます)。

すると、背後のスクリーンに規則的できれいな模様があらわれることわかりました。この模様は原子の投影しているわけではありません。原子を拡大した影絵を見ているわけではないのです。

それでは何もわからないじゃないか!と思いそうですが、科学者は違います。彼らはとある規則性に気づくのです。

この模様は明らかに石ころの種類(原子の配列)に影響して形を変えます。つまり、この模様を科学者たちが一生懸命調べることで、石ころがどんな原子からどのようにできているのか分かるわけです。

さて、X線構造解析のざっくりした説明は以上ですが、ここまででどこにフーリエ変換が使われていたのでしょうか?

実は、石ころに光を当てたときにフーリエ変換が行われていました。つまり背後のスクリーンに映ったきれいな模様というのは石ころをフーリエ変換したものと言えます。(正しくは石ころの原子配列をフーリエ変換したもの)

数式で書くと積分やエクスポネンシャルが出てくるため、数学嫌いにはつらいフーリエ変換ですが、このように具体的に考えてみると非常にわかりやすいと思います。石ころに光を当ててるだけですからね。

さすがに語弊があるので、もう少し科学的に表現すると、石ころ(結晶)に特殊な光(波長が短いX線)を当てて、散乱した光が干渉して現れた模様(回折パターン)こそが、数学的に原子配列をフーリエ変換したものを表しているということなんです。

その模様(回折パターン)を逆フーリエ変換なりシミュレーションなり使って解析することで、目には見えない原子配列を導き出すというのがX線構造解析と言えます。

最後に

今回はX線構造解析を具体例としてフーリエ変換について紹介しました。
数学嫌いなら誰もが忌避しそうなフーリエ変換ですが、物理的に見ると非常にわかりやすいことをしていると思います。

世の中には難しいことを難しいままに教える先生も必要ですが、少々間違っていてもわかりやすく教える人がいてもいいはずです。今回はそんな取り組みのひとつでした。

くれぐれも正しい説明だとは思わないでくださいね。雰囲気こんな感じです、といったぐらいで理解してもらえれば嬉しいです。

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