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ASOBICA 今田 ×ファミトラ 三橋 CEOが本音で話すグロースステージを担う重要ポジション

大きな資金調達を実現し、ホワイトスペースを見つけて急拡大しているスタートアップは、一体何が違うのか。そして、そんなスタートアップはいま、どんな人材を採用したいと考えているのか──。

昨年日本経済新聞社の「NEXTユニコーン調査」に選出され、累計30億円超の資金調達を実現したAsobica 代表取締役CEOの今田 孝哉さん、シリーズAで約14億円の資金調達を叶えたファミトラ CEOの三橋 克仁さんをお招きし、拡大するマーケットをとらえた事業で働く醍醐味を聞きました。

ロイヤル顧客の「リアルな声」をマーケティングに


── 当社でご支援している投資先企業の中から、急成長中の2社にご登場いただき、大切にしていること、採用ポジションなどについてお話いただきます。まずは、Asobicaの今田さんお願いします。

今田 私たちは2019年創業で、従業員は業務委託を合わせて110人ほどです。「coorum(コーラム)」というコミュニティ運営から顧客分析までをワンストップで行い、顧客起点のPDCAを可能にするロイヤル顧客プラットフォームを提供しています。

株式会社 Asobica 代表取締役CEO 今田 孝哉氏 2015年ファインドスターグループ(スタークス株式会社)に入社。年間トップセールス及び、社内の歴代記録を更新し(当時)最年少昇格を達成。CS領域におけるSaaSの立ち上げに従事し、多くの会社のカスタマーサクセス部門を支援。その後株式会社Asobicaを創業し、カスタマーサクセスプラットフォーム「coorum(コーラム)」をリリース。2019年4月には30歳未満のアジア30人「Forbes Under30 2019」に選出。

今田 私たちには具体的に2つの特徴がありまして、1つ目はコミュニティサイトやポータルサイトをノーコードで制作し、顧客接点をデジタル化する機能を提供しているという点です。

2つ目の特徴としては、こうしたサイトで収集・蓄積したロイヤル顧客の声・行動データを分析し、ロイヤル顧客化する要因を特定しながら施策(キャンペーン・クリエイティブ・商品改善)に落とし込むための基盤を提供しています。

今田 これまで、「顧客」をマスで捉えることが多かったと思うのですが、「coorum」では上位5~10人の購入し続けてくれるお客さま、愛着を持ち続けてくれるお客さまをしっかり分析し、その理由・要因を特定して、その商品の成長につなげています。

今田 私たちがcoorumを通して実現したいのは、「あらゆる企業の経営を顧客中心にシフトする」世界です。これまで、担当者の感覚や経験をベースにマーケティングを行う企業中心の経営が多かったのではないでしょうか。しかし今後は顧客の声が中心にあり、それを起点にマーケティングしていくことを重視した方がいい。

つまりKPIは販売数軸足を置くのではなく顧客満足度を重要視し、広告・PRではなく顧客体験の向上(CX)に最も投資をする。そんな顧客中心主義の会社を増やしていきたいと考えています。

市場でも稀有な、CS領域のSaaSプロダクト


── 投資を担当するキャピタリスト・パートナーの村田さんから見て、Asobicaにはどのような魅力があると思いますか?
村田 日頃、投資活動の中でマーケティングSaaSの会社と話をすることが多いのですが、体感でいうと、約80~90%が顧客獲得の領域のSaaSなんですね。
でも実際の企業活動では、顧客獲得はほんの一部分に過ぎず、大切なのは、獲得後のお客様との関係性づくりです。そこで数年前から、「カスタマーサクセス」領域のSaaSプロダクトに投資したいと考えていました。 それも、ただ機能を提供するのではなく、強い世界観を持った事業に。
ちょうどその頃、サイバーエージェントの北尾さん(北尾崇 氏 サイバーエージェント・キャピタル シニア・ヴァイス・プレジデント)から紹介されたのが今田さんでした。

お会いした時、今田さんはSaaSの話は一切しなかった。顧客中心の企業経営を実現したい、サプライチェーンやバリューチェーンではなく顧客にフォーカスすべきだという話をずっとしていたんですね。このときのことは今も鮮明に覚えています。今田さんのアプローチをリスペクトし、一緒に仕事をしたいなと感じました。

事業をピボットして、ほとんどの社員がやめた


── 今田さんにお伺いしたいのですが、Asobicaの創業時はどのようなハードシングスがありましたか。
今田 私がAsobicaを創業したとき、残りの人生を全てこのAsobicaというチャレンジに捧げたいと思いました。ただ、それならあってもなくても良いような会社ではなく、人生をかけるだけの価値ある会社を創りたいと思った。リクルートのような、1万人や2万人の雇用を生み出す会社をつくりたかったんです。
それであらためて『ビジョナリーカンパニー』の「ハリネズミの概念」を読み直して、自分がワクワクすること、世の中に必要とされること、そして世界一になれる可能性のある分野、の3つが重なる領域で事業を展開しようと考えました。
ところが「世界一になれる可能性があること」を探すのが非常に難しかった。
そこで世の中の流れや変化を10年、20年、30年のスパンで考えて、会社のビジョンとミッションをまず考えたんです。プロダクトはその後でした。
最初は、NFTやブロックチェーンの分野でコミュニティを形成するアプリをつくったんですが、うまくマネタイズする方法が見つからず苦戦。そこである時点で、事業をピボットしました。その時は、事業だけでなく、社員もほとんどやめてしまい、会社としてリセットされたような状態になりました。その時が、一番のハードシングスだったと思います。

── 村田さんから見て、いまのフェーズのAsobicaで働くのはどんな魅力、醍醐味があると思いますか?
村田 何よりも、今田さんの熱量の高さですよね。事業もそうですし、顧客への向き合い方もそう。それから、ユーザーのみなさんもめちゃくちゃ熱くて。
しかも顧客獲得後の顧客接点をマネジメントするSaaSは、日本ではホワイトスペースです。PMFもしているし、売り上げも伸びている、にもかかわらずグロースステージの手前の段階にいる。つまり、これから一緒に苦労も経験しなきゃいけないけれど、その分成長できるし、会社が大きくなっていく過程を共に過ごせる。その点が面白いと思いますね。

「困難を楽しめる」PM、PdMと働きたい


── 今田さんは、どんな人材と一緒に働きたいですか?
今田 マーケティング、セールス、CSを領域横断で統括できるような人材が必要だなと感じています。

というのも、そもそも市場をつくっていくフェーズなので、重要なのは顧客への啓蒙です。そのためにはセグメントごとに象徴的となる事例をつくっていく必要があります。その事例を作るためには獲得からカスタマーサクセスまでが常に連動しながら各オペレーションに落とし込んでいく必要がある。

と同時に、PMやPdMも積極的に採用しています。いまPM、PdMは3~4人ですが、解決したい課題や作りたい機能・プロダクトは本当にたくさんあります。

人物像として大切なのは、ミッションに共感いただけること、カルチャーフィットすること。とくに「困難を楽しめる人」に来てほしい。

Asobicaの目指すことや解決したい課題はあまりにも大きいので、日々挑戦し続ける必要があります。10回挑戦して、1回うまくいくかどうかというくらいです。その9回の失敗を成長機会ととらえて楽しめる人が、いまのフェーズにはマッチすると思っています。

超高齢社会の日本を支えるエイジテックのパイオニア


── 次に、ファミトラの三橋さん、会社説明をお願いします。

三橋 ファミトラはエイジテックと呼ばれる、主にシニア層向けのITサービスを提供しています。日本ではまだ珍しいエイジテック企業であり、人生100年時代に必要なサービスを提供することを目指しています。また、「家族信託」という新しい資産管理の手法を普及させることを、ビジョンとして掲げています。

株式会社ファミトラ 代表取締役CEO三橋 克仁氏
2012年、株式会社マナボ(現株式会社manabo)創業、代表取締役。オンデマンド個別指導アプリ「manabo」のプロトタイプを自ら開発、ベネッセ/Z会をはじめとする国内教育系大手企業各社との業務提携と累計6.2億円の資金調達を主導。2018年に駿台グループに売却。 2019年11月、BCI(Brain Computer Interface)の商用化を見据えAgeTech領域の事業を展開するBOSSA Technology Inc.(現 株式会社ファミトラ)を創業、代表取締役に就任。 Forbes 30 Under 30 2016 Asia選出などメディア出演多数。東京大学大学院工学系修士課程修了。

三橋 ファミトラが取り組んでいるのは、認知症患者の資産凍結問題です。実は高齢者が認知症になると、判断能力が低下するため契約が無効になってしまうリスクがあります。資産の移動が凍結されたり、不動産の売却もできなくなったりするため、介護費用を捻出することが困難になります。

成年後見ではなく「家族信託」という第三の選択肢

三橋 政府機関や銀行に行くと、成年後見人制度を案内されるのですが、この制度には未だ多くの課題があるのです。親族が任命される確率は低い割に報酬が高く、任命されても実際には何もしてくれないというケースもあります。

この問題に対して、ファミトラは銀行などと協力し、認知症患者の権利を守る取り組みをしています。

具体的には、「家族信託」という制度に着目しました。高齢者は、自分の資産の一部を信託財産として、子どもなど信頼できる第三者に管理/処分権限を渡すことができます。この仕組では贈与税が発生せず、残った金利や配当を受け取ることが可能です。

しかも保険のように、高齢者があらかじめ子どもや家族に管理権限を渡すことで、後に認知症になっても何の問題もなく家の管理や預金などを自由に行うことができます。

相続や資産管理をテクノロジーで論点整理

三橋 いま、大半は家族が無償で請け負うケースが多いのですが、銀行や弁護士、司法書士の先生に依頼すると、お金も時間もかかってしまうため、なかなか普及していませんでした。

そこで、私たちはテクノロジーを活用し、誰でも簡単に安く、家族信託という素晴らしい仕組みを利用できるようにしました。

税務や登記、不動産、保険などの論点を整理し、誰でも簡単に家族信託を行えるようにしています。今では家系図情報や資産情報までデジタル化され、信託の設定や遺言機能も実装されています。家族信託を行う際に必要な契約書の作成やコンサルティングコストを削減できるこのサービスを、コモディティ化したいと考えています。

三橋 初期費用は5万円、月額費用は980円と、他のサービスに比べて圧倒的に安い。これによって、認知症になった場合の財産問題を解決することができます。この仕組みを充実させるため、200社近くの企業と連携し、幅広いサポートを提供しています。

マーケットとしても非常に大きく、高齢者の資産のうち約300兆円が資産凍結リスクがあるとされています。競合する制度として、成年後見や遺言信託がありますが、家族信託の方が優れていると言われていて、市場シェアが逆転する可能性が高いと考えています。

実際昨年末には信託財産(※ファミトラがサポートした家族間で信託された財産の累計)が100億円を超え、今年も200億円に達する見込みで、これからも大きなマーケットになっていくと考えています。

ハラリの『ホモ・デウス』を読み、脳波のセンサーへ

── ファミトラには、どのような創業ヒストリーがありますか?

三橋 自ら立ち上げた「マナボ」という教育系の会社を経営していた2018年頃、私も今田さん同様「人生をかけるならば何をしたいのか」と考えるようになりました。

その頃にユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』という本に感銘を受け、中でもヒューマンオーグメンテーション(人体拡張)に興味を持ちました。そこで中国の会社を訪問し、脳波の技術を試しましたが、まだ技術的に早すぎた。頭蓋骨に直接穴を開けて、センサーを装着しなきゃいけなかったんです。

そんな技術でも誰だったら使うかと考えたとき、高齢化社会におけるシニア世代のコミュニケーションに活用できるのではないかと考えた。そこで、「脳波を取らず、瞬きや視線でデバイスをコントロールできないか」とファミトラを創業することに。デバイスの開発に勤しみました。

高齢化先進国の日本ではシニア向けのビジネスや技術を育てることが重要です。これから大きな課題になっていくシニア向けビジネスをやっていこうと、2019年ごろに決めました。

── 投資を担当するDavidは、ファミトラのどこに魅力を感じ、なぜ支援したいと思ったんですか?

David 1つは、シニアのファイナンスに関わる社会問題を解決していること。時代が変わっていく中で、相続、資産運用、家族信託といった金銭問題の解決は、大きな社会貢献になる領域だと思います。
それからもう1つは、三橋さんは連続起業家だということ。「マナボ」でいろんな苦労を経験したからこそ、新しいアイデアをどんどん受け入れる姿勢がある。三橋さんは、より良いアイデアを見つけたり、アドバイスされたりしたら意見を変えていける。きっと、より強い会社、強いチームをつくれると信じています。

── ファミトラを立ち上げてからのハードシングスについて伺えますか?

三橋 以前立ち上げた「マナボ」で、いわゆるスタートアップのハードシングスはひと通り経験してきました。ファミトラでも同様です。
まず、みなさんも直感的におわかりになると思うのですが、そもそもシニアとITって相性が悪いんです。 それからビジネス的にも、法務や信託という概念とテクノロジーって、全然相入れないんですよね。 
でもこうした相入れない要素同士を、相入れないことを分かった上で、スペシャリストたちと協同してチームで解決する。そこがハードシングスですし、チャレンジだと思います。

100倍にもスケールする未踏の領域

── Davidは、いまのフェーズのファミトラで働く醍醐味はどこにあると思いますか?

David 誰もやっていないことに挑戦できる、これに尽きます。これまでほんの一部の人にしか提供できてなかった仕組みを、多くの人に提供する仕組みづくりをしている。それに、お金の話や親子関係という、複雑で揉めやすいところにうまく入り込んでいます。

つまり営業もマーケティングも、プロダクト開発も、どうやってやればいいのか誰も知らない領域を開拓している真っ最中。これから5倍、10倍、100倍にもスケールできるマーケットを、ほぼ白紙の状態からつくっていけるのは、非常に面白いと思います。

── 三橋さんは、どんな人材を採用したいとお考えですか?
三橋  価値観の違いを楽しめる、受け入れられる方がありがたいなと思っています。今持っている知識や経験はあまり見ていなくて、新しくキャッチアップしよう、進化しようという姿勢や、変化を恐れない気持ちがベースにある方がフィットすると思っています。
いま最も採用したいのは、将来の幹部候補です。具体的にはCOOや、チーフレベニューオフィサー(CRO)候補の方々。
実際に現場へ出向いて、お客さんのインサイトを真正面から取り切る、提携している200~250社ほどのエンタープライズ企業の中に入り込んでしっかり動いてもらうという、そんな現場力、アライアンス力が必要だと思っています。もちろん、テクノロジーについてもわかっていてほしいです。
そこを、営業やアライアンス、マーケティング、techも含めて、横ぐしでカバーできるCOO、CROを求めています。
それから、「人生100年時代のコンシェルジュ」になるべく、テクノロジードリブンでプロダクトの舵取りをしていけるPdMの方にも来ていただきたいですね。


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