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IMRADについて。知ってる??

IMRADIPA: /ˈɪmræd/、(イムラッド)は、文章構成 (Organization) の型式 (Style) の名称の1つである。IMRADの名前は、Introduction, Methods, Results And Discussionの略に因む。その名前の由来通り、IMRAD型の文章は、その骨格部が、少なくともIntroduction, Methods, Results, Discussionの4つの部分に分かれることを特徴とする。主に実証研究に基づく自然科学工学医学社会科学、一部の人文科学の論文において、この形式に従った章立てが、よく採用されている。

IMRAD型の概要

IMRAD型の文書は、科学的方法[12][39][40][41][42] [43] [44] [45][46][47] [48] に基づいた推論を記述 / 検証するのに適しているため、学術論文においてよく使われる。自然科学人文科学社会科学を問わず、実証分析に基づく論文では、ほとんどがこのIMRAD型の構成を採った形で学術誌に掲載される。また、論文以外でも、学会発表のスライドやポスター [49][50][51][52]や、学生実習等のレポート[53]でも、そのような構成がみられることがある。

IMRADの名前は、Introduction, Methods, Results And Discussionの略に因む[1][2][10][19][20][21][22][23] [注釈 1][注釈 2]

この語源からも分かるように、IMRAD型の構成を取る文章は、基本的にはIntroduction(導入; I)、Methods(研究方法; M)[注釈 3]Results(実験結果; R)、Discussion(考察; D)の4つの要素をこの順番に並べた骨格を持っている。通常はIntroductionの前に、Title(タイトル; T)をおくことや、Discussionの後にConclusion(まとめ; C)を書くことがほぼ必須で、ほとんどの場合、Titleの後(Introductionの前)にAbstract(アブストラクト; A)が入るのが普通である。また、文章の要素という程ではないが、それに準ずる役割を担うものとして、文章の最後に、謝辞参考文献一覧脚注が書かれていることがほとんどである。そのため本記事では、骨格部分に加え、Title、Abstract、Conclusion等を含めた構成のことを、IMRAD型の定義とする。

英語論文校閲業者 editage 社による解説記事には、それぞれの項目に以下のようなことが書かれるべきだと書かれている[37]

  • Introduction :What are you studying and why?(何を研究したのか?、何故それを研究したのか)

  • Methods :What did you do?(具体的には何をしたのか?)

  • Results :What did you find?(何がわかったのか?)

  • Discussion :What do your findings mean?(あなたが見つけたことは何を意味するのか?)

  • Conclusion :What have you learned from the study?(この研究を通じて得られたものは?)

もう少し詳細な情報を与えるため、表1にIMRAD型の構成要素の概略をまとめる。それぞれの項目にどのようなことを書くべきかについてのより具体的な説明は、それぞれの項目の要説に委ねる。なお、表1に挙げたことよりもより具体的な内容については、「問いと答えが繋がっていないような論文はダメな論文である」といったレベルの常識的な注意を除き、分野や文献、学者によって「どうすべきか」について解説に若干の温度差があることも念頭においておかれたい。

表1: IMRAD型の文章の構成要素とその役割

Title (T)題名通常20文字から30文字で長くても40文字程度。必要に応じてSubtitle(サブタイトル; 副題)が入る。Abstract (A)要旨文章全体の要約Introduction (I)緒言、導入コンテクストの確立と、問題提起、研究の位置付けを行う。
つまり、研究背景や研究目的の説明等を通じて、どのような切り口、文脈でどのような問題を論じるのかを設定する。Methods (M)研究方法(手法)研究に用いた方法、手法、ストラテジーについて記述する。

  • 実験を伴う研究では、実験方法、実験の原理、装置構成、実験手順、解析手法、実験に用いた試薬、機器などの情報を書く。

  • 調査を行う研究では、調査対象の特徴(例えば「東京都の中学生」等)、標本抽出の方法(例えば、「無作為に100名抽出した」等)、調査の手法(例えば、「アンケート調査」)、「統計処理の手法」に等ついて記載する。

  • 質的研究の場合には、フレームワークとなる考え方や、考察する際の着眼点について説明する。

  • いずれの場合にも、必要に応じ、「考察に用いるための理論の概略」や、上記の事柄の概説(解説)も書く。

  • 「実験」や「調査」を行う際には、論文の課題を、検証可能なレベルにブレイクダウンする過程、即ち「概念操作化」 (Operationalization) [77][54][55]を行う必要があるが、その過程に関して言及しておいたほうが良い場合には、「概念操作化」の過程を記載する。

Results (R)結果研究過程で得られたデータの叙述的な説明を行う。ここで示したデータは、「Introductionで提起した問題への答えとしての仮説」を支える根拠となるものを厳選する。Discussion (D)考察Resultsで示したデータがどのような傾向を示しているのか、あるいは、どのような意味を持つのか、それはなぜかを、論証、モデル提示等により説明する。

  • 通常は、「Introductionで提起した問題への答えとしての仮説」(通常は、Discussion・Introduntionの少なくとも片方には明示し、Conclusionには必ず記載する。仮説とはここではデータの傾向等についての見解や要点、推定要因等)を提示した上で、「Resultsで示したデータや、先行研究の結果」(根拠)と「仮説」の間を結ぶ推論過程(論拠)を記述する。必要に応じて、実験自体の妥当性も論証する。

Conclusion (C)まとめ全体を総括する。

その他の形式として、IMRADほどまで分化していないが、IBC型よりかは分化の進んだスタイルとして、ライティング教育の現場でよく使われるFive-paragraph essayというものもある。

逆に、単なるIMRADよりもより、細分化されたルールを持つIMRAD構造としては、APAスタイル心理学社会科学看護学)、バンクーバースタイル生命科学)、AMAスタイル(医学)等が知られ、それぞれ、独自の思想に基づいて洗練されていっている。

IMRADとは明確に異なる形式としては、法学の分野の論文において好まれるIssue, Rule, Application, and Conclusion (IRAC英語版)) といわれるスタイル[60]や、いわゆるQCに関する分野、特に、医療の質・安全に関する分野で好まれるSQUIRE (Standards for quality improvement report excellence)[61]などがある。

いずれの形式においても、そのような形式が定まった背景には相応の思想と相応の歴史があるため、思想や歴史を理解したうえで使いこなすことが重要である。

IMRADの内部構造[編集]

I, M, R, Dそれぞれの項目中に書かれる記載もある程度の類型化がなされている。個々の項目にどのようなことが書かれるべきかそれ自体については、それぞれの項目説明欄に委ねるが、ひとつの見方として「ムーブといわれる、特定の特徴を持ったかたまりが、有機的に結びついてIMRAD型の文章になった」というものがある。

ムーブという概念は、言語学文学における、分析手法のひとつのムーブ分析に関する概念である[62]

ムーブ分析とは、

  • 特定のジャンルの文章を

  • いくつかのセグメントに分解し

  • 各セグメントの構成や役割を分析することにより

  • 文章を分類、分析する

手法の一つである[62]

京都大学の田地野彰教授のグループの「京都大学学術論文コーパス」に関連した論文の構造分析に関する研究(主に大学での英語教育カリキュラムの開発に関する観点から)によると、現実の論文には、少なくとも以下の24個のムーブが存在するとのことである

IMRADと論理の三要素[編集]

IMRAD型は、論理的な説明を行うフォーマットとして優れている。一般に、「論理的」といった場合には、以下に示すトゥールミン三角ロジック(論理の三要素)を持っていることが要求される[40][63][64][65][66]。この意味で、論文の骨格は、三角ロジックで表現可能である[65]

  • 「主張」

  • 「根拠となる事実(証拠物件) / 仮定」

  • 「根拠となる事実から主張を演繹 / 帰納するための推論過程(推論過程)」

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