見出し画像

日本人にとって英語学習は難しい。3つの視点で考えてみた【第二言語習得論】

1、言語

ひとつ目は日本語と英語の概念の違いが原因です。
英語学習初心者だけではなく、中級者になっても日本語の概念をそのまま英単語を用いて使っていることもあります。

日本人の英語学習者はまずは単語帳を使って、英語を日本語で理解します。

そもそも、英語は日本語と全く異なる言語体形だと言われており、ひとつの英単語を日本語で解説されたとしても、ネイティブが持つその英単語のイメージを日本語で伝えきれていない場合もあります。

GO

例えば、一億人の英文法で基礎動詞とされている単語に" GO"という意味があります。

この"GO"の意味は、日本語だと「行く」と学ぶと思うが、本当の概念としては34個ほどあります。この34個は Oxford Learner's Dictionary を参考にした場合で、「ある地点からある地点に移動すること」というのが"GO"の基本イメージです。

もっと、英語らしい表現を学んでいこうとすると"GO"は「死という表現を使わずに意味するとき」や「〜と言う」など、他の単語を表現する際にも使われていることが理解できます。


34個の意味を理解するのは、英語初心者にはもちろん負担が重すぎますし、英語ネイティヴでも英英辞典を見て34個の意味があると調べて使っているわけではないと思いますので、この方法は英単語のイメージを自分なりに理解したいという私の学習方法ですが、日本人にとって英単語を覚えるのがいかに難しいのか、と言うよりも違う次元の事柄を学ぼうとしているのか、という事実が見えてきそうな例でしたので取り上げました。

HOW

"GO"の異次元さと同様に、"HOW"の使い方も、日本人英語学習者にとっては最初につまずくポイントだと思います。
私ももちろん気づかず間違えて使っていました。
日本人の英会講師は、もちろん日本人なのでその間違いに必ず気づくとも限りませんよね。

「これについてどう思いますか?」という日本語を文字通り英語に直してみると、"How do you think about it?"となります。

日本語の辞書には「どんなふうに」と書いてありますし、英英辞典にも「in what way or manner」と書いてあり、「どのような方法・様式で」の意味になっています。

では、"way"という単語は、英語の世界ではどのような意味になるのでしょうか。

a method, style, or manner of doing something

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/american_english/way_1?q=way

「メソッド=方式、スタイル=様式、マナー=作法」です。

上記を踏まえると、" How do you think about it ?" は「どんな方法、様式、作法でこれについて考える?」というニュアンスになってしまうと思えそうです。

そのため、" How do you think about it ? "と聞かれたネイティブスピーカーは、「え、どうやってって自分の頭で….?」というように困惑してしまうこともあるかもしれません。おそらく、話の文脈から言いたいことはわかると思うのでそこで、「 Howの使い方間違ってるよ」とわざわざ指摘してくれる人は少ないと思います。

Borrow

私たち日本人の多くは、幼い頃から、人の家や公共の場でお手洗いに行きたいときは「お手洗いを借りてもよいですか?」と聞きなさいと教えられてきたことかと思います。「借りる」とは

私も、「お手洗い借ります」と無意識に使っていますので、英語初心者の時はなんのためらいもなく " Can I borrow your toilet ? " などと使っていました。そのように使っていても、「トイレ?お手洗いに行きたいんだな?」となんとなく伝わりますし、そこでわざわざ間違いを訂正してくれる人も少ないと思います。

ここで、英単語 " borrow "の意味を英英辞典で確認してみます。

to take and use something that belongs to someone else, and return it to them at a later time

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/american_english/borrow?q=borrow

" borrow "の意味は、「他人のものを手に持ち、使い、のちに返すこと」です。" take " という意味は "carrt/lead "なので、「いちど手に持ち、後で返すこと」というイメージです。

おそらく、これがネイティブスピーカーが持っている英単語イメージなのだと思います。

日本人が「お手洗いをお借りしていいですか?」というときは、文字通りの「借りる」ではなくて、「使う」ことを意味していそうですね。日本人ネイティブの私たちは、慣用表現に慣れていて間接的な言い方をしていることさえも気づいていないようです。日本人の慣用表現をそのまま英語に適用すると、齟齬が生じるようですね。

上記を考慮すると、
「お手洗いお借りしてもいいですか?」は英語で
「 Can I use your bathroom ?」と言えば普通に通じそうです。

Toilet 

また、 " Toilet "は " a large bowl " という意味です。

なので、「 Can I borrow your toilet ? 」は「お宅の便器をいちど持っていってお借りして、また返すけどよい?」といっているようなものなのですね。

この概念を初めて知った時は、衝撃的でした。まさか、日本語では当たり前に使われている単語を英語で使ってみようとすると変な人みたく聞こえてしまうなんて、という感じでした。

「トイレ」「お手洗い」の違いも気になりますね。

まずは、Adobe Stockで " Japanese toilet " と " American toilet "を検索してみました。
検索したところ、以下のような写真が出てきました。


Japanese Toilet


American Toilet

上記2枚の写真をみると、日本式のお手洗いとアメリカ式のお手洗いのイメージの違いがわかると思います。

日本の一般的なお手洗いは、「便器のためだけの空間」であり、アメリカ式の一般的なお手洗いは「便器、シャワー、お手洗い用のシンク一式のための空間」です。

そのため、 " Can I use your toilet ? "よりも  " Can I use your bathroom? " という方がしっくりきそうですね。


2、生活

生活面でも、日本とアメリカはまったく異なります。
幼少期に過ごしてきた家の作り、使ってきた電化製品など、あらゆる点で異なるがゆえに、異なる概念のことをしかも英語で説明されても「?」になることもあります。

ベースメント(地下室)

日本の家のほとんどにないもので、アメリカの郊外の家のほとんどにあるものがベースメント(地下室)です。

ベースメントとは、文字通り地下にある部屋です。

一軒家だけではなく、一軒を2世帯でシェアする形のタウンハウスでも、ベースメントが備わっているところが多いです。

このベースメントというのは、もの置き場になったり、リフォームする余裕がある人は家具などを置いて部屋のようにしてしまう人もいます。

Covid -19 や過度なインフレの結果、経済的にひとり暮らしが困難な人や、家族と住んでいる中年男女が実家のベースメントに住んでいるなんてことはよく聞く話です。

日本人からすると、「地下室に住んでいるの….?」と「?」マークが浮かびますが、アレンジ次第ではとても魅力的な空間になるのがベースメント。

60年代〜の古いアメリカのドラマでは、子どもたちをベースメントで遊ばせたり、やりたい放題させる場所がベースメントだったり、というシーンをよく見ます。ネットフリックスでは、That '90s Show など、古き良きアメリカ(?)の文化を学べるシリーズものもありますので、興味がある方は見てみるといいかもしれません。

キッチン周り 造りの違い

日本でも一般的に使われている「電子レンジ」
ほとんどの家庭では、電子レンジは単体でぽんっと棚などに置かれています。

しかし、アメリカ郊外の一軒家やタウンハウスのキッチンでは、棚と一体になっているものが多く見られます。

アメリカ郊外家庭での一般的な電子レンジ(上部が電子レンジ)


英語では「 Microwave」と言います。
電子レンジから放出される熱があるので、電子レンジの上部に備わっている棚には熱に弱いものを入れることはできません。
うちの場合は、紙コップ、紙のお皿、プラスチックフォームスプーンなど、集まりの際に使うようなグッズを保管しています。

そして、電子レンジの下部に備わっているのが、コンロとオーブンです。

下部にある大きな取手が備わっている部分がオーブンです。
日本の一般的な家ではなかなかお目にかかれないサイズのオーヴンですよね。典型的な郊外のアメリカ人は、人の集まりなどでピザを焼いたり、ホリデーシーズンにはキャサロールやオーブン料理を作ったりしていますので、やはりこの巨大オーブンは必需品のようです。

また、日本で言う「コンロ」は完璧に日本語です。
コンロの由来は以下の通りです。

コンロは、漢語「火炉」の宋音「コロ」に由来する。 「コロ」が音便化されて「コンロ」となり、「コン」に光が丸い輪となってほんのりと輝く意味の「焜」の字が当てられ、漢字では「焜炉」と表記されるようになった。

カタカナで書くし、なんとなく英語っぽいなあ〜と「Konro」などと言っても通じないのですね。

コンロは、「オーブントップ」と言われています。
文字通り、オーブンの上にあるからです。

「オーブンの上にコンロが備わっているからオーブントップという」概念を最初に知った時は、「なるほど〜」と感激してしまいました。

ちなみに、Stove top stuffing という商品がありますが、これはコンロ・または電子レンジで簡単に作れるインスタント食品です。なので、" Stove top "という名前がついているのですね。


店頭に並ぶ Stove Top


3、文化

アメリカのスモールトーク文化

日本人にとって、または他の国の人にとっても、特に顕著な独特なアメリカ文化のひとつに「スモールトーク」があると思います。

スモールトークは「小さな話 = 雑談」ですが、アメリカ人は空気を吸うように雑談をする傾向にあると思います。

スーパーでも、道を歩いている時でも、ショッピングモールを歩いている時でも、何か困っている様子の人がいる時でも、家の外で散歩をしたりタバコを吸っている時でも、人がいれば目でコンタクトを取り、手をふり、挨拶をします。

「え、知り合いなの?」と思えば、まったく知らない人です。

昔の知り合いの友人の家族だったり、昔どこかの店で仲良くなって話すようになった人など、いろいろな方向から知り合いが出てきます。

こちらの記事を読んだところ、アメリカ人は「好かれたい」という気持ちが強いようです。「あなたはどんな人なの?私はこのような人です。」みたいな感じなのでしょうかね?


アメリカにいると、どんなに田舎でも多様性が存在しています。肌の色だけではなく、個人やその親族の出生地だったり、恋人やパートナーの出生地、民族柄だったり。肌が白くても、ポーランドやその他欧州諸国にルーツがあったり、アフリカにルーツがあったり、アジアにルーツがあったり。見た目だけでは到底その為人(ひととなり)は判断できないのです。

数分の雑談だけではもちろんルーツを知るところまでは行かないと思いますが、「あなたのことをもっと知りたい、どんな人なんだろう、せっかくの縁だし」という感じでしょうか、とても気軽に人に話しかけます。

そのような文化を知らずにきた日本人はびっくりするでしょうね。
もし、恋人同士で歩いていていきなりアメリカ人の彼が知らない女と話し始めた!知らない女と電話で話していた!などとなることも不思議ではありません。

しかし、ほとんどの場合は、ただ単に雑談の文化の派生だったり、人脈を広げるための手段と考えていたり、到底日本文化に染まっている私には理解できないところもあります。

英語ができない、というのはもしかして雑談の文化に慣れていないからなのか、雑談はどのような内容を話せばいいのか、などと深掘りしていくと、英会話スキルが上がっていくかもしれません。

日本の謙遜文化

上記の「アメリカのスモールトーク」文化と比較して、「日本の謙遜文化」はまったく異なる文化になると思います。

私が子どもの頃は、親から過度に褒められたり、自分の子どもがいちばん!というよりも、他人の助けによって達成できた、とか、◯◯さんの家の◯◯ちゃんは、慶応大学に入ったんだって、などと他人への感謝や尊敬を重視する親の姿を見ていました。

どんな習い事をしているとか、どんな学校に行ったとか、ピアノのコンクールで優勝をしたとか、他の家の子どもと比較されることが多かった印象です。

また、高校生の頃に彼氏ができた頃も、自分のネガティブな面ばかりを母親が彼氏に言っていたり、到底理解ができない「謙遜」癖を持っている親も多くいます。

小さい頃からこのような謙遜文化で育ってきた私たちにとっては、アメリカ人の自信満々な態度や、スモールトークでガンガン何でもないことについて話しかけられたり意見を求められると、根本的に何かが違う…と思わざるを得ない状況に陥るでしょう….。

謙遜癖がつくと、「どうせ自分の意見なんて言わなくてもいい。言っても意味がないし、周りの意見にかき消されるだけだ」なんて、負のループに陥ってしまうかもしれませんね。

そもそも「謙遜」は、

へりくだること。卑下すること。ひかえめにすること。また、そのさま

https://kotobank.jp/word/%E8%AC%99%E9%81%9C-492607

「へりくだる」は、

相手を敬って自分を控えめにする。謙遜(けんそん)する。卑下する。

https://www.weblio.jp/content/%E8%AC%99%E3%82%8B

という意味です。

「自分を控えめにする」と、何を考えているかわからない人と捉えられる可能性もあります。

あまり自分のことを話さない場合は「あまり話したくないのかな」と、逆に相手に気を遣わせて会話終了になることを予想できます。

ありのままの自分を、自信を持って表現することを意識することで、何を話せばよいか明確になり、英会話にもプラスになるかもしれませんね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?