夜、雨上がりの桜並木で

夜、雨上がりの桜並木で

ゴールデンウィークは各地で人が増え、外国人観光客がコロナ前の8割ほどまで回復したとか。飛行機の利用者も昨年の3倍に増えたとか。あの不思議な数年間から急速に元の状態に戻っています。

 リモートワークが終わり、毎日出社に変わりました。景気も回復しているのか取引件数増加に伴い残業も増え、住んでいる文京区で過ごす時間が減っています。

リモートワークの最中は、朝1時間ランニングをし、昼にちょっと植物園まで息抜きに行き、仕事が終わったあとは、クールダウンに1時間ほどウォーキングをするという、ぜいたくな時間を過ごしたものです。この街を歩くたびに史跡発見し、この地域に住む人々の優しさに出会い、ほっとする毎日でした。もうあんな贅沢な生活には戻れないなぁと思いつつ、今日も残業を終えて、家に向かっていました。

桜並木に差し掛かりました。ゴールデンウィーク都内は車も少ないのか、1台も走っていません。先ほど降った通り雨のせいでしょうか。歩く人やランニングする人もいません。誰もいない二車線の道路に、道の両側から大きく張り出した桜の枝が、緑のトンネルを作っています。「さあ、どうぞお通りください。あなたの通る道ですよ。」

雨で濡れた葉は、電灯の光と月明かりを反射して、柔らかな光沢を放っています。思わず、歌を口ずさんでいました。車も人も通らないし、両側はマンションで中の人にも聞こえません。一足歩くごとに段々気が大きくなり、やがて、思いっきりお腹から声を出して歌いながら坂を降りたのでした。

この街で過ごす時間は減ってしまったけれど、思わず歌いたくなるような街が『お帰りなさい』と、待っていてくれます。それを、ありがたく思って、この街で過ごす時間を大切に抱きしめたいと思うのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?