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【良書厳選】全国の救急科専攻医にオススメしたい書籍

割引あり

最初にお読みください

先日は「初期研修医が最高効率で成長するための書籍」をお読みくださいましてありがとうございました。たった3日間で1000PVに到達し、多くの方におまけ部分をご購入いただきました。

記事の反響も数多くいただきましたが、その中に救急科専攻医向けの記事も書いてほしいという要望がございました。

救急科専攻医向けとなるとジャンルも広くなるので大変だと思ったのですが、誰かの役に立つと思って今回記事を書きました。


専門医資格を5個有し、医学書を今までに200冊以上読んできた私が、救急科専攻医の皆さんにオススメしたい良書を厳選して紹介いたします。

※最後のおまけ部分のみ有料としておりますが、こちらのツイートをRTで紹介してくださると無料で読めます。

更新履歴
2024/02/07 一部追記


初期研修期間

今回の記事は前回の記事を読んでいただいていることを前提に執筆しております。
前回の記事をお読みでない方はぜひお読みいただき、記事の中で紹介しております書籍をお読みになっていただきますようお願いいたします。

救急入局前にしておくべきこと

Off the job training

・BLS/ACLS/ICLS/PALS/JATEC
救急科専攻医であれば受講はマストかと思います。
いつ受けても同じですが、暇なうちに受講をしておいた方が良いです。
・FCCS
マストではありませんが、集中治療の基礎を満遍なく学ぶ良い機会なので暇があれば受講をお勧めします。
・JPTEC
マストではありませんが、その地域の救急隊やメディカルスタッフと一緒にプレホスを勉強する良い機会だと思います。

資料管理/勉強法の確立

・pdf管理
書籍や勉強会資料をはじめ、今の時代はpdfデータを多く扱います。
したがって、どのアプリケーションを利用するか、カテゴリ分けをどうするかなど、早いうちに確立しておいた方が良いです。
ちなみに私はすべてのpdfをdropboxで管理するようにしております。
・勉強法
論文や書籍、勉強会で学んだ内容をどのようにまとめるか、初期研修医のうちに勉強スタイルを確立した方が良いと考えます。
medicinaという雑誌の2015年4月号に高岸勝繁先生の勉強法に関する記事が載っているのですが、私はそちらを大変参考にしております。
・UpToDate契約
DynaMedでも構いません。
専攻医プログラムに進んだ後は、自分の専門領域以外の文献を見る余裕が少なくなります。したがって、気軽に参照できる質の高い二次資料へのアクセスは確保しておいた方が良いです。
UpToDateは記事の執筆者の考えに引っ張られるという意見もあるのですが、私はむしろそれで良いと思っています。そういうのが嫌な人はDynaMedの方が向いてるかもしれません。
ちなみに私はUpToDateとDynaMedどちらも契約しています。

他科領域の修練

学生時代/初期研修中は、気軽に他科の修練を積むことのできるフィーバータイムです。救急科で求められるスキルは様々ですが、初期研修医のうちに一つでも多く経験した方が良いと思います。
外科手術、整形外科手術、IVR、消化器内視鏡、病棟診療、外来診療など将来に備えて一つでも多くの経験を積めるようにしましょう。

入局先のプロトコル確認

入局する救命センターのプロトコルがあれば、入職前にすべて確認しましょう。プロトコルを把握しておくことで、仕事を覚えるのが楽になりますし、その病院の特色に合わせたローカルルールを学ぶ良いきっかけとなります。

救急入局後 基礎作り編

①ER・ICU 100のスタンダード

救急や集中治療の診療について有名施設のプロトコルが掲載されております。2017年発売なので部分的にアップデートが必要ですが、2017年時点でのスタンダード(厳密にはローカルルールでもありますが)を知るのに非常にちょうどよい書籍です。
何もない状態で枝葉ばかり学んでも仕方ないので、こちらで基礎体力を身に付けましょう。

②ER・ICU100のピットフォール

救急・集中治療で勘違いしがちな診療の誤りについて文献をもとに解説してくださっている書籍です。自分で調べたり、わざわざ教えてもらったりしないと気づけない間違いを正すきっかけになりますので、専攻医になりたての先生にお勧めです。

③重症患者管理マニュアル

2018年発売の書籍ですが、集中治療の基礎がわかりやすくまとまっています。枝葉の部分は適宜アップデートが必要ですが、集中治療の基礎体力をつけるという意味では非常に有用な書籍です。
ぜひとも通読をお勧めします。

④明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則

この書籍の内容は前提知識として持っていない人に集中治療を教えるのはコストが高いと感じてしまいます。ぜひとも手に取っていただければと思います。

⑤時系列で紐解く 有益な輸液の話

こちらの書籍も同様です。輸液療法について「わざわざ言うまでもない」基本をしっかり解説してくださっています。
④、⑤のおかげで輸液療法の教育コストが非常に下がりました。
川上先生には感謝してもしきれません。買いますのでドンドン新刊出してください。お願いします。

⑥こういうことだったのか!! CHDF

集中治療室では腎代替療法を行うことがよくあります。
しかしながら、初期研修では「維持透析」の患者さんを診療することはあっても、「急性期の腎代替療法」に触れる機会はあまり多くありません。
こちらの書籍では、急性期に腎代替療法を行う理由や概念について易しく解説されております。

※こういうことだったのか!!CHDF・ECUM・PEトータルマネジメント

2023年12月にバージョンアップして類書が出ました。こちらも合わせてお勧めです。

⑦ICU/CCUの急性血液浄化療法の考え方,使い方

「こういうことだったのか‼CHDF」と同じように急性期における血液浄化療法の考え方について解説してくださっている書籍です。
2014年発売と少し古いですが、書籍の内容自体が基礎の話なので問題はありません。こちらも前提知識を身につけるために有用ですのでオススメです。

⑧救急診療指針

率直に言って、「救急の教科書」として優れたものは国内にありません。
洋書ですとRosen's Emergency MedicineやTintinalli's Emergency Medicineといった優れた書籍がありますが、日本にはそれがないのです。
それではどの本を教科書として読むかと考えた時に、消去法で最も良いと思った書籍がこちらになります。

内容自体は救急科専攻医プログラムの到達目標を意識した構成になっているため、項目としての漏れはありません。
内容にはツッコミをいれたくなる部分もありますが、執筆者の先生が悪いわけではないと思います。様々な事情があったことと推察します。
いずれにせよ、救急科専門医試験ではこちらの書籍に基づいた勉強がマストとなりますから、どうせ読むなら読んでおいても無駄にはならないと思います。
こちらの書籍を参考にして、救急科専門医はどのようなことを身に付けなければならないのか意識して学習するのが良いと考えます。

⑨当直ハンドブック2024

こちらは前回の記事でも紹介させていただきました。
ER型二次救急医療機関での診療の勉強においては、こちらの書籍の右に出るものはないと思います。
まだ購入されていない方はぜひ購入をご検討いただきたいです。

救急入局後 内科診療・病棟診療

前回の記事で紹介した書籍を最初に5冊列挙いたします。

⑩総合内科病棟マニュアル 病棟業務の基礎(赤本)

⑪総合内科病棟マニュアル 疾患ごとの管理(青本)

⑫病棟指示と頻用薬の使い方

⑬ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第2版

⑭レジデントのための 内科診断の道標

ここからさきは新たに紹介する書籍です。
⑮考える技術 第4版

救急科に進むとどうしても内科診療を疎かにしてしまいがちであり、それでいて「内科診療を出来ている気になってしまう」ものです。
内科医に限らず臨床推論の勉強はとても大切です。
こちらの書籍はボリュームがあって読むのが少し大変ですが、読んで後悔はしない内容だと思います。ぜひご検討願えればと思います。

⑯聞く技術 答えは患者の中にある 第2版

救急診療は、限られた時間でマネジメントをしなければいけないことが多く、問診が雑になってしまいがちです。
少ない時間で最大限を情報を引き出す必要がある救急医だからこそ、問診に力を入れて勉強しなければなりません。
こちらの書籍は、「患者さんからどんな情報を聞き出せばよいのか、論理的に筋道を立てて質問をする力」が身につく書籍と言えます。

⑰マクギーのフィジカル診断学 原著第4版

問診と身体所見の尤度比、感度、特異度を綺麗にまとめてくれている書籍です。
我々救急医は、どんなにささいな所見であってもそこから搾り取れるだけ情報を搾り取る必要があります。
「どうせ検査をする」としても少しでも早く疾患のヒントをつかむことはとても大切です。
年を取ってから改めて読もうとはなかなか思えない量だと思いますので、若手のうちに通読することも強く勧めます。

救急入局後 呼吸療法

⑱こういうことだったのか!! 酸素療法

呼吸療法の話をすると、人工呼吸器のことを思い浮かべてしまう方が多いのですが、まずはじめに一般的な「酸素療法」について学ぶ必要があります。なぜ酸素が必要なのか、何を目的に酸素療法を行うかしっかりこちらの書籍で勉強をしましょう。

⑲こういうことだったのか!! ハイフローセラピー

次にとっつきやすいのがハイフローセラピーだと思います。
NPPVや人工呼吸器と比較し、設定する項目が少ないため、専攻医の先生方にとっても学びやすいと思います。
ハイフローセラピーは今後も用いられる機会・活躍の場が増えていくと考えられているため、最初にしっかりと勉強しておきましょう。

⑳こういうことだったのか!! NPPV

人工呼吸器の前に学んでおきたいのがNPPVについてです。
NPPVは歴史も長く、エビデンスも充実している奥深いデバイスであり、一朝一夕で身に付くものではありません。
最初にその基本を学んでおくことで、NPPVだけでなく対比して人工呼吸器の勉強にも役立ちます。
小尾口先生の信者みたいで恐縮ですが、物事をわかりやすく簡潔に伝えるのが本当にお上手な先生だと思っております。
こちらの書籍も、ぜひ手に取っていただければ幸いです。

㉑人工呼吸に活かす!呼吸生理がわかる、好きになる

初期研修医でもわかるように人工呼吸管理に大切な呼吸生理学が解説されています。
田中竜馬先生は、ニーズの見つけ方とターゲットに合わせたレベル設定が非常に上手く、いつも感心いたします。
専攻医になったら、まず初めに読んでほしい一冊です。

㉒Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理

2冊連続で田中竜馬先生の書籍です。
㉑が基礎だとしたら、こちらの書籍は実際にベッドサイドで知識を生かすための橋渡しとなる書籍です。
特にトラブルシューティングの項が充実しており、初学者にもわかりやすく解説されています。

㉓人工呼吸管理ポケットガイド
㉔人工呼吸管理レジデントマニュアル

どんなに一生懸命勉強しても実臨床で実践をしていかないと、管理は身に付いていかないものです。
その際、ベッドサイドではすぐに参照できるような書籍も欲しいでしょう。

そこでオススメなのがこちらの2冊です。
初期研修医の先生にはポケットガイドの方を勧めています。内容がわかりやすいですし、カバーしている範囲が酸素療法、NPPV、HFNC、人工呼吸器と幅広いからです。

専攻医の先生の場合は、レジデントマニュアルの方でも良いでしょう。
○○レジデントマニュアルは当たりはずれがあるのですが、人工呼吸管理レジデントマニュアルは非常に素晴らしい書籍だと思っております。

㉕呼吸療法専門医テキスト

こちらは非売品です。
呼吸療法医学会の会員になると無料で閲覧できるようになります。
呼吸療法に関する教科書としては、和書の中ではこちらが最もスタンダードで良いと思っております。深堀りはされていませんが、勉強すべき内容が満遍なく記載されております。
ぜひとも呼吸療法医学会への入会をご検討ください。

救急入局後 ECMO

㉖やさしくわかるECMOの基本

全くECMOに触れたことがない人はまずここから入ると良いでしょう。
1時間あれば読めます。概念やイメージをつかむのにぴったりの書籍です。

㉗こういうことだったのか!! ECMO・PCPS

こちらも入門書になります。
「やさしくわかるECMOの基本」を読んだ後にこちらを読むと、知識がより整理されると思います。
内容レベルとしては入門書の範疇をでませんが、入局してすぐにこの二冊は読んでいただきたいと思います。

㉘呼吸ECMOマニュアル

少し古い本ですが名著です。
初めて手に取った時には「和書でこのレベルの書籍を出してくれる人がいるんだ」と感動したものです。
呼吸ECMOの管理に携わる人には必ず読んで欲しい書籍です。

㉙呼吸ECMOのすべてQ&A

おなじみの先生方による書籍です。
コロナ禍では大変重宝しておりました。
こんなにわかりやすい書籍をこんなに安い値段で読ませてもらって良いのかなと後ろめたい気持ちになったほどです。呼吸ECMOに携わる方ならマストバイです。

㉚呼吸ECMOおたすけハンドブック

現場でよく生じる小さな疑問に丁寧に回答してくださっている書籍です。
ECMOに慣れていない施設であれば、医局員全員で輪読会したら診療の質も上がるのではないかと思うほどの丁寧さです。
内容としては志馬先生の「ER・ICUの~」シリーズに似た構成となっております。

番外編 心臓ECMO/ECPRについて

ぶっちゃけた話、良書がありません。術中の管理に関してはわかりませんが、少なくとも救命センター/ICUで出会うような管理に関する和書でオススメできる書籍はなかなかありません。
標準化・一般化して文章にするのが難しい分野なのかもしれません。

洋書で読む、あるいは「ECMO・PCPSバイブル」という書籍を読むなど選択肢があります。
個人的には洋書を読んだ方が勉強になるのかな・・・と思っております。

救急入局後 中毒

㉛臨床中毒学

救急医になるのであれば、必読書の一つです。
中毒について学ぶのであれば、まず手に取ることをお勧めします。

㉜急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版

中毒のおすすめマニュアル本を強いて挙げるなら、こちらがオススメです。
細かい記載まではありませんが、よく遭遇する中毒に関して綺麗にまとまっています。

㉝INTENSIVIST Vol.9 No.3 2017 (特集:中毒)

おなじみINTENSIVISTの中毒号です。
非常に読みごたえがある号でしたので、お時間があれば読むことをお勧めします。

救急入局後 外傷一般

㉞外傷専門診療ガイドラインJETEC: 戦略と戦術,そしてチームマネジメント

救急医ならJATEC、JETECともにマスト通読です。
可能ならJETECも受講しましょう。
日本における標準診療を知らずに、外傷診療は出来ません。
お作法だと思って全部読みましょう。

㉟外傷外科手術治療戦略(SSTT)コース公式テキストブック

読みましょう。というよりも受講しましょう。
JETECはどちらかと言えば座学・ディスカッションメインですが、SSTTはチームワークやマネジメントを意識した構成になっており、こちらも標準を知るという意味でも大事な勉強会だと思います。

救急入局後 外傷外科

㊱DSTC外傷外科手術マニュアル
㊲手術動画とシェーマでわかる 外傷外科手術スタンダード

外傷外科手術のイラスト・解説はこの2冊が非常にオーソドックスでわかりやすいです。
外科歴のない先生もこちらの書籍に掲載されている内容は勉強しておいた方が良いと思っています。
どちらも読みごたえがありますし、「救急医なら」読んでいてワクワクすること間違いなしですから、ぜひお手に取ってみてください。

救急入局後 外傷整形外科

㊳救急/プライマリ・ケアの骨折診療スタンダード 原著第4版

二次救急レベル×初期研修医であれば、こちらの書籍で十分です。
最初はこちらの書籍から読み始めても良いかもしれません。

㊴骨折・脱臼

実臨床に直結するわけではないですが、教科書としてはこちらをオススメします。
救命センターに運ばれている患者さんは同時に何か所も骨折があることが多く、あれよあれよと整形外科の先生が治療を始めてしまい、よくわからないまま患者を診ているなんてこともあるかと思います。
理想は一つ一つ文献やガイドラインを調べることですが、こちらの教科書で出会った骨折について読んでおくだけでも大変勉強になります。

㊵若手医師のための脊椎外傷の診断・保存的治療・手術: 写真・WEB動画で理解が深まる

シリーズ系書籍の脊椎外傷号なのですが、絶妙に救急専攻医の先生にちょうど良いです。
整形外科の先生方にとっては不十分かと思いますが、救急科専攻医の先生が最低限身につけておくべき内容がうまくまとまっています。

㊶重度四肢外傷の標準的治療

こちらも名著です。
四肢の重症外傷を扱う救命センターの専攻医はマストバイです。多分、どの医局にも置いてあると思うので読んでください。

番外編 手救急: 手外科専門医が教える現場での初療

この書籍も非常に面白いです。
救急医が手外科に関係することを学ぶのにもってこいだと思います。

最後に

ここから先の「IVR」のオススメ書籍に関してはおまけ部分にしたいと思います。
おまけ部分はこの記事をRTで拡散してくださった方には無料で閲覧できるようにしております。
興味がある方はぜひ拡散にご協力をお願いいたします。

ここまでお読みくださいまして本当にありがとうございました。

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