Food|飲食店向け「文章力アップ自主トレメニュー」
2020年4月7日は、日本にとって特別な日になりました。
東京を含む7都府県に緊急事態宣言が発令されたことで、僕が愛する飲食業界でも営業をとりやめる飲食店が多く出ています。ひじょうに苦しい決断をされたと思います。
その一方で、この休業期間を利用して店舗の発信に力を入れたいと思っているオーナーや料理人、支配人の方々がいらっしゃるのではないかと思います。
「これを機会にお店のブログの更新をしよう」
「告知の文章だけでなく、もっと思いを伝えるようになりたい」
「ゼッタイ生き残るので、自分たちが忘れられないように発信したい」
「SNSでシェアされるような文章を書きたい」
「この機会にnoteを書き始めてみようかな」
そんなあなた(または、あなたのお店)に向けて、飲食店向け「文章力アップ自主トレメニュー」をまとめてみました。内容は。週1回全4回の記事のタイトルと内容の提案と、その記事で書いた方がいいこと、読者の興味を引くポイントなどをまとめています。
とくに今回は、4月に6周年を迎え、月間アクティブユーザー数4400万人を抱えるnoteを始める際のスタートアップトレーニングとしても活用してもらえると思います。
なお、この記事の中で「書いた方がいいですよ」としたことは、僕がもしあなたにインタビューをするなら、こんなことを聞くな、と考えたことです。僕からの質問と思って、その答えを書いてみてください。
1週間で1課題、全4回のプログラムを終えることができれば、ちょうど1カ月。緊急事態宣言の解除目標とされる5月6日を迎えることができます!
①「はじめまして、●●(店名または役職)の●●です」(タイトル案)
1回目は自己紹介です。
自分のことは書きやすいと思いますので自己紹介を第1回目の課題にしました。じっさいの取材記事でも、インタビュー相手の人生を聞くことは必ずしています。下記に書いたようなエピソードを知ってもらうと、読者との距離を縮めることになります。
また共感や反応を得るためには、発信者を明確にして信頼性の高さを出すことが重要です。そのためどんな人が書いているのかも含め自己紹介は、本当に大事だと思います。
もしこれからアカウントを開設する場合、個人の方は実名をお勧めします。お店でアカウントを取るにしても、必ず発信者を名乗って始めましょう。いわゆるトレサビリティですね。リスクを取らないと想いは伝わりません。
さらに書くうえで、以下のことを文章に入れるようにしましょう。
書き出しは、とても大事です。コースで言えば最初のひと皿だったり、ゲストを出迎える瞬間と同じです。読んでもらいたい文章を書くなら、「自分のことを知らない人に読ませようとしている」という前提にたって、自分を知ってもらうために、下記例文のように所属と業種などを伝えましょう。
例)●●市で「●●」というお店で働いている●●です。今日から週に1回を目標に、お店の情報をお伝えしていきたいと思います。第1回目は、僕(私)の自己紹介から始めます!
しかしながら、この最初の自己紹介は、長々と書く必要はありません。読者は、上のように名刺に書いてあるようなこと興味がなくて、この先に書こうとしているあなたの人物像に興味を持っています。最低限の情報をできるだけ簡潔に紹介をしたうで、本筋を書き出してください。
最初に子どものころの思い出を書くのは有効です。出身地と子どもの頃のエピソードは、「三つ子の魂百まで」とよく言います。「子どもの頃はクラスの書記でした」とか「仮面ライダーになることが夢でした」など、どんなことでもいいので、あなたがわかる幼少期のことを書いてください。
幼い頃の食体験も必要です。料理に携わっているあなたですから、必ず食の原体験の記憶があるはずです。家庭の味、外食の味、旅行した時の味など、出来るだけその時の記憶を詳細に(何歳で、どんな時、誰が、何のために、他には誰と?)書いてください。
料理業界に入ろうと思ったきっかけも。幼い頃の食体験同様、出来るだけ詳細に書いてください。
上の3つを受けて、今はどこで働いているのかを簡潔に書いてください。
そして最後に、「次回は今勤めているお店のことを書きます」と予告をすることを忘れずに!
②「●●(店名)に込めた思い」(タイトル案)
2回目「お店の名前の由来」を書いてみましょう。
名は体を表すと言います。あなたが務めているお店の名前の由来を書いてみることで、あなたのお店の原点に立ち返ることができます。
しかし、いきなり「お店の名前を書きます!」といっても、2回目から読む人にとっては「???」になってしまいますので、まずは、1回目で書いたことのコピペでも構いませんので、自己紹介を簡単にしましょう。
なお、2回目のテーマは、あなたがなぜお店をやっているのかを読者に伝えることです。
あなたは、あなたのお店の名前をものすごく悩んで決められたと思います。それはおそらくあなたの飲食業者の人生そのものを体現しているのではないでしょうか。
オーナーではない方は、これを機に、名付け親になぜこの店名なのかを聞いてみるといいと思います(今まで知らなかったことも知れて、さらに自店への愛情が深まること請け合いです)。
そのうえで、以下のことを盛り込んで書いてみるといいと思います。
お店がオープンした時期。これはかなり重要ですので、できれば必ず書いてください。お店の名前は、時代を反映する鏡だと思います。10年前と去年では、社会的な状況がまるっきり違います。当時の社会状況下で、どんな思いであなたのお店の名前を決めたのかのエピソードは、読者にとっての親近感(私は、そのとき何をしていたかなど)をもって読んでもらえるはずです。
そして、その店名はいつから考えていたことなのかも書きましょう。10年前なのか、いきなり思いついたのか。できるだけどんな状況で考えついたのかを書いてみましょう。
また店名をつけるうえで、最終候補だったり、どちらにしようか迷ったりしたボツになった店名についても書いてみてください。そのうえで、なぜ今の店名に選んだのかの理由があると、より「なぜこの店名にしたのか」という理由が詳細に読者に伝わります。
さらに、店名をつけたときの周囲の反応も思い出して書いてみるのも面白いと思います。だれがどんな反対の意見を言ったのか、その理由。反対に、あなたが予期せぬ解釈をしてくれて、店名に新しいストーリーが生まれたなどのエピソードがあると、読者に店名への親近感が生まれます。
最後は、必ず次号予告です。
「次回はちょっとテーマを変えて、私が好きなお店を紹介します」
みたいなことを書いてください。
③「私の好きなお店、●●(店名)」(タイトル案)
3回目は、自分のお店以外に好きなお店、憧れているお店のことを書いてみましょう。
あなたが興味のあることは、あなたが好きなことです。その好きなことは、あなたのお店にも必ず反映されていることでしょう。つまり、あなたの審美眼を読むことによって、あなたのお店のイメージが、読者のなかでかなり広がっていくはずです。このテーマを書くことで、あなたのお店の特徴を間接的に伝えることを目的にしています。
なお、3回目もしつこいですが、1、2回同様に自己紹介をしましょう。
なぜ、自己紹介にこだわるのか。それは、外に向けて発信する記事でもっとも気を付けなくてはいけないことは、「内輪感を出さないこと」であるからです。1、2回目を読んだ前提で書き始めると、3回目に初めて読んだ人は、自分のような人を受け入れてくれない場所なんだと感じてしまい、読むのをやめてしまいます。
僕も最初のころは、冒頭の3行で詰まらなかったり、疑問がわいたりなど、なんらかのストレスを感じたりすると人は文章を読みたくなくなると指導されてきました。
レストランでも、常連だけではなく、初訪のお客様も同様に大切にするように、必ず、あなたのことを知らない人が読んでいるという、客観的な視点を自分にもつことは、文章を書くうえで大切なことです。
以前、僕のnoteで文章講座を書いたことがあります。その時のテーマが「自分が通う店」です。ここでは、味のことを書かないという縛りを設けていますが、そこは無視してもらって、文書をまとめるコツなどとともに書いてみてください。
ちなみに、あなたがnoteを始めようとしているのであれば、自分語りをするより、まわりを紹介していく立場をとる方が、共感(スキ)は確実に得やすいです。なので、今回のように具体的なお店のおススメ情報は、スキの獲得もおそらくあがると思います。なので、1つの記事に2店くらい書いてみるのもいいと思います。
そして3回目も忘れずに、次回の予告をしましょうね。
④「●●(自店名)をやっていてよかったなぁ、と思った話」(タイトル案)
4週目は、「今までお店をやってきてよかったな、と一番うれしかったこと」を書いてみましょう。
このテーマは、3回目の美意識と同じなのですが、あなたがレストランで感動したことは、あなたがレストランという場に求める理想の姿です。その姿を明確にすることで、レストランに対して同じ価値観を持つ読者の心をさらに強くつかむことができます。
最終回の4回目にして、ここまで読み続けてくれた読者とがっちり価値観を共有するイメージで書いてみましょう。
そして、あえて4回目は自己紹介はなしで行きましょう。文章には、ときには裏切りが心地よく感じることがあります。これまで3回続けて同じ始まりを変えることで、読者対象を一気に狭め、これまで読んでくれた読者に向けて書いていることを伝えます。「4回目はあなたに向けて書いてますよ!」という、ツンデレ作戦です。
今回のように情景描写が必要になる記事を書く際のポイントは、きちんと5W1Hを意識するということです。5W1HとはWho(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)をチェックポイントにして、以下の例文のように情景の解像度をあげるようにします。
例)私がこのお店(where)をやってうれしかったのは、今から2年くらい前(when)に、初めてこられたお客さま(who)が、コース料理を頼んでいただいた(what)ときのことです。食後に(when)お客さまが(who)「シェフと話がしたい」といってくださり(how)、私はすぐにテーブルにお伺いしました。そうしたらお客さま(who)が「すばらしかった」といっていただけたのです。その日は、お客さまの奥様が(だれが)3か月の入院から退院されたそうで(why)、病院では食べられなかったあたたかく愛情ある食事ができたのが(why)、うれしかったとおっしゃられた(how)のです。
そのうえで、あなたがなぜそのお客さまの行為に感激したのかは、もっとも重要なこの記事のポイントですので、ていねいに、ここでも5W1Hを意識して書いてください。
文章に説得力をもたせるには、反対の意見を書くことです(店名のエピソードのところで、没の店名の理由を書いたのと同じです)。たとえば、お店の業務で辛いこと、むくわれないこと、悩んでいたことなどの負の部分を書いておくと、その対比として感動したエピソードが際立ちます。スイカに塩をかける、味のコントラストと同じ原理です。
そして現在のあなたにストーリーに触れるために、その感動体験から学んだこと、その体験によって具体的にお店や仕事の向き合い方で変えたことを具体的に書いてください。
ここで読者は、あなたの今は、その体験があって現在があることに気づきます。そして同時に、「こんなすてきな体験ができるお店なんだ」という、体験を想像することができます。料理写真を見て「おいしそう、食べに行きたい」という、良質な疑似体験が実体験への欲求が生むように、「あなたのお店に行きたい」と読者が思ってもらえれば、トレーニングの成果としては大成功です。
あなたのお店にいない時間でも、あなたのお店のことを考えてもらうこと
簡単ではありますが、全4回の各テーマと内容をまとめてみました。
全4回を終えてみていかがでしたか? テーマを書くことで、漠然としていたことが頭のなかで明確になってきたことを実感できると思います。
書くことは、頭を整理することです。そして自分自身と向き合うことでもあるので、あらためて自己発見もあったのではないでしょうか。
「何を書いていいかわからない」ということが始めるハードルになるのだったら、ここに書いたことに応えるだけでも、十分あなたが働くお店に親しみを持ってくれるはずです。タイトル案は、歯抜けを埋めてそのまま使ってもらっても構いません。
文章は、とにかく書き始めることが大事でます。
そして、今回の新型コロナウィルス感染症の拡大との戦いは、特効薬となるワクチンが開発されるまで続くと言われています。それは1年になるのか、1年半になるのかは現時点ではだれも答えることはできないですが、事態は長期戦に突入していく可能性がとても高い。落合陽一氏がいうように、アフターコロナよりもウィズコロナの世界と考えていた方がよいのかもしれません。
コミュニケーションのあり方が根本的に変わっていくであろう、アフターコロナ、ウィズコロナの時代に、お客様と物理的だけではない、心の距離が近いレストランであることがとても重要になってくると思います。
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、飲食店から最初に離れていったのは接待客だったのではないでしょうか。彼らにとって、あなたのお店は、おそらくOne of themだったのです。
一方、最後まであなたのお店に来てくださったのは、「あなたでなければダメなんだ」という、根強い常連のお客さまだったのではないでしょうか。そして休業になっても、テイクアウトや前払いチケットの購入、SNSでの情報発信など親身になってくれたのも、そうした常連のお客さまであったと思います。
あなたの記事を読んでもらうということは、お店の外でもあなたのお店のことを考えてもらう時間が生まれるということです。それは、通勤の時間かもしれませんし、寝る前の時間かもしれません。
しかし、お客さまの限りある時間のなかで、あなたのお店のことを考えてくれる時間が増えるということは、あなたのお店が、お客さまの日常にまで入り込んだということを意味します。そうなれば、あなたが発信した記事はものすごい価値があります。
これからの飲食店で重要なのは、あなたのお店を思い出させる接点を多く作ることです。
ぜひ、この4回の自主トレメニューをやり遂げることができたら、5回目、6回目、と更新を続けてみてください! きっと何かが変わるはずです。
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