見出し画像

世界のレストランガイド&ランキングの傾向と対策

少し前のことになりますが、11月26日に「ミシュランガイド 東京版」が発表され、有名なすし店2店が対象外になったと話題になりました。同月29日にはフランスで「ラ・リスト」というレストランランキングが発表され、世界1位に日本の「龍吟」(日本料理)と「スガラボ」(フランス料理)が同点でランクイン(ほかにも同点が2店あり)したのもニュースで知っている方もいるかもしれません。

お店の人気評価なんてどこも同じでしょ」などと侮るなかれ。それぞれのランキングや格付け評価の特徴を理解すれば、あなたにとってのベストレストランに出会えるチャンスが広がります。

今回は、海外にいった時に、1度くらいは素敵なレストランで食事をしたいな、という食に興味がある方向けに、世界規模のレストランガイドやランキングについて、その特徴や使い方を解説してみたいと思います。

皿の上の絶対評価「ミシュランガイド」

ミシュランガイド」(le Guide Michelin)は、おそらく日本で一番有名な(もちろん世界でも)レストランガイドです。フランスのタイヤメーカーの「ミシュラン」が、タイヤ消費拡大のために国内の車旅行を推奨。旅の目的を食に求め1900年、パリ万博の年にレストランガイドブックを刊行したのが始まりです。

あまりにも有名な3段階の星の評価基準は1931年に始りました。「そのために旅行する価値のある卓越した料理」(三つ星)、「遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理」(二つ星)、「そのカテゴリーで特においしい料理」(一つ星)になっているのは、車旅行が憧れだったころの名残です。

ミシュランガイドの特徴は、料理だけの評価であることです。店の雰囲気やサービスの質などは、評価の対象になっていません。

さらに、世界的Foodie(食を愛し世界のどこへでも食べに行く人たち)である浜田岳文さんが、「ミシュランガイド カリフォルニア版」(2019年新設)に際して、インターナショナル・ディレクター グウェンダル・プレネックさんにインタビューしたところ、コストパフォーマンス(コスパ)は重視されない、星の質はすべてのエリアで共通(フランスの三つ星も日本の三つ星も、味のレベルは同じ)であると言い切ったといいます。

コスパが重視されないということは、「こんなにおいしい料理がこんな値段で食べられるの?」ということでは評価がゆるがない、300円の料理も1万円の料理も、同じ基準(つまり味)で評価されるということです。

なお、ミシュランガイドの星の評価は、エリアごとに専門の調査員がいて、その人たちが、毎年実際に食べて評価をしています(とミシュランガイドは言っています笑)。

レストラン全体を評価する「世界のベストレストラン50」

放映中のテレビドラマ「グランメゾン東京」で存在を知った人も多いのではないでしょうか。「世界のベストレストラン50」は、イギリス発祥のレストランランキングです。

2004年に飲食専門誌『レストラン・マガジン』がスタートさせました。世界のレストランに投票し、上位50店のランキングを発表します(インターネット上では、100位までを発表)。

世界のベストレストラン50」(The World's 50 Best Restaurants)のランキングの特徴は、レストランシーンの「今」を伝えるために採用されている審査制度にあると思います。審査員は、①料理人②飲食ビジネス従事者③ジャーナリストが審査員定員の1/3づつ選ばれ、彼らが18カ月以内に実際に行って食べたことのある店のみ投票することができます。さらに、審査員は毎年1/3づつ入れ替えられ、2019年からは1度ランキングで1位を獲得したレストランには投票できないというルールも追加されました。

料理だけだったミシュランガイドとは異なり、審査の対象になるのは、料理だけでなくサービスや店内の雰囲気、シェフの個性、立地状況など、レストランのすべてです。いわばUX(顧客体験)が評価の対象といえます。

2013年からは、世界のベストレストラン50のエリア版として、「アジアのベストレストラン50」と「ラテンアメリカのベストレストラン50」が新設されています。

ランキングの発表方法もショーアップされエンタメ性が高いのも特徴です(実際の発表式は「グランメゾン東京」のシーンよりも10倍華やかです)。毎年、5月か6月に発表されます。当初は、ロンドンで発表されてきましたが、2016年から世界の美食都市に場所を移し、ニューヨーク(アメリカ、2016年)、メルボルン(オーストラリア、2017年)、ビルバオ(スペイン、2018年)、そして、2019年はアジア初、シンガポールがホスト国を務めました。

ちなみに、「アジアのベストレストラン50 」の2020年版は、3月24日、佐賀県で行われてることが決まっています。これまで、シンガポール、バンコク、マカオとランキング常連店がひしめく美食都市で行われてきたが、地方都市で開かれるのは佐賀が初めて。ショーアップし続けてきた発表式に、どんな新しい価値を創造してくれるのか、待望の日本開催をおおいに楽しみにしています。

データラーニング型ランキング「ラ・リスト」

ラ・リスト」(La Liste)は、フランス発祥のレストランランキングで、600を超すガイドブックや信頼性の高い出版物に掲載された情報をデータベースに集積し、独自のアルゴリズムによって集計、上位1000位を発表するものです。評価は100点満点で、小数点以下2位まで算出されます。つまり同率順位の可能性もあるのが特徴です。

フランス観光開発機構(政府観光局のようなもの、つまりフランス政府)によって2015年に始まったランキングで、美食国フランスの政治的戦略を強く感じます(笑)。リストは、かなり保守的。ちなみに600を超すガイドブックには日本のメディアも対象で、食べログなどの検索サイトも含まれているといいます。

根本的にレストランを利用した上で評価するミシュランガイドや世界のベストレストラン50 と異なり、データ処理で順位をつけるという点がこのリストのユニークな点です。

はっきり言って、このランキングの順位には、現在のレストランシーンと見比べると「?」が多いのですが、アルゴリズムの見直しは今後も行われるはずなので、データが毎年蓄積されることで、新しい価値を生み出す可能性もあると期待しています。

Foodieの口コミによるランキング「ODA」

ODA」(Opinionated About Dining)の存在を知っている人は、世界のレストランシーンによほど興味がある人でしょう(笑)。

世界4500人以上の食に関心のあるメンバーによるレストランレビュー(要は口コミ)をもとに店を評価。世界のベストレストラン50 と同様に実際に食べた店が条件になっています。ランキングは2013年にスタートしました。

ODAの特徴は、クラシックな店と前衛的な店を別のランキングで発表する点です。ほかにも、日本料理のレストラン、ヨーロッパのレストラン、アメリカのレストランなどのランキングがあり、ユーザー目線で選びやすくなっています。

日本でこのリストへの投票者が少ないこともあり、知名度はまだまだ。ちなみに、このランキングには、食通メンバーへの投票があり、ミシュランガイドの項目で紹介した浜田岳文さんが2019年のベストレビュアーに選ばれています。つまり、浜田さんはFoodie が選ぶ世界のFoodieなわけです。

なんだかんだやっぱりミシュランが使いやすい

ほかにもトリップアドバイザーなどの評価も参考にすることもできますが、店の守備範囲が広すぎるので、美食を求める人にとってはなかなか利用しづらいと個人的には思います。

もし海外旅行の予定があって、1店くらいはその土地の高級店で食事したいな、という方には、味の点で外す可能性が低いミシュランガイドがおすすめだと思います。

ただ、ミシュランガイドがカバーしていないエリアもありますし、海外での食経験が進むと、もうすこしその土地のオリジナリティのあるレストランに行きたいな、とい思うようになると思います。そうなってきたら世界のベストレストラン50のリストをチェックしてみるのがいいと思います。

え、僕ですか?

僕は、ミシュランガイドの1つ星か2つ星をチェックして、さらに世界のベストレストラン50やエリア版のリストをチェックして、重なってくるお店から「行きたい店リスト」を作って、いずれ訪れるきっかけを心待ちにしています(つまり、めったに行けないので、妄想しているだけってことです笑)。

料理人付き編集者の活動などにご賛同いただけたら、サポートいただけるとうれしいです!