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雑記note10 選択することのおもさ

こんんばんは。えりたです。

私は以前、国語講師をしていました。
中学受験、高校受験、大学受験をする
生徒たちに「受験国語」を教える仕事です。

講師などしていると
生徒に教えられることばかりなのですが。
今日、不意に思い出したことがあります。

何年か前、高校一年生の女の子の
相談に乗っていたときの話です。

・ ・ ・

彼女の通っていた高校では
高校2年進級時に
文系/理系の選択がありました。
そこでした選択は卒業まで変わらず、
進学の方向性も
この選択で
ある程度絞られてしまうのです。

つまり。
彼女たちは高校1年生、
わずか16歳で
自分の将来の方向性を決めろと
シビアな選択を突き付けられるのです。

そのとき、彼女は
とても悩んでいました。

彼女のお父さんはお医者さんで
彼女も医療の道へ進むことを
言外に期待されていました。
やさしく聡い彼女でしたから、
そのことは
幼い頃から理解していましたし
その期待に応えようと
必死にがんばっていました。

でも、一方で
彼女には夢がありました。

それは、
海外のメディアで活躍すること。

英語が得意だった彼女は
メディアの世界で
その英語の力を活かしたいと
願っていたのです。

しかし、そうなると、
ご家庭での彼女への期待は「理系」、
彼女自身の希望は「文系」と
真っ二つに道が分かれてしまうのです。

彼女はずっと
そのことを悩んでいました。
私は彼女から
相談をよく受けていたのですが
あるとき、
悩み過ぎて追い詰められた彼女が
言い放った言葉を
未だに忘れられないでいるのです。
それは。

だって、先生、
文系か理系かどっちか選んだら
人生の半分の可能性を
捨てちゃうことになるんだよ!

彼女は泣きながらそう言いました。
選ぶことは、選ばないこと。
その本質をこれほど的確に
自分の身に突きつけた言葉を
私は他に知りません。

もちろん、
「そんなことないよ」と
彼女に教え諭すことは簡単です。
だって、私は
彼女よりもずっと長く生きてますもの。
人の可能性は無限だ、などと
おとぎ話を打つつもりはありませんが
それでも、自分が考えているよりも
世界は幾分かやさしいし
可能性だって
わりとやわらかめに存在していると
信じられるほどには
いろんな経験をしています。
だから、「そんなことないよ」と
ある程度の説得力を持って言うことは可能です。

でも、彼女はその時まだ16歳でした。

しかも。
ご家庭の期待に添えば
自分の希望を捨てることになり、
反対に、自分の希望を優先させれば
ご家庭の期待を捨てることになる。

我を押し通すにはまだ幼く
我を押し込めるにはもう大人だった。

その狭間の叫びが
人生の可能性の半分を捨てることになる
という言葉だったのです。
そんな切実な叫びに
大人な顔をして
「そんなことないよ」と言うことは
私にはできませんでした。

・ ・ ・

結局、彼女は「文系」を選びました。
大学もメディア系の学部に進学し
途中でアメリカの大学に編入したと
聞きました。
えぇ、結論から言えば、彼女は
自分の希望を全力で押し通したのです。

もちろん、紆余曲折ありました。
すったもんだも、あれこれありました。
全力で巻き込まれ、疲労困憊もしました(笑)

でも、私は。
一貫して
「自分の人生は自分のものだから。
自分のやりたいことをやればいい」

他人の気楽さで言い切っていました。
「本当にやりたいと思うなら
私は絶対的に味方になる。
お父さんたちを説得するのも力になる」と
彼女の背中を全力で押したのです。

・ ・ ・

選択すること。
私たちは日々、いろいろな選択をしています。
朝ご飯、何にしよう?から
この先、どう生きて行こう?まで。
大小さまざま、選ぶことが人生であるとも
言えるような気がするほどです。

でも、一方でおとなになるにしたがって
無意識に選択することも多くなります。
それは、慣れともいえるし
一方では、諦めとか妥協とか
そういった側面もあるでしょう。

もちろん、
それを悪いと言うつもりはありません。
だって、それって
生きることをラクにする知恵だと思いますもの。
何より、私自身、そうして生きてるわけですし。
それを否定したら
即座にブーメランなわけです(笑)

でもね、ふと思うんです。

軽い気持ちで
ラクな選択の仕方ばかりしていると
その選択をより良いものにする努力も
軽んじるようになるんじゃないか
って。

もちろん、一つひとつを吟味して、では
あまりにもしんどいですが。
でも、たまには立ち止まって
真剣に考え尽くすこと。
そうしてした選択を
より良いものにするために
努力を怠らないこと。
意識的にそれをすることも
ときには必要なんじゃないかって。

16歳だった彼女の言葉を思い出すたび
そのアツさや必死さを
どこかに置き忘れている自分に気づき
ふと襟を正す気持ちになるのでした。

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