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■「私は、生まれる前から女性なの。」―西村宏堂『正々堂々』

ちょっとだけかなしい思い出から。

私は三姉妹の長女です。
うちの末っ子さんは
幼い頃に大きな病気をしたこともあり
それはそれはかわいがられて育ちました。
毎日のように
「かわいいねぇ」と言われている妹。
歳が離れた長女であり、
しっかり者であることを求められた私は
そんな妹が羨ましくて仕方なかったのです。

でも、ある日。
幼かった私は意を決して母に尋ねました。
「えりちゃんもかわいい?」って。

そしたら。

ちょっとした沈黙のあと
「えりは…まぁ愛嬌はあるよね」
苦笑いしながら、母はそう答えたのです。

いくら察しの悪い私でも秒で理解します、
「あ、私はかわいくないんだ」って。

その言葉はその後、
呪いのように私を縛り上げました。

私はかわいくない。
私はかわいくない。
私はかわいくない。

だから、それから
スカートを履くのも止めたし、
髪型も一つ覚えのポニテのみ、
大きくなってからも、メイクしない。

心の奥底では
かわいくなりたくて仕方なかったのに
何をしたって、どうせ私はかわいくないと
呪文のように唱えていた私は
暗黒の時代を長らく過ごしたのです。

そして、ようやく
私がこの呪縛から逃れたのは
ここ数年の話。
どんだけ強力な呪いを
自分にかけてたんだ
と笑うしかなく(笑)

そんな呪いを苦笑いと共に
思い出したのがコチラの本です。

・ ・ ・

一度見ただけで
強く印象に残る表紙ですよね。

表紙だけで、
お坊さんであり、
メイクアップアーティストであることを
有無を言わせず理解させるこの本を
LGBTQ関連、自己啓発関連の棚で
お見掛けになることも多いと思います。

「私は、私として、生きるんだ」

そう言い切る強さに憧れたり
毎日がちょっとだけ息苦しかったり。
あるいは、
自信が持てなかったりする。
私もそんな一人です。

今日のタイトルは、
この本が引用する言葉で
私がいちばん衝撃を受けたもの。

他の自己啓発本とは一線を画する本書の
すてきなところをお伝えします。

■『正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ』

□ハイヒールをはいたお坊さん 西村宏堂
□サンマーク出版
□2020年7月初版
□1300年+tax

LGBTQで、僧侶で
メイクアップアーティストの西村宏堂さんが
ご自身の経験を交えながら
自分を大事にする生き方を説く本です。

1章 私の人生は私が決める
2章 自分が変わったから味方が現れた
3章 自分を苦しめる「常識」を書き換えてみた
4章 自分が好きになれる自分にアップデート

章立てを見ると
わりと典型的な進行の
自己啓発系の本だと分かります。
自己啓発系の本は一時期
狂ったように読んでいたので
(多分、100冊レベルで読んでる
本書で用いられる文法や言葉づかいは
見慣れたものでした。

駄菓子菓子。

2点ほど、
めちゃくちゃ感動したところがあったのです。

■根拠のない自信とは

自己啓発系の本ではよく
「自信を持つこと」を推奨されます。
そして、その自信には
根拠なんてなくていい。
とりあえず、
自信ありげな自分でいろ、みたいに
よく言われるです。

でも、本書では
「自信」というものを
明確に定義するんです。曰く、

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