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私の出産体験記【番外編】~癖つよ先生からのメッセージ~


3回シリーズで書いてきました、「私の出産体験記」。

たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございました♩



その中でちょこちょこ登場していただきました、「癖つよ先生」。

呑気に里帰り出産で~、と思っている私に、「そんな無責任なことはできません。」とバシッと言われた先生です。

その後はあまり詳しく書かなかったので(長くなる)、いまいち伝わりにくかったと思います。

今日はその癖つよ先生と、いただいたメッセージを紐解き、今だからこそ思うことを書いてみたいと思います。



癖つよ先生のどこらへんが癖が強いのか。

まずはズバリ、表情と話し方だ。

何といったら良いだろう、多分、あの俳優さんに似ている。

『スカッとジャパン』に出ていた、あの方…。


そう!この方。


津田寛治さん!

…ではなく、「津田寛治さん演じるスカッとジャパンの劇中の男性」、に感じが似ている。

あそこまで皮肉めいてはいないが、チクチク痛いところを突いてこられる感じ。

例えば、当時私は医療系で働いていたのだが、職歴欄を見て、

「医療従事者なら厳しくいきますよ。」

ピリッ

と、うっすら笑顔で言われた。すーっと背筋が凍り付いたのを覚えている(笑)。


そう。スタッフや妊婦に対して、厳しい方でもあった。それは、テコでも動かなそうな方針へのこだわりに基づく。これが癖つよのイメージをさらに助長させた。


優しい優しい助産師や看護師さんとの面談の後にある癖つよ先生の診察。それを待つ時間がとても緊張した。

1人ひとりの診察が長くて、時々看護師さんが怒られるような声も聞こえたりして…。胎教に悪いんじゃないのと思わないでもなかった。

診察室に入ると、日によって違うのだが、ピリピリと空気が張り詰めていた(それに耐えられず、病院を換えちゃう方もいるとかいないとか…)。


でも、数回話してみて、また先生の著書を読んではっきりと分かった。

この先生の厳しさや緊張感は、全て「産まれてくる赤ちゃん」にベクトルが向いている(私は割と「ベクトル意識系人間」なので、すぐに察知してしまう)。

出産という、命に関わる現場を任された責任感と、赤ちゃんへの愛情を十分に感じるのだ。

だから、体重管理などは厳しく指導されたし、のほほんと構えていたなら喝を入れられる。

でも、時々見せる笑顔(エコーの赤ちゃんを見ている時なんて特に)と、気持ちが通じた時の「そうです、そうです。」みたいな優しいレスポンスは何とも言えず、うれしかった(ギャップ萌え?!)。

なので、私は、「厳しい先生」ではなくて、敢えて「癖つよ先生」と呼ぶのだ。厳しいだけじゃなくて、筋が通ったこだわりを持つ最強の癖。感謝の気持ちでそう表現したい。


出産現場では、最後にひょっこり現れて娘や息子を取り上げ、無事を確認すると、後は助産師さんに任せて去って行った。

その時もまた、満面の笑みだった。産まれてきた赤ちゃんを本当に愛おしそうに見ていた。先生自身も5人のお子さんのパパだという(著書より)。



そんな癖つよ先生からの忘れられないメッセージがある。

それは、娘と私が退院する日。入院中最後の先生の診察。これから社会に放たれるので、言わば、卒業式だ(大袈裟)。

まずはメディカルチェック。娘も順調に成長し、私の子宮もしっかり収縮しているとのこと。これも授乳のなせる技だと。

そして、この日、癖つよ先生は拍子抜けするくらい優しかった。

妊娠中から出産後までの私の行動を、頑張って産まれた娘を、心から褒めて、励ましてくれた。厳しい方からのそんなご褒美は、本当に沁みる。


そして、最後にメッセージがあると。

わざわざ紙に書いて提示してくれた(だからはっきり覚えている)。


デデーン。

「育児の敵は身内にあり。」

by癖つよドクター


感動的で優しい雰囲気の中、放たれた言葉。
またも斜め上からキター!

一瞬、脳がフリーズした。

ーーえ。敵?私、戦うの?!…身内って1番の味方だよね??


さらに、先生は続けた。

「実は、近しい人ほど、あまり深く考えずに昔ながらの習わしや自論を言ってきたりするもんです。遠慮がないから。良かれと思って言ってくるので、タチが悪い。

だけど、惑わされないで。あなた自身がこれまで学んだこと、体験したことに自信を持っていいんです。

不安になったり、迷った時は、いつでも電話したり、来てくれていいですから。そのために、私たちがいますから。」

そういうことか!


この時、夫も一緒に聞いていたのだが、2人してうるうるしていたと思う。

多分、昔ながらの習わしというのは、「抱き癖がつくから泣いてもすぐに抱かない」とか「沐浴後は白湯を飲ませる」とかそういうことだろう。もうちょっと大きくなってからは教育やしつけのことも絡むのだろうか。

「敵」という単語は強烈だったけれど、自分を信じて、そのくらいの覚悟で臨んでいい、ということだったようだ。


この時の私は、深くは分からないが、とにかく私たちの味方でいてくれるということが心強かった。そして、やっぱりこの病院で、この先生に出産をお任せして良かった、と思った。




それから、ひたすらお世話する毎日を経て、子ども達はおかげ様ですくすく成長し、現在、娘・12歳(小6)、息子・7歳(小2)。

その間、癖つよ先生の言葉通り、身内の何気ない一言に傷付いたり、イライラすることもあった。さらに身内だけじゃなくても。

でも、私はあの先生の言葉で、「賢いお母さんになろう」と思っていたので、時にブレそうになることもあったが、最終的には大丈夫だった。上手く受け流すことが出来たと思う。

もちろん、日頃支えてもらって感謝しているし、人生の先輩からのアドバイスは、真摯に受け止めたい。ただ、それが根も葉もない噂だったり、根拠のない習わしだったなら、「お心遣いありがとうございます」の気持ちは込めつつ、笑顔でスルーだ。これに尽きる。




退院後、乳腺炎になって母乳外来に行った時、娘の発育が不安で訪ねた時、私のワクチン接種に3歳くらいになった息子を連れて行った時、いつも先生は笑顔だった。

看護師さん達も私たち親子を温かく迎えてくれた。たくさんの方々に支えられて今日まできたけれど、癖つよ先生と産院の皆さんのことは、ポケットにいつも入れている御守りみたいに思っている。

最近は引っ越してしまったし、検診も別の病院に行くようになっていたのでお会いすることはないが、お元気でご活躍のことだろうと思う。


癖つよ先生、スタッフの皆さん、本当にお世話になりました。2人とも元気に育っています。
ありがとうございました!


最後の最後にもう1つ。

娘の育休明けに、職場で違う部署の方に聞かれた。

「どこで産んだの?」

ーーえっと、○○産婦人科です。

「わー!同じ。私もあそこで3人産んだよ。良い病院だよねー。先生、癖強いけど。


そして、2人で顔を見合わせ、ニヤリと笑った。

同郷の先輩を見つけた瞬間だった。



おしまい。



なんやかんやで長くなりました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

出産に限らず、人生の色んな場面やイベントで出会う方々に感謝ですね。

今回、改めてそう思いました♩





***2023/10/16追記***

ありがとうございます~

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