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最終日

娘のピアノレッスン最終日がきた。

どんなふうに最後のレッスンについていこうか、先生になんと言おうか考えた。
レッスン終了後に、お世話になった先生にお礼のお菓子を渡すことは前から決めていた。

自分が決めたとおりにすればいいと分かっているのに、最終日はドキドキした。緊張屋の私は他の人にはささいなことでも、いちいちドキドキしてしまう。
気を張らなくても大丈夫なんだよ、私。


そしていよいよ、渡す時がきた。
予想してた緊張よりも、ついにやっぱりこれで最後なんだ、今日でピアノ辞めてしまうんだという寂しい気持ちが押し寄せてきて、なんか込み上げてきそうな気がして、お世話になりましたのお礼を伝えつつお菓子は渡せたものの、若干淡白な、素っ気ない態度に見えてしまったのではないか。
と、不安で落ち着かないのがいまの私だ。

気を抜くと、泣きそうになった。
娘と私が決めたことなのに。これからは苦難の練習に付き合わなくてよくなり、私の肩の荷がおりて楽になるというのに。

「たまにはピアノ弾いてね!」
先生が娘に声をかけた。

「うん。いままでありがとうございました」
娘がきちんとお礼を言えた。ホッとした。

ピアノ教室をあとにして、私も娘に言った。
「これからもたまにはピアノ弾いてね」
そしたら娘は
「作曲したいな。五線譜ほしいな。」
と言った。
ほんとに使うかわからないけれど、五線譜ノートを買ってあげようとおもった。
すこしでもいいから娘の中に、音楽よ、残っていてほしい。




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