結婚式の海にまつわる話

結婚式は海のようだと思う。
世界中どこに行っても「結婚式」(という名前ではなくても)がないところはほとんどなくて。でも見え方も楽しみ方も深さも違って。

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△今年新社会人としてウェディング業界/ブライダル業界へ一歩を踏み出してくれたひとたちに宛てた企画でわたしが書いたメッセージ。
こう感じたのはわたしが以前勤めていた、砂浜まで徒歩20秒の式場で、チャペルの清掃をしながら、夕立の雨音が飲み込まれていく水平線を眺めていた時でした。もともと海が特別好きなわけではなくて、泳ぐのは苦手で、でも不思議と惹きつけられてしまう。

東京湾、沖縄の砂浜、ハワイのビーチ、横浜の港、潜水艦の窓から除くような深海、船から見渡す限りの水平線、オーストラリアのグレートバリアリーフ(ニモにはまっている我が家の小さなひとが最近流暢に発音するようになった)。海ときいて思い浮かべる景色は人さまざま。

結婚式もそうだと思う、どんなカタチが一番良いということではなくて。フォトウェディング、自宅でのパーティー、結婚式場で、ホテルで、リゾートで、キャンプ場で、神社で、教会で、オンラインで。
それは浅瀬で水遊びをするように楽しむことや、飛行機で上空を旋回しながら あるいは少し離れた建物から眺めることや、船で沖にでること、ダイビングやシュノーケリングで潜ること、そうやってたくさんのかかわり方がある中から、自分たちにとって しっくりくるカタチや場所を選ぶということ。

誰かが同じ場所に行って同じことをしても、同じ波は二度と寄せないように、同じ結婚式は一つとしてない。

ウェディングプランナーはガイドのようだと思う。
この海に言ったらこんな魚や景色に出逢える(かもしれない)
この人数で沖に出るのなら、このくらいの大きさの船が必要
深く潜りたいのなら どんな装備が必要か
ここまで来たらこんな楽しみ方もありますよ
言葉にしなくてもさりげなく誘導して絶景を見せることもある

いろんなガイドがいて。
ガイドマップを書くひと
一緒に船に乗るひと、泳ぐひと
世界中の海を航海し続けているひと
その場所の海を知り尽くしているひと
深海に潜り まだ誰もみたことのない景色を探しているひと

特に、いつでもどこでも水たまりに飛び込む小さなひとを見ながらわたしは強く感じるのだけど、海に行くのってちょっと簡単じゃないよ。
砂浜は気を付けなければ打ち上げられたクラゲを踏んでしまうし、眺めるだけのつもりでも潮風でべとべとになるし、潜ったり船に乗ったりするならそれなりの準備が必要だし。もちろんガイド無しでも楽しいけれど、初めてダイビングや潜水艦にチャレンジするなら、きっとガイドを頼むはず。

だって「ここ、クラゲいるよ」と教えてくれたり、一緒にべとべとになったり、準備したりしてくれるひとがいるなら、もっと楽しめそうじゃない?
「この海の楽しみ方はね」とか「ふたりがシュノーケリングでこんな景色を見たいならこのポイントがおすすめだよ!」とか「あ、初心者ならこのダイバーさんに教えてもらうのが良いよ」とか。いや、自分たちで調べるのも楽しいか。

それは「ガイド(プランナー)」という名前じゃなくて「ダイバー」とか「船長さん」みたいに、カメラマンさんや司会者さんかもしれないけれど、ふたりに何か美しい世界や感動する景色を見せてあげたいと思っているひとたち。わくわくすることや一緒に潜ることが好きなひとたち。

山やビルに囲まれて育って、生まれてから今まで海は図鑑やテレビやパソコンでしか見たことないひと。海を見たことがなくても生きていけるけれど、もし何かのきっかけがあれば、海水はしょっぱいことを感じてみて欲しい。砂浜で遊んだ記憶があまりいい思い出ではないひとに、海の中を見てもらいたい。沖に出るのは負担が大きいというひとに、浅瀬にも魅力が詰まっていることを伝えたい。

でもガイドは神様ではないから、海には雨も降るし嵐も来る。
カラフルな熱帯魚もいれば、サメもいる。さすがに結婚式にはサメはいないけど。結婚式は日常の、ふだんの天気予報やふたりの生活の延長にあるから、プランナーはきれいなものだけを見せるのではなくて、「雨が降っても嵐がきても一緒に進むよ」と思っていて、そして結婚式のあとには「これからはふたりで力を合わせて波を超えていける力をつけてね」と願っている。「いつも海はここにあるよ、戻ってこられるよ」とも。


結婚式という海で、わたしは何を見つけられるだろう。何を見せてあげられるだろう。まだあの夕立の音を覚えている。雨の日の海も美しいことも。

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