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小さなことからコツコツと~『限りある時間の使い方』を読んだ

ある日、目覚める直前の夢に一冊の本が出てきた。
白い表紙で、時間について書かれていて著者が欧米人の本だった。
それを読んだらいいのだな、と感じて目覚めた。
起きてすぐに、さくりと検索した。
ヒットした本の概要を読むとこの本っぽかった。

軽く読んでみたら、よくあるタイムマネジメント本ではなく哲学書に近い。そして、その時の自分にピッタリしっくりくる内容だった。

・やりたいことからやろう。なぜなら時間は有限だから。
・余暇は仕事の休み時間や回復時間ではない。余暇そのものが人生の目的。
・「今」はいつか来る未来のためのリハーサル中なのではない。いつだって「今」は本番。
・子どもは大人になるための準備期間ではない。子どもであることそのものが仕事。
・なにかをきちんとするのには、必要なだけの時間がかかる。
・毎日コツコツが一番の近道。

本の内容を要約解説する記事ではない。
心に響いたことや、自分なりの解釈と咀嚼をつらつらと書いていきたい。

自分には限界がある、時間は限られている、人生は短い

当たり前なのだが忘れがちなことだ。
本によると人生は4000週間しかないらしい。
ちなみに40歳の人には残り2000週間しかない。
こんなことを念頭に置きながら日々生きているのは難しい。それくらい、現代人の生活はやることがいっぱいで大忙しだ。
それに、あまりにも「時間は有限……」なんていつも考えてしまうと、焦ったり不安になったりせせこましくなってしまう。
それでも、事実はそうなのだ。

だから「やりたいこと」を先にやれ

と、この本は書く。
ただこの「やりたいこと」というのはくせ者で、「じゃあ、やりたいことだけやってやりたくないことはなにもしなくていいんですかぁ~?」なんて質問が絶対にくる。
そうじゃない。
オムツが汚れて泣きわめく赤ちゃんを放置して、美味しいケーキを食べろと言ってるわけじゃない。
あなたの本当に本当に本当に「やりたいこと」をしろ、という意味だ。
だから、やりたいことをやる前には、かならず自己と真正面から向き合わなければならない。
オムツを替えたときの赤ちゃんの笑顔、ちゃんとやるべきことをした達成感、育児という大きな仕事。一時のめんどくささと引き換えに手に入るものは何か。ケーキを食べた一瞬の快楽と比べてどうなのか。
そこを真剣に考えろ、自分の望みを、本当にしたいことを感じろという話。

本の中では「やりたいことリスト」を少なくとも25個ラインナップして、そこから上位5個を選んでやれ、と書かれてある。
この手の本のお約束だ。7つの習慣とか、○○するための5つの原則、とかお好きですよね。
でもバカにせず、やったことないならやってみたらいいと思う。
少なくともわたしには役に立った。
たくさんやりたいことあって大変!な人は、案外と少ないことを目にするかもしれないし、やりたいことなんてないな……って人は意外と出てくるかもしれない。
ともかく頭の中のぐちゃぐちゃぐるぐるが可視化されて整理されるのは、とてもいい。
自分の内面に注意を向け続ける習慣をつけると、頭の中がすっきりしてる時間が増える。
頭の中がすっきりしていると、外部のことに流されにくくなる。
流されると、人生は有限なのに、時間は限りあるのに「どうでもいいこと」に大量の時間を消費してしまうのだ。
ご近所さんにつかまって長々と愚痴を聞かされ、子どもとの時間や趣味や家事の時間を削られたり。興味のない飲み会を断りきれなかったり、さして重要でもない仕事を大量に抱え込んで、一番したいはずの業務が先延ばしされたり。
一時的に仕方ない場合だってある。生きていく上で円滑な人間関係は生死にも関わるし、心の平和にも大切だ。
それでも自分の優先順位が決まってて頭の中がさっぱりとしていたら、「一時的に」と区切って対応することができる。
そこが、ただ流されて時間を浪費してしまうのは違う。

不安な人というのは、常に未来のことを考えている

でも、未来のコントロールなんて不可能だ。
不可能なんです。
自分は全知全能じゃないからさ。
仕方ない。
だから今に集中するしかない。
今、目の前にある物事を味わい尽くすと「未来の不安」が入り込む余地がない。
心から味わってみると良い。
自分の呼吸、鼓動、足の下の床の感覚、空気の流れ、皮膚にあたる風、耳に聞こえてくる車の音・鳥の声・誰かが歩く音・ドアを閉める音、目に飛び込んでくる部屋の景色、スマホのほの暖かさ、その液晶画面の明るさや色彩、文字列、文字の意味……。
もっと書ける。
それだけの莫大な量の「今」をしっかりと味わい感じ尽くしていたら、無駄な思考が入る余地がないのだ。

「自分の限界と無力さ」という不快感から逃げたい

なにか大事なことをしようとするとき。
つい、スマホを見ちゃう。SNSや動画を見ちゃう。
それは、大事なことをするときに「自分の限界」と「自分の無力さ」と向き合う不快感から逃げたいのだと本は書く。
そうかもしれない。
本当に本当にしたいことをするとき「うまくできない」「才能がない」「向いてない」可能性や事実にも対面しなければならない。
だから、ちょっと逃げちゃう。
でも、その不快感を取り除きたいのなら、その不快感を受け入れるだけで終わる。
「うまくできないし才能がないし多分向いてない」そんな自分を受け入れる。
受け入れて「まぁでも、それでもやりたいんだからしゃーない」と、やる。
いつだって現実は思い通りにいかない、ということも受け入れる。
それでも、やりたいからやる。
子どもは、こうしたら成功するから、儲かるから、誰かの役に立つから、うまくいくから、誰かから褒めてもらえるから、と、蟻の行進をじっと見たりはしていない。
見たいから見てる。
この無心な自分を大事にしてると「有益かどうか」みたいな功利主義に流されずにいられる。
「それしてなんになんの?なんか得あんの?」
みたいな風潮に、社会に、自分のやりたいことに対して不安を煽られずにすむ。
そして、不安の根源にあるのは「死」の恐怖だ。
未来へ未来へと考えることで、その「死」と向き合わないようにしているが、だからこそ不安は止まらない。止められるのは「今」を味わい尽くす行為だけだ。
蟻をじっと見るのだ。
風を全身で感じるのだ。

本の中にはクリシュナムルティや東洋思想も出てくるが、「外で起こることを気にしない」や「今に集中する」といった思想や瞑想といった実践に、欧米人の知識層が魅了されていくのもよくわかる。
本を読んでると、この筆者はイギリス新聞社の記者だけど、欧米のハイクラス(知識層かな)のキツさが伝わってくる。
膨大な仕事、健康でいなければならない、賢くあらねばならない、紳士であれ。家族や恋人、同僚、SNSの付きあい、世間的評判……と気にすることがものすごく多い。読んでるだけでしんどい。
日本って生きづらいと思っていたが、欧米社会も相当過酷だ。
そりゃこんな本も書くことになるよな、と思う。

余暇は仕事の休み時間や回復時間ではなく、人生の目的

現代社会では余暇は仕事の回復期間として使われる。
だから「せっかくの休日だから無駄にしないようにしよう/せっかくの休日なのに無駄に過ごした」という発想になる。けれどそうじゃないだろ、と本は書く。
余暇のために生きてるんでしょ?と。
だいたい現代人は働きすぎだ。
人類500万年の歴史でもこんなに働いてる期間はほんのここ最近だけだ。
江戸時代だって武士で一日4~6時間で2日働いて1日休み。農民には農閑期があるし、フランスの農民は冬の間はやることがないから、省エネと節約のためほとんど寝てすごしていたのだ。冬眠してたのだ。
働きすぎ!
日本の一日8時間労働だって、元々はMAX時間だったのだ。それが最低労働時間みたいになってる。
頭がおかしい。
そうはいっても社会を変えるのなんて、他人を変えるのと同じく難しい。というか出来ないのかもしれない。
だから、だ。
こんなおかしい社会に流されないように、ちゃんと自分と向き合いましょう、となる。
あなたの1日8時間の週5労働を変えた方がいい、間違ってる、とかじゃなくて。
こんな世の中だからこそ、自分の限りある時間を無自覚に搾取されないように、自覚と内省を常に習慣化した方がサバイバルできるんじゃないかと思うのだ。
社会が為政者の都合でゴロゴロ変わるのは、もうあまりにもわかりやすくわかってしまった今だから。

なにかをきちんとするのには必要なだけの時間がかかる

よく考えたらそうなんだ。
大谷だって生まれてすぐにメジャーリーグで活躍したわけじゃない。吉田沙保里だってそうだ。彼らにとって必要なトレーニングや経験を重ねて重ねて今がある。
あんなすんごい人達だって時間がかかるのだったら、普通の人だって当たり前にそうなのだ。
けど人間は人間だから楽したがる。
即効で儲けたい、モテたい、アレが欲しいコレが欲しい、今すぐしあわせになりたい。
でも。
違うと。
そんな風に焦れば焦るほど余計に時間がかかると。

逆説的になるが、なにかを欲してるなら行動を止めて思考も止めた方がいい。
なにかしてないと落ち着かない人は、忙し中毒だ。
そういう人こそ何もしない時間に耐えられるようにした方が良いと書いてある。
部屋の中で5分、何もせず何も考えずにいろと。
つまりは瞑想だ。
その空白の時間、思考があれこれ不安を掻き立てるのを停止させている時間に、本来なすべき行動が見えてきたりする。
つまり、焦れば焦るほど、不安に陥るほど、思考はあれこれ考えぐちゃぐちゃぐるぐると頭の中で騒いで、まっすぐな道を覆い隠してしまうのだ。

最後に。
この本の中で一番ダイレクトに役に立った情報がこれだった。

毎日コツコツやること

きよっさん(※)やん……。
(※西川きよし:漫才師、後に政治家。座右の銘「小さなことからコツコツと」)

大成した人というのは、毎日小さな時間を長く続けてるんだそうだ。
才能が大きかろうと小さかろうと人間の集中力は割と平等で、一日にたくさんすると、その後何日もできなくなってしまうのだそうだ。
何日もできないと、なんだか焦ってくる。そして自分はダメだ……と悪循環に陥ってしまうのだ。
これは本当にそうで、好きなクリエイターさん達も皆、一日に数時間だけをコツコツとしていると話すのだ。最初に聞いたときは優雅でいいな……と思っていたが、それが継続のコツであり最良の近道だったのだ。
例えば一日に8時間やってその後一週間やる気がなくなるのなら、一日2時間だけと決めて取り組めば一週間で14時間取り組める。週休2日とっても10時間だ。
昔のわたしはまさにこんな感じだった。
漫画もイラストもやる気のある時に何時間も徹夜して取り組むのだが、その後は何週間もやる気がでない。それで自分は何事も成せないんだと潰れてしまってたのだ。

あーあ。
これ、中高生くらいから教えてて欲しかったな~!

読んでいただきありがとうございます。
祝福アレ♪

P.S.
画面右下にある「♡」を押してもらえると、Eri Kooはめっちゃくちゃに喜びます。その場でアナタへひと踊りします。
明日への活力です。

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