夜はだれのもの?

もちろん、誰のものでもない。
しかし、「夜のあの空間は私だけのものだ!」と思っている。

『あの空間』は人それぞれ持っているはずだ。家族の待つ家、居酒屋のざわついた雰囲気、気分の上がる場所を見つけた瞬間、自分へご褒美をあげる日、楽しみにしていたあの人との出掛け先、液晶画面だけが光る真っ暗な部屋、布団の中の温もり、、、

私にとっては、犬と散歩している時間がそれなのだ。
朝よりも、夜に歩くのが気に入っている。
理由は暗いから。

夜が暗いのは当たり前じゃないか!


自分でも夜の散歩がすきな理由がはっきり
していなかったが、少しわかった。



私は適度な田舎に住んでいる。
日中はそれなりに人が行き来しているが、
20時頃にはだいぶ減る。

単に人混みが苦手で、外ではできるだけ人に会いたくないから、夜がいいのもある。

散歩中は「今日はよく頑張ったなぁ」
「今度友達と買い物に行こっ」
「もうすぐ卒業か〜」とか。
大したことは考えてない。

考えることがないときは、キョロキョロしながらオリオン座や欠けた月を眺める。
適度な田舎だから、晴れた日はけっこうな数の星がきらきらしている。
星の名前は全くわからないけど、空を見るのは楽しい。

雲が分厚い日はちょっと退屈で、何か考える
ことを探してみる。

星たちが見える、見えないに限らず夜の空気がすきだ。
日によって、風の様子や空気の肌ざわり、
周りの音が変わる。私自身の調子も違う。
夜はそれらを映してくれる。
明るすぎないから、見なくていいものは見えない。自分が感じたことをそのまま受け取れる。





私が夜空をすきな理由はイルミネーションが綺麗に見えるのと似ている。
どちらも夜に光る点もだが、もう1つ。


イルミネーションは綺麗だと思うのに、お店の外観が照らされていても何も感じない。
それどころか、ときどき鬱陶しいくらいだ。
同じように、光っているのにどうしてこんなに違うのか。

お店は目立たせるためにライトを使用していて、イルミネーションは観覧用だから、差があって当然。
ただ、この2つが自己アピールをするため、もし通行人に声をかけるとしたら

お店 :「見て見て!こっち来てよ!!」

イルミネーション :
「もしよろしければ、見ていきませんか?」

このようなイルミネーションの控えめな部分が、より綺麗さを引き立てていると思う。

お店のライト ▶強制的に視界に入る強さ
イルミネーション ▷希望者に向けられた光


つまり、夜、家に帰ることだけを考えていても見えない。見ようと思わないと見えないものが夜空とイルミネーションの共通点だ。





朝や昼は見ないといけないことが多い。
”ちゃんと見とけよ”
というような軽い圧がある。

その反対で夜のイメージは
”ご自由にどうぞ〜”
この感じがいい。

日中は人目が気になってできないことも、
夜ならできそうだ。
誰と何をして、どんなことを思っても、
夜の深さが包み隠してくれる気がする。

日中の行動はだいたいの人が似たようなことをするが、夜の時間は自分次第。
夜には自分だけの特権があると思う。


夜の散歩中に、私が見たり感じたりしている
ものは、私の角度から切り取られた
私だけの空間だ。

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