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しゃ~ない

不快な話になると思われますので
食事中のかたは読むのをやめて
くださいね
そんなん大丈夫やわ~というかたは
どうぞ、笑

朝、いつものように
舅の部屋に行き
ポータブルトイレのスイッチボタンを
押そうとした時
あぁ、またかと思い
うんざりな気持ちで
つい、言葉がもれてしまった

「義父さん
ここにはお茶やらジュースやらを
入れんといてください
何回も言うてますやん」

最近のこれは、とてもよくできていて
尿のみ固める石を入れておけば
大丈夫な仕組みになっている
ボタンを押せば、きゅぅ~んと音がなり
封をして下にポトッと
落ちる仕組みになっているのだ
手を汚すことなく処理ができるという
優れもの
そこに舅は飲み残しのお茶やら
ジュースなどを入れるのだ
なので、きゅぅ~ん、となって
下に落ちるときに
それら固まらない水分が大量に含み
風船みたいに膨らんで
プヨプヨな状態になっており
下に着地する時に
破裂するのではないかという
危険を抱えている

私は毎回
ヒヤヒヤしながら覗いているのだ
まだ大爆発はした事はないが
下に敷いてある新聞紙は
じっとりと湿っていて
いつどうなるかわかりませんよ、と
物言わぬ株主みたいな
冷酷さを感じるのだ

とっても怖い

そんな危険が潜んだものに
私は毎回、挑むことになる

いい加減やめてくれ、です

そしたら舅

「は?なんて?」
何度でも言おう

「だぁかぁら~
ここにお茶やら入れんといてくださいって何回もいってますやん」

「そうか、悪かったな
おれも気ぃつけなあかんな」

最近たまにでてくる
素直バージョンな舅、である

「まぁ、もぅ、しゃぁないですね」
と、あきらめた

ほんま、しゃぁないのである
年とったら、誰しも
大なり小なりそうなる
そしたら、舅

「は?なんて?」

「だから~しゃぁないですね」
ちょっと、スローなブギで言ってやる

「仕方ないってことか?」

しゃぁないを訳さんでええねん
(これは心の声)

「そうですわ」

なんだか
ガックリ肩を落としている感じにも見える

「しらんがな」と
私は心でつぶやき部屋をあとにした

しばらくして
私と夫がいる台所にやってきて

「コーヒーしてくれ」
いつもの感じにもどる

そんな落ち込んではなさそう、と
ほっとしながら

「しゃぁなぃ、ってな~」とまだ言う

夫も
「何度も言うてるのに、忘れるんやろ」
黙る、舅

ほんまに
しゃぁない、って思う
(わざとであったとしても)

変えれない現実に
うちひしがれていても
なにも変わらないのである

だから
しゃぁない、といって
割りきるしかないのである

舅に、なんとなしに言った
いつもの言葉が
今度は、自分にもむけられ
なぜか、すっきりした

しゃぁない
あれもこれも
しゃぁないのである

しゃぁない
しゃぁない
しゃぁない

いつか、私がこの家を
でていく日がきたとしても

舅に優しくできず
最期のときを迎えたとしても

風船のように膨らみ
大爆発して、部屋中水浸しになっても

しゃぁない、のである

しゃぁない、と
声を大にして言うと
なぜか
自分が強くなった気がする

そうやって、奮い立たせながら
生きていくしかないのだ

こんな時、遥か昔の結婚式で
酔っぱらいの親戚のおっちゃんが
司会者の人に
「結婚とはどんなものでしょうか?」と
不意打ちに聞かれ
顔を赤らめながら
「地獄や~」とマイクで叫んでいたことを
思い出す
どんなありがたいスピーチよりも
インパクトがあり
忘れられない
今やったら
つまみ出されるで、ほんま笑

さっ、夕飯支度します~

最後まで
読んでくださりありがとうございます


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