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住宅設計者の自分の家づくり 09 床は贅沢に
今回は床仕上げについて書きます。
床仕上げは住み始めてからの変更が大変なので、内装の仕上げを考えるときは最初に床のイメージから決めることが多いです。
住宅の場合、施主側に明確な希望がない場合はまずオークのフローリングで提案しますが、これはやはり価格がこなれていて性質的にカバーする範囲が広く色味的にも壁や天井で合わせる色や素材の選択肢が幅広いというのが大きな理由です。
杉、ヒノキ、桐、パインといった針葉樹系(柔らかく肌触りも良く温かみがあるが傷が付きやすく伸縮も大きく床暖房などに不向き、色味は和のイメージに寄りやすいが比較的万能)ウォールナットやチーク、ローズウッドといった濃色南洋樹系(固くて動きは少ないが触感がやや冷たい、色の印象が強い)もよく使われますが、合う内装や家具、ライフスタイルの方向性が限られるので好みがはっきりしていないとおすすめできません。
また、地産地消という考え方もありますが、国産だと流通しているものは針葉樹が多く、ナラやタモといった扱いやすい広葉樹は中国や東欧の材のほうがかなり安いこともあり、なかなか採用が難しいというのが現状ですが、最近は圧密を掛けた傷つきにくい杉なども出てきているので、徐々に採用率は増えるかもしれません。
2階床:フローリング
個人的な好みとしてはチークかオークなのですが、良いチークはかなり高額になりますし狭い家には少々印象がきついのでオークにします。
素材を決めたところで今度は仕上げ、一枚の幅、長さなどの選択に入ります。
仕上げは木の触感が味わえるオイル仕上げ(染み込むタイプ)か汚れや傷がつきにくいウレタンやUV系塗装(塗膜を張るタイプ)がありますが、後者の場合触感は樹脂になってしまいます。
せっかく木の床なのに木の触感を捨てるのはもったいないと思っておりますので、ここは迷わずオイル仕上げにします。
家にいる時間の殆どを架空の敵との戦いに捧げている3才児がいるために傷や染みは付くでしょうが、ある程度は味わいとしてあまり気になりませんし、あまりに酷くなったら表面を削ってオイルを塗ればきれいになります。
ちなみに、オイルやウレタン以外の仕上げとして家具などに使われるソープフィニッシュというのもあり、これは石鹸水のわずかな油分で保護するため肌触りも見た目も一番元の木の状態に近いのですが、床だとメンテナンスをかなり頻繁に行わなければいけないので相当な覚悟と自信のある方にしかおすすめできません。(が、仕上がりはとても良いので我こそはという方はチャレンジしてみてください。)
また、オイル仕上げの中でも着色するタイプと無着色のタイプ、最近はオイルで濡れ色になるのを抑えたタイプなどもありますが、後々メンテナンス的に楽なのは色合わせを考えなくて良い無着色のタイプで今回採用するのもこのタイプです。
オイルは1年に一度程度メンテナンスできると理想的ですが、裸足で歩いているだけでも人間の油分で勝手に補給されます。
がんばって2年に一度くらいは塗りたい(フローリング用のコテバケを使えばクイックルワイパーと手間は同程度)ところですがどうなるでしょうか。
続いてサイズです。
フローリングの幅は一般的に90mm~180mmくらいが多く使われますが、今回は思い切って過去に一度も使ったことがない300mmのものを使います。
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これだけ幅があると木目がしっかりと楽しめ、いかにも木の上を歩いているという感覚が強まるのではないかと楽しみにしています。
本当はこのような幅の広いフローリングは別荘などの広い空間で使った方が映えるのでしょうが、狭い空間でも床に出る線が減るのでスッキリさせてくれるのではないかと期待しています。
長さは定尺だと900mm程度と1800mm程度が多く、その中でも長さ方向に継ぎ目のない1枚物と接ぎ合わせてあるユニというタイプがあります。
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どれを選ぶかは好みの問題ですが、ユニより1枚物の方が高額になります。
今回は幅を優先で選んだため長さ2100mmの1枚物となり結構贅沢な仕様で、家全体の建材の中で床材が一番平米単価が高いものになりました。
冒頭にも書きましたが、床は住み始めてからの変更が大変ですし、一番痛みやすい場所でもあるのでなるべくしっかりしたものを選んで予算を割きたい箇所です。
フローリング本体の構成についても書きますと、完全な無垢のタイプ、合板か別の樹種の無垢の基材を数枚張り合わせたものに2~4mmの単板を貼った複合タイプ、合板基材に1mm以下の突板を貼ったタイプなどがありますが、突板は表面に保護塗膜がないとすぐぼろぼろになるので、オイル仕上げを選びたい場合は無垢か複合タイプの選択になります。
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無垢の200mm以上の幅広の1枚物などはわずかしか市場に出回っておらず、あっても平米単価が定価3万円前後からとなりますが、複合であれば幅300mmでも平米2万円以下に抑えられます。
また、幅が広いと暴れ具合も気になるところではあり、300mmもあると複合タイプの方が無難かもしれません。
ちなみに複合タイプは床暖房対応品が多いですが、今回のものは非対応になります。
1階床:タイル
と、ここまで木製フローリング前提で話を進めてきましたが、床はフローリング以外にもタイル、モルタル、塩ビフロアなど様々な選択肢があります。
性能の回で書きましたが、今回は基礎に蓄熱する暖房を採用しており、そうすると、1階の床について本当に木製フローリングが最良かという疑問が出てきて、せっかくの蓄熱を活かすのであればモルタルやタイル仕上げも有りかもと思うようになりました。
せっかくだから最近流行りのモルテックスなどを試してみようかと思い概算で見積もりをとったところ30平米程度に対して100万円オーバーだったのでこれはいくらなんでも贅沢すぎで却下となり、代わりに浴室で使おうと思っていたタイルで1階の土足部以外の床全体を仕上げることにして、土足部は簡素にモルタルの金ゴテ仕上げとしました。
配管の関係で下地は乾式になるため、これだけ面積があるとタイルにヒビは入る可能性はありますが、それも味としてとらえようと思います。(マンションリノベで2重床で施工する場合、結構な割合でヒビが入るので)
タイルも無数の候補があるのですが、1階は少し冷たい雰囲気にしたいということと、土間からの一体感を持たせたいということで、上の写真にある、よく使うモルタル調のグレー系で600mm角のものを選択しました。
ちなみにある程度の面積があって普及品の価格帯のものを選べば床タイルは平米9千円前後(材工)とそれほど高価な仕上げではなく、一般的なフローリングより安く施工できる場合もあります。
床材を部屋別でまとめると、LDKと子供室がフローリング、トイレ・廊下・洗面・浴室・寝室・収納がタイルとなります。
掃除面でキッチンの汚れが気になるところですが、激しい油もの調理はあまりしないのでマットなどを敷かずにウェットシートで毎日ひと拭きすれば良いかなと思ってます。
浴室は定期的にケルヒャーでざっと流し、トイレは家族が座って用を足すのを前提にすれば来客時だけケアすれば大丈夫でしょう。
小上がり:畳
話は2階に戻りますが、階段上の小上がりは畳(2畳間)になります。
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畳は日本の気候にはとても合っている床材ですが、掃除が少々大変なのと定期的に表替えが必要なので、現代の住宅で全面で使われることはほぼありません。
とはいえ、そのまま寝転がれる床素材としては畳に勝るものはないと思っていて、家の中に少しでも畳スペースがあるとどことなく安心感があります。
小上がりというと4畳半くらいのイメージが強いかと思いますが、2畳あればちゃぶ台を囲んで食事をしたり、家族3人で寝るくらいはできますので、面積に余裕がなくても2畳くらいなら何とかなる場合が多いかと思いますので是非ご検討いただければと思います。
畳は昔ながらの藁床のタイプもありますが、スタイロフォームと藁を使った軽量なタイプ、ほぼスタイロフォームだけのタイプなども多く使われています。
それぞれ感触が違うのですが、今回は子どもが小さいこともあり、一番内部汚れの心配が少ないほぼスタイロフォームタイプにします。
畳表は最近は色が選べる和紙タイプなどもありますが、触感の良さを優先し本い草で、畳縁はあまり派手ではない無地のタイプとします。
縁無し畳を好まれる方もいますが、一般的ない草で縁無しにした場合に上手な畳職人じゃないとたるみが出やすいという経験があるのと、角のすり減りが気になっていて、縁無しの場合は和紙タイプか七島藺(琉球畳の材料)にするのが良いと思います。
七島藺はじょうぶで存在感も強くとても良い素材ですが、少々表面が荒く、引っ掛かりが出やすいのと、金額が一般的な畳の倍前後になります。
階段:無垢材(巾接ぎ材)
あとは床ではないですが足で踏む場所として階段があります。
計画では段板が裏も見えるような構造になっており、このような場合でよく使うのはタモやゴムといった硬い広葉樹の集成材ですが、今回は玄関から踊り場の板材の木口がちょうど目線に大々的に見えるため、集成材だと下の写真のように3cmピッチくらいで継ぎ目が出てしまい少々うるさくなってしまうと思い、タモの巾接ぎ材(無垢を20cm前後の幅で接いだ材)を使います。
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おそらく気にならない人は全く気にならない割に金額的には結構上がってしまうので迷いましたが、ほぼ毎日朝晩目にするので後悔しないよう決断しました。
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結果、かなり大きな面で見えることもあり、やはり無垢にして良かったと思います。
※この記事は2019年に自社ブログに書いた内容に加筆訂正したものです
竣工後の写真などは下記リンク先でもご覧いただけます。
このシリーズをマガジンにまとめておりますので、こちらも併せて是非ごらんください。
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