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住宅設計者の自分の家づくり 14 水まわりの器具選定と使用感

今回は水周りの器具をどのような理由で何を選んだかと実際に使ってみてのレポートです。

全体を通して、基本的には掃除が楽かどうかというのが大きく、見た目の魅力が面倒臭さを上回ったときだけメンテナンス性を犠牲にするという方針で決めました。

キッチン

キッチンは夫婦揃ってそれほど大きなこだわりがなく、天板がステンレスのバイブレーション仕上げで木の扉の引き出しくらいなイメージでした。

最初は造作も考えましたが、キッチンは上の写真のように半個室でもあり日常生活ではあまり目につかないので、費用を抑えるため既製品にしました。

メーカーは「天板がステンレスのバイブレーション仕上げで木の扉」の組み合わせが可能な上で、にシンクがシンプルに四角く段差が少ないこと(掃除が楽)、あまり細かい機能が無いこと(憶える気にならない)、価格が高すぎないことが決め手となりウッドワンになりました。

コンロとグリル

当初はこれまでに使ったことのないIHを試してみようという話になっていたのですが、コロナ禍に妻が大量に見ていた「おうち時間楽しみ系」動画に影響され、やはり火への思いが捨てきれず結局ガスになりました。

グリルについては、ここ25年ほどは手入れが面倒というイメージが強くてグリルのないコンロを使っていたのですが、今のグリルは25年前とは大違いで魚の匂いもカットされ、掃除も楽ということでグリル付きに。

実際にグリルを使ってみて、サバなどを焼いてもほとんど匂いが出ないことや唐揚げを始めとした自動料理関係の楽さに感動しましました。

食洗機

これまで卓上タイプを使っていたのですが、サイズ的に鍋などを入れるのに配置をあれこれ考えたり苦労していたため何も考えずに入れられるサイズが欲しいと思っていました。

そこでミーレの45cmタイプが国産の45cmの1.5倍以上の容量があるということで候補になっていたのですが、たまたまタイミングよく120周年モデルがかなりお得価格で発売されたこともあり60cmになりました。

キッチン幅を変えなかったので、収納が15cm減ることにはやや躊躇しましたが、使ってみると朝晩の分をパズルのように考えること無くまとめて入れることができ、60cmで良かったと思います。

とある日の1段目
2段目
3段目

庫内容積で考えると国産の食洗機は大きいもので66L、海外製の60cm幅は160L前後と相当な差があり、どうせ食洗機を入れて楽をしたいなら価格差分の仕事はしてもらえるので大きいに越したことはないと思います。

廉価モデルなので乾燥機能も無い上に終了後に扉が自動で開かないのがどうかやや心配でしたが、食後にスタートすると寝る前には終わるので、開けておいて翌朝には完全に乾いているという状態で、万が一開け忘れてもおおよそは乾いているので、部分的に拭きながら棚に戻せる感じです。

また、価格のことで考慮する点として耐用年数もあり、国産が10年程度の想定に対してミーレは20年で、国産2台分+設置費用を考えると実はそれほどの価格差ではないという考え方もできます。

水栓

吐水口付近のボタンで吐水を操作できるグローエのものにしました。

手元のスイッチは細かく止めるのに便利ではありますが、ボタンを押して止まるまでのタイムラグがあり用途によっては使いにくい面もありました。

また、吐水がやや力強すぎ、適度な水量の時にかなり水跳ねが多いというのがストレスになっています。

ウッドワンのオプションにはなかったのですが、メーカー自体にはシャワーになるタイプがあり、やはりシャワーがあったほうが良かったなと思い、水栓については割と早めに交換になるかもしれません。

レンジフード

フード上面にホコリが溜まるのが嫌では古城のものが良かったのですが、以前は小さいタイプか高額なものしかなかったところ、最近普通サイズでこなれた価格の直方体タイプが出たのでそれにしました。

ウッドワンの選択肢内で同じような形でアリアフィーナと富士工業のものがありましたが、富士工業のほうが最小高さが小さく、天井高さから富士工業となりました。(安いというのもあり)

通常の形よりフード上の部分にボリュームがあるので圧迫感が出る可能性もありましたが、場所がやや奥まっていることと吊戸棚が無いためかそれほど圧迫感も違和感もありませんでした。

性能的にはなんの特徴もないシロッコファンなので使い勝手は極めて普通ですが、やはり掃除する箇所が少ないというのはありがたいです。

フィルターなど取り外したものが全てシンクにしっかり入るのが掃除がしやすく重要なポイントに思えました。

扉の面材

フラットタイプが良かったのですが、面材がパインしか選べないので床との色合いが微妙なことと大量生産メーカーの難点として扉同士の木目合わせができないというのが気になり、多少ホコリ溜まりが気になることに目を瞑ってオークの框タイプにしました。

ちょっとカントリー調になるかもと不安もありましたが、結局の所それほど目につくこともなく気にはなりませんでした。

金物は、ウッドワンは引手の種類がかなり多く良いものもあるのですが、家全体の掴む金物をフォルマーニのFERROVIAシリーズに統一することにしていたので別途手配としました。

浴室と洗面

ユニットバスはパネルの継ぎ目やドアまわりがホコリが溜まったりカビやすかったりで実は掃除が割と面倒だったりします。

在来型の浴室もタイル目地がカビやすい印象を持たれがちですが、最近の目地材はだいぶカビにくくなってきていて、さらにタイル用の撥水剤も進化していることもあり、思い切って在来としました。

大きめのタイルで仕上げ目地自体を少なくし、ドア無しのシャワーカーテン仕様にすることで湿気がたまることとドア周りの掃除の面倒さを回避しました。

この仕様の場合、浴室内が密閉されず暖まりにくいので浴室や脱衣室が暖房される仕様じゃなければ冬は少々寒いかもしれませんし、追い焚きにする場合は保温効率が悪くなるので家族が多い場合も向かないかもしれません。

今回は追い焚きにしてないのと基礎蓄熱のおかげで概ね快適ですが、それでも最低気温がマイナスになるような日は脱衣室側のドアを閉めなければやや寒さを感じることもあります。

また、湿気が浴室以外に逃げていくので少なくとも脱衣室までは調質性のある仕上げ材にしてあるほうが良いかと思いますが、冬は他の部屋まで適度に加湿できるので良い面もあります。

今回は1階の壁天井仕上げが左官と桐板ということもあり良い具合に調湿してくれているようで、今の所家全体で加湿器が不要で、夏は浴槽にお湯を貯めることがなくシャワーだけなのでそれほど湿気が気になることもありません。

浴槽

在来の場合は固定するか置くだけかの選択となります。

固定の場合は設置後の安定感があったり、浴室床より低めに埋め込むことで入りやすいなどの利点がある一方で、一般的な間接排水だと床下に掃除が困難な防水槽が必要なために掃除できない空間があることが辛い人(私)には精神衛生上良くない面があり、直接排水だと排水速度が遅くなったり浴槽を変える時に排水位置が固定されるために逃げが効かないという不安があり、さらに浴槽の周囲にシーリングすることになりますが、ここも結構カビやすかったりするというデメリットがあります。

置くだけの場合は水が入っていない状態だと軽いので空の状態で大人が縁に座ったりすると(滅多にないですが)安定性が悪く、浴槽の底が床より高くなるので入るのも子どもなどはやや大変で、浴槽の断熱が無いためにお湯が冷めやすく、極めつけは追い焚きができないというデメリットがある一方で、軽さを活かして少し動かせば裏面や床の掃除ができ、浴槽の交換も工事不要、浴室の床に直接お湯を排水するので見えない部分が汚れているという不安がなく設置費用も搬入費のみで済みます。

殆どの場合は追い焚きが優先されて固定方式が選ばれるのですが、個人的には追い焚きを使うことが滅多に無く浴槽側のたし湯で問題がないのと掃除面が何より大事なので置くだけの方が合っていました。

こんな感じで簡単に動かせます

浴槽は長さ1350mmが限度だったのでなるべく近いサイズで探すと、ある一定の信頼が置けるメーカーの範疇ではサンワカンパニーとフォンテトレーディングのものが見つかりました。

サンワカンパニーはホーロー製なので質感が魅力ではありましたが100kg超と重いので掃除面の不安があるのと長辺が1200mmと短めで、フォンテトレーディングはFRP製で多少安っぽさはあるものの動かしやすく長辺が1300mm。

見積もりを取るとフォンテトレーディングの方が少し安く、このサイズだと少しでも大きい方が良いのでそちらにしました。

形状は楕円と長方形がありましたが、楕円のほうが湯量が少なく、かつ周囲の掃除がしやすいので楕円にしました。

実際に入ってみると背中の納まりもよく、入隅がないため掃除もしやすくて良かったです。

シャワー

どうしてもレインシャワーが欲しく、これまたフォンテトレーディングのシャワーセットが値段の割に見た目やハンドルの動きなども悪くないのでそちらのセットにしました。

レインシャワーとハンドシャワーとカランのセットで、洗い場側にカランは必要ないので浴槽用の水栓としてちょうどよく収まりました。

これも使ってみると特に不便はなくて良かったですが、通常シャワーの水の出方がややゆるいのが少々物足りないのと、もう少しレインシャワーの横幅があると完全に全身が包まれるようになって良かったかもと思います。

お湯はりについては、最近の追い焚きシステムは家の外からでもwifi経由でお湯はりができたりしますが、どうもお湯はり前に一度軽く浴槽を流さないと気持ち悪く結局浴室に行くことになるのと給湯器を定量ストップ付きにしたので、不便は感じていません。

洗面器

当初2ボウルで検討してましたが、カウンター幅が1600mmくらいで少し窮屈になりそうだったのと、掃除が面倒かなと思い、1ボウルで大きめのものにしました。

CATALANOのNEW ZEROというシリーズの幅広のタイプで、全体の幅は1250mmですがシンク部分は690mmで両サイドに物が置ける形状で、このくらいシンク幅があると二人並んで歯磨きするくらいなら問題ありません。

両脇の陶器のフラットな部分が便利で、水跳ねも気にならなく、濡れたものをカウンターに直接置かずに済むのが気楽で良かったです。

玄関前の手洗い

ここはちょっと自分以外の家で試すのに躊躇していたことを実験しました。

手洗い器

浴槽を見にフォンテトレーディングに行った際にライムストーン削り出しの丸いボウルがあり、一目惚れで決めました。

石なので、これもそのままだとメンテナンスがまあまあ面倒なのですが、撥水剤に頼ることにして見た目の魅力と質感を優先しました。

ちょっと器内の排水の勾配が甘く、水が捌けきらないところもありますが、今の所しばらくすると乾いているので結局メンテナンスは何もしておりませんが特に問題なさそうです。

1年9ヶ月時点で銅管下に少し緑青の色が出てきたくらい

水栓

天井から銅の給水管が下りてきて水が出るというシステムにしています。

玄関から階段に登る箇所にあるため日常的に目に付く場所ということで、いかにも手洗いというイメージにならないようにこのような形にしました。

使ってみたところ、ハンドルから吐水口まで距離があるので回してから水が出るまでと止める時にタイムラグがあり、初めての人はちょっと戸惑うようですが慣れると気になりません。

難点は、縦に水が落ちる際に空気と混ざり合い出水が安定しない点で、通常の水栓より少し跳ねますが、湧き水のような趣きがあると思うと悪くありません。

ハンドル

操作部は壁付けタイプにしたかったのでシャワーユニットなどで使うタイプの埋め込みバルブを使います。

バルブのハンドルはぱっと見でいかにも水栓のハンドルというのを避けたく、方向性の出ない十字タイプにして、色は水栓の銅に合わせたものを探したところ、コーラーで良さそうなのがあったのですが、コロナのせいなのかいつまでも納期が出ないので別のものを探しました。

グローエに近いタイプが見つかりましたが、これは日本では銅色を扱っていなかったので思い切ってイギリスから購入しました。

イギリスの配管サイズは日本と同じなので使用に問題はなく、埋め込みバルブ部は日本で売られているものが使えるのですが、これがまた品切れで竣工後まで入荷しないとのことで、この部品も一緒にイギリスから入れることに。

結果的に送料を入れても日本で買うより安いということでまあラッキーでしたが、保証の問題などがあるのであまりおすすめはしません。

給湯器

また、ここは単水栓ですが、冬に水しか出ないと手洗いが手抜きになりがちなのでお湯が出るようにしています。

ただ、夏場は水にしたいところで、メインの給湯器のお湯だけを繋いでいると、メインの給湯器の電源を切らないと水が出ないので実用的ではないのと、そもそも給湯器が遠いとお湯が出る前に手洗いが終わってしまうということで思い切って専用の給湯器を入れました。

「混合栓にすればいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、この場所にしっくりくるハンドルが見つからなかったのでこれはまあ仕方ない。

ちょっと贅沢な感じもしますが、数万円の一番小さいタイプの給湯器を水栓近くに設置するのはお湯待ち時間も短くなるので外のスペースが許せばありでしょう。

この用途だと水栓下でメンテナンスできるある程度のスペースがあれば電気即湯器が一番良いかと思いますが、結構大きなスペースが必要で今回は意匠的な問題で見送りました。

ベランダ

ベランダにはステンレスのシンクとお湯と水それぞれの単水栓を付けています。

水栓はカクダイのブロンズ色のものにしたのですが、シンクがステンレスなのでシルバーでも良かったかなと思ってます。

水の方は植物の水やり用に常時ホースを繋いで置けるように2口になったタイプにしましたが、なんとなくホースを付けないまま月日が流れています。

外でお湯が出るという仕様は珍しいかもしれませんが、金額的にはそれほどのものではなく、真夏のプールも水だけだと冷たすぎたり、泥汚れなんかもお湯のほうが落ちやすかったりと、何かとお湯が出ると便利なのでおすすめです。

いずれ、冬に露天風呂みたいなこともやってみたいと思ってます。

同じ水栓を1階の庭2箇所にもつけています。

洗濯関係

少し普段と違う例としては洗濯機には洗濯パンは設置せずキャスター付きの洗濯機台を使っています。

ドラム式洗濯機を洗濯パンに設置すると壁際や裏側の掃除は絶望的ですが、洗濯台だと動かして掃除できます。

キャスターはストッパーを掛けてますが、タイルの上を引きずって動かしてます。

運転中に位置が大きくずれることはなく、これは結構おすすめです。

改善するとしたら排水の位置をメンテナンスしやすいように手前にしたのですが、メンテナンスすることなど滅多にないので目立たない奥のほうが良かったなというのと、もう少し洗濯機本体の設置位置から離せばよかったかと思ってます。

水栓は通常のストッパー付き単水栓になっています。

※この記事は2020年に自社ブログに書いた内容に加筆訂正したものです
竣工後の写真などは下記リンク先でもご覧いただけます。

このシリーズをマガジンにまとめておりますので、こちらも併せて是非ごらんください。


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