![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143370577/rectangle_large_type_2_d3aa8c4348601c380e353d6cf57890ee.png?width=800)
三姉妹(2022) ギリギリでいつも生きていたいから。
韓国産の刺激強めなヒューマンドラマ。私は途中で声を出して笑い最後には泣いていた。ぐっちゃぐちゃで壊れかけているけど、なぜか繋がっている家族の不思議さ。そうそう。家族ってこんな感じだよなー。ホラーじゃないですよ。
〈あらすじ〉
ソウルに暮らす三姉妹。花屋を営みながら元夫の借金を返済している長女ヒスクは、娘に疎まれながらも大丈夫なふりをして毎日をやり過ごしている。高級マンションで家族と暮らす次女ミヨンは、模範的な信徒として熱心に教会に通い、聖歌隊の指揮者も務めている。そんな彼女の完璧な日常が、次第にほころびを見せはじめる。劇作家の三女ミオクはスランプに陥って自暴自棄になり、酒浸りの日々を送っている。父の誕生日を祝うため久々に集まった三姉妹は、そこで幼少期の心の傷と向き合うことになり、それぞれもがき苦しみながらも希望を見いだしていく。
〈感想〉
※以下ネタバレを含みます※
異なった境遇で生活する三姉妹に、交互にスポットライトを当てながら物語は進んでいく。長女、次女、三女。この3人、それぞれ違うベクトルでかなりとち狂っている。明らかに度を越しており、もう修復不可能じゃないの?と思われる3人だが、奇しくも歌詞通りの状態になってしまったKAT-TUNと同じくらいギリギリのところで生きられている。拗らせてるけど嫌いになれない、そんな姉妹だ。
シングルマザーである長女とその娘の関係性はほぼ破綻しており、なんとか改善しようとするも空回り。そんな中で自身が癌宣告を受けてしまう。次女は大学教授の夫と裕福な家庭を築いていたが、夫が教え子と浮気をしたことから家庭は綻び始める。三女は作家だがスランプに陥っており、酒に溺れ、夫の連れ子との関係性に悩む。
中でもチャン・ユンジュ演じる三女ミオク(写真右)は、かなりぶっ飛んだキャラ設定となっている。酔っ払っては姉や息子にダル絡み。夫は夫で信じられないほどのお人好し。酒乱の妻の言いなりだ。酔っ払ったミオクに「抱いて」と言われれば「分かった」とズボンを脱ぎ、「気持ち悪いからやっぱいい」と言われても怒らない。
ミオクは当然息子にも疎まれており携帯には「クレイジー女」と登録されている。そのことを知ったミオクはショックを受け、夫は怒って息子をビンタする。ここが一番笑ったのだが、夫が息子を殴った瞬間すっ飛んできたミオクは「子供に手をあげるなぁ!!!」と言って夫に馬乗りになりボコボコにする。その後の食卓のシーンで夫の顔が腫れているのが滑稽で面白い。最後まで観るとなぜミオクがここまで怒ったのか明らかになるのだが…
長女、次女のストーリーもなかなかのネジの外れ具合なので是非見てみてほしい。
映画後半、父親の誕生日会のために久しぶりに家族が集結すると、物語は一気に深刻な展開となっていく。実はこの父親、今でこそ改心しているものの、昔は酒を飲んでは手をあげる虐待親父だったのだ。今まで物語には登場していなかった一番下の弟も参加するが、父親への恨みを募らせた弟は精神を病んでおり食事会場で発狂する。それをきっかけに姉妹それぞれの抑圧された不満が噴出し、食事会は阿吽絶叫の地獄と化す。ひと段落した後に、弟と3人姉妹のやりとりがあるのだが、三者三様のお姉ちゃんたちが微笑ましい。
同じ環境で育った三姉妹は、それぞれ異なる心の傷を負いながらも、なりふり構わず人生に食らいつく。ラストで3人が海辺を歩くシーンでは、あまりに荒削りな愛の形に胸が熱くなる。他人には決して理解できないし説明することもできないけれど、なぜか強力な姉妹の絆。少々アクが強いものの、小説を一気読みしているような気持ちになれる映画だ。女優たちの体当たりな演技に引き込まれること間違いなし。綺麗なだけの家族なんていない。
今ならアマプラで見放題なので、ぜひ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?