ヘレディタリー継承(2018) 今世紀最恐ホラー
この記事を書くために再度鑑賞した。おそらく3〜4回目だ。結論。私はやっぱりこの映画が一番苦手かもしれない。もちろん褒めている。
鬱展開でもあるし、とにかく人間が感じられるありとあらゆる嫌悪感・不快感を煽ってくる作品なのだ。視聴者をこんな気持ちに出来るなんてアリ・アスターは天才だと思う。
<あらすじ>
妻アニーと夫のスティーブ、長男ピーターと長女チャーリーの4人家族は、祖母の葬儀を終え再び日常を取り戻そうとしていたが、アニーは家の中で亡くなった母親の気配を感じるようになる。ある悲しい出来事をきっかけに家族の絆に亀裂が入り、やがて取り返しのつかない惨事へと発展していく。
<感想>
※以下ネタバレを含みます※
(考察記事ではないので継承や生首の意味するものとかには触れません)
まずこの映画の恐ろしさに半端なく貢献している母親アニー役トニ・コレットの怪演を讃えたい。ほんとにトラウマになるレベルに怖い。目鼻立ちがはっきりしているからか、驚いた顔がとにかく絵になる。この方がシックスセンスのコール少年のお母さん役とは知らなかった。全然関係ないけどシックスセンスの車の中のシーン泣けるよね。コールがおばあちゃんの話してお母さんが一気に信じるところ。あそこは何回見ても号泣する。
話を戻そう。
私はそこそこホラー映画は見慣れている方だと自負している。グロさで言うなら本作を上回るスプラッター作品はたくさんあるし、それこそ哭悲の方が映像のインパクトは強いと思う。でもこの映画は何より展開が辛すぎるのだ。
あの激ヤバ事故が発覚する時も、直接的に映すのではなく、ピーターが母の悲鳴を聞くという見せ方がリアルだ。仮に悪霊とか王位継承とかそういうのが一切なくても、ただの鬱ヒューマンドラマとして十分成立すると思う。家族は何とか日常を取り戻そうとするけれども、母と息子はお互い腹に一物ある感じでギクシャクする。この気まずい空気感が観ていて非常に息苦しい。食卓でお母さんが怒鳴りつけるシーンは「それ以上言うなよ?」ってヒヤヒヤしてたけど全部言ったし笑
あとは虫が何より嫌いな私にはキツいシーンが多かった。チャーリーやピーターの顔にたかる大量のアリ、屋根裏に大量発生しているハエ。あーキモすぎる。死霊のはらわたみたいに傷口から虫が出たり、吐瀉物に虫が混じってたりすると現実味がないんだけど、本作の虫シーンは全部本当にありそうだから余計に嫌だ。
そして母親アニーが覚醒した後の奇行詰め合わせパック。畳み掛けるような怪異は一度観たらもう頭から離れない。壁を這うシーンは音もなく背後の壁にへばりついてる感じがまるでGみたいでゾッとする。
全力疾走してきたと思ったら頭で天井をガンガン…
両手でナイフを持って自分の首をぐさっぐさっ…
こんな映像を作成しようと思う発想がぶっ飛んでるし、本当にビジュアル化して世界中に配信するなんて何かの法に触れないのだろうか笑
ちょっとデニーロ感のあるパパは一番家族想いだったのに、妻と息子の板挟みにされて、あんな最後で本当に可哀想だった。
無音になるシーンが多くてBGMに頼ってないし、ゆっくりとしたカメラワークや母が作っているミニチュア模型、チャーリーの鳴らす"コッ"という音。その全てが不気味で2時間ずっと不穏な空気を醸し出している。
21世紀最恐のホラーと名高い本作。その名に恥じない出来栄えなので、トラウマ植え付けられたい方はぜひご鑑賞ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?