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関係人口って何だろう?


 こんにちは!えぽっくの若松です。


 地域に関わる事業をしていてよく耳にする言葉に、「関係人口」という言葉があるのですが、ご存知でしょうか?

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。

地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。

『関係人口ポータルサイト』より抜粋


 今回はこの、「関係人口」というワードから、僕が感じていることを書いていきたいと思います!

■どちらが大事?定住人口 or 関係人口


 2011年頃、神奈川県三浦市で、あるプロジェクトに関わっていたことがあります。


 当時は「関係人口」という言葉はまだスタンダードではなかったと記憶していますが、そのプロジェクトがまさに、今で言うところの「関係人口」がテーマでした。そのプロジェクトを簡単に説明すると、東京の社会人が地域にフィールドワークに行き、その地域の課題などを聞きながら、より良い地域にしていくための提案をする、というような内容でした。ありきたりなのですが、より良い地域にしていくために、僕たちは「いかに定住人口(移住者)を増やすかが大事だよね」という話をしていました。


 そのプロジェクトには、三浦市に地域コンサルとして民間登用された方が、僕たちの活動のサポーターという立場で在籍していました。「定住人口をいかに増やすか?」と論議していると、そのサポーターの方が、「何のために定住人口を増やすの?」と言われました。「行政ではない”あなたたち”が定住人口を増やす意味はあるの?」とも…。


 その方いわく、「定住人口を増やそうと思ったら、三浦市は簡単」なんだそうです。なぜかというと、三浦市は品川まで電車で一時間半ほどで行ける場所なので、駅前に高層マンションを作れば、郊外で暮らしながら都心で働く人が増えるから、マンションさえ建てれば自ずと人口も増える、ということでした。


 これを聞いた僕たちは「確かに…」と思い、住民票があるかどうかよりも、僕たちのように地域に興味がある人や、何か趣味や好きなことのために地方へ通う人のように、三浦市という地域を楽しめる人や、ここで何かやってみたいと思う人…つまり、“三浦ファン” みたいな人を増やす方が、数字を増やすことよりも価値があるんじゃないかな?という話に展開していきました。


 数年後、実際にお仕事で三浦市に関わることになったときに調べてわかったのですが、人口動態の中で突出して人口が増えている時期がありました。それは、農地を開発して宅地にし、大々的に住宅をつくった時期と重なっていて、確かにマンションを建てれば人が増える、というのは場所によっては一理あるんだな…と、一つの学びになりました。


 ただ、僕はやはり「“三浦ファン” みたいな人を増やす方が、数字を増やすことよりも価値がある」という話がとても心に残っていて、もちろん駅前の高層マンションに暮らす人全員が、自分の住んでいる地域に無関心だとは思いませんが、特別にその地域に興味がない人を、“定住人口” という数字だけのために闇雲に増やすよりも、地域のことが好きで活動してくれる人を増やした方が余程価値があるな、と実際に仕事をし始めて改めて感じたのです。


 そのときに僕が使っていた言葉は「活動人口」でしたが、今で言うところの「関係人口」の(一部分)ことです。事業でもボランティアでも良いのですが、地域が好きで、地域がおもしろくなる活動に能動的に関わってくれる人を増やすことが、今でもとても大切だと思っています。


 そのためには、「私たちの地域にはこういうイベントがあります」や、「こんな活動に取り込んでいますよ」など、地域の特性を可視化することがとても大切で、且つそれをいかにオープンにできるか?も重要になります。


 わかりやすい例はお祭りです。お祭りというのは昔から脈々と受け継がれていることも多く、「神輿を担ぐのは代々、町内で生まれ育った成人男性」などの決まりごとがあります。これは誰でも関われる領域ではありませんよね。伝統的なものはどうしても排他的になりやすい側面があります。


 それを変えろ、ということでは決してありません。守りたいものは大切にしつつも、柔軟になれる部分をいかに増やし、外側にオープンにできるか。お祭りの例であれば、神輿を担ぐことはできないけれど、裏方としてお手伝いしていただけることはあるかもしれません。裏方でもいいから、たとえ電車で一時間以上かかるところであっても「運営として関わりたい!」と思ってくれる人が増えたら、単に人手不足の解消に留まらず、地域にとっての多様性や寛容性にも繋がります。


 どういうことかというと(引き続き三浦市を例にしますが)、生まれも育ちも三浦で三浦しか知らない人が、三浦以外から来た人に「わたしの田舎のお祭りではこういうことをしていますよ」のように、交流の中でさまざまな話がもたらされることで、他の地域の歴史や特性、価値観など、あらゆる側面で刺激を受けることができます。この交流から、地域にとっての多様性、寛容性に繋がると思うのです。


 そうやって地域の多様性や寛容性の向上に注力することが大切だなと僕は感じていて、定住人口や、観光などで訪れる人=消費する人を増やすよりも、能動的に関わる人=一緒に創造する人を増やす機会を僕たちがいかにつくることができるかが、とても大切なポイントになると思います。


■「ふるさと」と感じられる場所にできるか


 一緒に創造する人を増やす機会、とはどうしたら生まれるのでしょうか。


 最近では「関係人口事業」、という言葉もあります。ちょっと小難しく聞こえますが、実はそんなに難しいことではなく、意外と身近に存在しています。


 僕の場合は、地域で一緒に創造する人、として、インターンや副業のコーディネートをしてきました。普段は都内の大学へ通う大学生、あるいは都心部で働く会社員。インターンや副業に興味があるこの人たちは、たとえ移住はせずとも積極的に地域に関わろうとしてくれる可能性は高いですし、将来的にも愛着を持って関わってくれる可能性はとても高いです。つまり、関係人口に寄与する人たちともいえます。これはわかりやすい例ですよね。


 他には、たとえば都内在住で、週末だけ車で1時間の地方でカフェを経営している人がいるとしましょう。この方は関係人口に該当します。そのカフェがとてもアットホームな場所になっていて賑わっているとしたら、そこは立派なコミュニティですよね。


 コミュニティというのは、さまざまな人や情報が集まる場所です。たとえオーナーが「関係人口を増やそう!」とは思っていなかったとしても、「農業に興味があるんです」と言っていたお客さんに、「そうなの?この前〇〇さんっていう人が、人手が足りないって言ってたよ!紹介するから試しにお手伝いに行ってみない?」と繋げてあげるだけでも、「一緒に創造する人」を増やす機会になり得るわけで、地域にとても貢献していると思います。


 「こういうことができる人を探しているので、もしいたら紹介してください!」という問い合わせは、コーディネート業をしているとよく聞かれます。僕たちコーディネーターも地域に特化しているとはいえ限界があるので、先ほどのカフェの例のように普段からコミュニティの場になっているような場所をつくられている方がいてくださるととても心強いです。


 また、公に関係人口事業に関わろうとするとき、僕たちコーディネーターだけでも上手くいかないことが出てきますし、逆に個人だけでも規模によっては進めづらい面があります。そういった意味でも、行政、コーディネーター、地域で活動する個人が連携することが、関係人口を考える上でとても重要かなと思います。


 「ふるさと」という言葉がありますが、きっと「ふるさと」は、人によって定義がまったく変わってしまうものですよね。


 単純に、生まれた場所が「ふるさと」、と思う人もいるでしょうが、生まれて間もなく引っ越してしまって、その後まったく縁のない場所も「ふるさと」になるかと聞かれたら、これには違和感がありますよね。社会人になって短期間で何度も転勤していたら、どの場所も「ふるさと」にはならないかもしれませんが、特定の場所に10年、20年と生活しているうちにその地域が気に入り、いわゆる第二の「ふるさと」になることはあるでしょう。


 このように「ふるさと」の定義は人によって異なると思いますので、一概に断言はできませんが、ある書籍の中で、『創造的な活動を行った場所が「ふるさと」である』というような記述に出会いました。


 観光のような形で消費者的に関わった場合、それほどその土地への思い入れは湧かない場合が多いでしょう。一方、その場所で地域の方と一緒に野菜を作るなど、何かしらその地域で誰かと何かを創り出すことで、より愛着が湧き、「ふるさと」と呼べるようになることは十分にあり得ます。


 関係人口に該当する人…つまり、能動的に関わる人=一緒に創造する人の中には、その地域を「ふるさと」と感じてくれる人もいるんじゃないかと思うのです。「ふるさと」と感じるには、「家族のような感じ」、「ただいま!と言いたくなる場所」のような感情的なものが作用するとは思いますが、いずれにせよ共に創造的に関わることで愛着を持ってもらえる可能性は高いですよね。


 住民票の有無が重要だという考え方も理解はできます。しかし、ライフスタイルもさまざまな価値観も変化し続ける現代です。仕事にしてガッツリ地域と関わる人もいれば、休日はフルに使う人、年に数回のイベント時だけ関わる人も、みんなが良い関係性で続けられることが大事だと思います。


 地域に愛着と親しみを持ち、たとえ定住はしなくてもお互いに気持ち良く関われる「関係人口」が増えることが、現代にフィットした地域の在り方なのかもしれませんね。




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