IT投資で期待していた効果を、期待通りに引き出す Glicoグループのサービスマネジメントについて話を聞く【5/7】
江栄情報システム様(大阪市)は、Glicoグループ様の情報システム部門としてグループ全体のITシステムを担当しています。来年に基幹業務システムの刷新を控え、その土台作りのために全社規模でITサービスマネジメント(ITSM)を導入しました。「ITIL®4」という最新の考え方で「ServiceNow」を導入した事例はまだ珍しく、同社が経験したストーリーには大きな価値があります。2人のご担当者と、DIG2ネクスト代表の鈴木寿夫が対談しました。
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山下様 デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれています。変革は確かに必要です。しかし、何を変えるにしても、まずは現状を客観的に把握する必要があります。ITサービスマネジメント(ITSM)の本質は、「今あるものをしっかりと活用すること」にあります。どんなITツールを入れても、「運用」をしっかりしなければIT投資の効果が出せません。
効果が出ると期待してIT投資を行い、ITツールを導入しても、最初の想定からズレが生じてくることは必ずあります。このズレをいかに埋めていき、当初の期待通りの効果を得られるようにするのか。そこで、ITSMの継続的改善の実践(運用)が生きてきます。
細かなところでうまく動かなかったら、まずは改善(ギャップを識別するの)に必要となる可視化(測定と記録)をします。その記録が積もっていくと、「これは最初の考えと違っているのではないか」と気づきます。その場合は、分析し改善していけばよいのです。目指すべきビジョンと可視化された現状の課題の間を埋めていくのがITSMであり、それに基づいて地固めをします。
経営的な考え方としては、ビジネスと全く同じです。まず今の売上と利益がどうなっていて、市場でのポジショニングはどうなっているのか。その分析があって、初めてビジョンに対する事業展開の方向性を検討できます。ITでも、まず今の状態と立ち位置を確認し、目指すべきビジョンとのギャップを可視化する必要があります。それによって確かな一歩を踏み出し、実効性の高い変革が可能になります。
小泉様 ITSMは、ITシステムの価値を最大化するための仕組みです。ITシステムを導入することが目的化してしまっている企業は多いです。導入だけで燃え尽きてしまい、あとは何もしていないような状況はよく見られます。
PDCAサイクルは導入プロセスだけでなく、運用後も続きます。前回の結果を次の企画にフィードバックし、確実な向上を目指すべきです。多くの企業の情報システム部門では、期待した価値は本当に出ているのか、生産性やセキュリティを向上させる可能性はどこにあるのか、それらを次の企画にどうフィードバックすればよいのか。客観的な検討ができていません。ITSMは、それを可能にする仕組みです。
山下様 ITSMがない状態は、真っ暗闇をライトも付けずに自動車を走らせているようなものです。
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