時代とともに進化する「ITIL®」と、抱いていた危機感 Glicoグループのサービスマネジメントについて話を聞く【6/7】
江栄情報システム様(大阪市)は、Glicoグループ様の情報システム部門としてグループ全体のITシステムを担当しています。来年に基幹業務システムの刷新を控え、その土台作りのために全社規模でITサービスマネジメント(ITSM)を導入しました。「ITIL®4」という最新の考え方で「ServiceNow」を導入した事例はまだ珍しく、同社が経験したストーリーには大きな価値があります。2人のご担当者と、DIG2ネクスト代表の鈴木寿夫が対談しました。
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小泉様 ITSMも、時代と共に進化しています。「ITIL® V3」から「ITIL® 4」への変革です。「ITIL® V3」と「ITIL® 4」は、全く異なるものです。
これからの開発は、アジャイル開発へシフトしていきます。アジャイル開発におけるサービスオペレーションは、「ITIL® V3」ではできません。「ITIL® V3」は、完全にウォーターフォール型開発の常識で作られているからです。ライフサイクルの定義自体がウォーターフォール型なのです。私は「ITIL® 4」を知らないとまずいと思い、その危機感からセミナーを受講しました。
鈴木 今の時代にアジャストするために刷新されたのが、「ITIL® 4」です。前バージョンの「ITIL® V3」は、2000年代初頭に作られました。iPhoneもクラウドもない、古い世界をベースに作られており、今日の環境には合いません。
小泉様 エンタープライズ系のシステムについては、「ITIL® V3」の考え方も残っていますから、無理に「ITIL® 4」に変える必要はないかもしれません。しかし、DXをやりたいとか、当社でも進めているIT内製化の取り組みにおいては、「ITIL® 4」に基づいて考えていく必要があります。
DXのイニシアチブは、業務側が持つべきです。江栄情報システムの使命は業務側のニーズを実現していくことにあるため、私たち自身はあまり大きなイニシアチブを持っていません。
ただし、当社は昨今「システムの内製化」に力を入れており、そこには小さなイニシアチブがあります。そこでは「ITIL® 4」に基づき、必要な価値をしっかりと届けることを意識しています。システムの内製化は、完全にアジャイル開発だからです。
鈴木 エンタープライズの領域は「ITIL® V3」で良いという考え方もあり得ますが、「ITIL® V3」でITSMをすることは時代に合っていません。江栄情報システム様のサービスマネジメントをお手伝いしている期間、私は完全に「ITIL® 4」で考えていました。個々のプロセスにとらわれることなく、どうすれば業務プロセスがスムーズに流れるかを考えました。
例えば、障害や問い合わせが発生した時、どういう流れで対応すればスムーズに行くのでしょうか。この「流れ」で考えていくのが、「ITIL® 4」のコンセプトです。考え方のベースには、「トヨタ生産方式」すなわち「リーン生産方式」があります。いかに無駄を無くし、価値を最大化するか。それが「ITIL® 4」です。今はスピードの時代ですから、いかに速く価値を届けるかが重要です。これに対し、「ITIL® V3」はスピードよりコントロール重視と言えます。
システムをモダナイズするのであれば、その環境に合わせてITSMもモダナイズしなければバランスが取れません。小泉さんが進められているようなデジタルの領域は、まさに「ITIL® 4」が最もフィットするということになります。
小泉様 そうですね。新しく学ぶ人には、「ITIL® V3」ではなく「ITIL® 4」を学んでもらっています。
(続きます)