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「ServiceNow」をわずか1カ月で導入、どうやって? Glicoグループのサービスマネジメントについて話を聞く【1/7】

江栄情報システム様(大阪市)は、Glicoグループ様の情報システム部門としてグループ全体のITシステムを担当しています。来年に基幹業務システムの刷新を控え、その土台作りのために全社規模でITサービスマネジメント(ITSM)を導入しました。「ITIL®4」という最新の考え方で「ServiceNow」を導入した事例はまだ珍しく、同社が経験したストーリーには大きな価値があります。2人のご担当者と、DIG2ネクスト代表の鈴木寿夫が対談しました。

山下様 江栄情報システムは、Glicoグループの情報システム部門としてあらゆる業務を支援するITシステムを開発、管理しています。私は2016年4月にマネージャーとして入社しました。
 
その頃当社は2つの大きな課題を抱えていました。1つは仕事の進め方が属人的だったことです。職人芸のようなもので、誰かが自分の考えで続けてきた業務プロセスを見よう見まねで継承していました。本来なら標準化すべき業務内容が、担当者の自己流で行われていたのですね。

江栄情報システム 代表取締役専務の山下啓介様

もう1つは、縦割り組織の問題です。Glicoグループには、マーケティングや営業、製造、人事、総務、経理といった様々な業務領域があります。江栄情報システムの使命は、すべての業務のITシステムを一気通貫で提供していくことです。その組織の構造が業務領域ごとの縦割りになっていては、システム全体で考えることができません。
 
情報システム部門に求められる第1の価値は、すべてのシステムを問題なく稼働させ、業務をしっかりと支えることです。お客様や得意先から注文が来ても、それを受けて出荷するシステムが正しく動かなければ、応えることができません。製品を製造する場合も、どの製品をいつまでにどれだけ作ればよいのか、どんな原料がどれくらい必要で、どのようなプロセスで作り、品質をどう管理するか。そうした業務のすべてをITシステムが支えています。
 
すべての業務はつながっていますから、ITシステムも一体となって動かなければなりません。ある部門のシステムで問題が起きると、その影響は他部門のシステムに現れます。1つの問題が、連鎖的に他の問題を引き起こすわけです。組織が縦割りになっていたため、部門間の横の連携がうまく行っていませんでした。
 
属人的な仕事のやり方を解決するには、3つのスキルが必要になります。
 
第1は、システムの企画力です。例えば、営業部門が「こんなことをしたい」と言ってきたからそのシステムを提供するという考えではなく、「この業務は本当に必要ですか、何が問題ですか、これをやればどういうメリットがありますか」という具合に、ビジネス面の目的と効果を明確にし、限られたコストで効果的なシステムを企画する力が必要です。
 
第2は、システムの導入プロセスを管理する能力です。ITの世界では、すでにグローバルなベストプラクティスが確立されている場合が少なくありません。属人的な方法ではなく、より確度の高いベストプラクティスを取り入れていけば成功確率が上がり、誰がやっても良い結果を出せる仕組みを実現できます。
 
そして第3が、ITサービスマネジメント(ITSM)です。導入したITシステムの品質を高め、コストを抑えて安定的に運用していくための仕組みです。ここにも、グローバルに確立されたプロセスがあります。属人的な方法ではなく、確立された方法論を導入すれば、すばやく効率的に品質を高めることができます。
 
こうした背景を理解している人材が必要となり、小泉さんに来ていただきました。かつて私がP&Gジャパンに務めていた時代の同僚で、ベストプラクティスに学ぶ重要性をよく知っている方です。
 
小泉様 私はITエンジニアとしてのキャリアをSAPジャパンでスタートしました。2006年からはP&GジャパンでPMBOK(Project Management Body of Knowledge)ベースのプロジェクトマネジメントを経験しました。PMBOKは、米国PM学会がまとめたプロジェクトマネジメントの知識体系です。2017年に江栄情報システムに入社しました。

江栄情報システム Technical & Data management リーダーの小泉和香様

2017年に山下が江栄情報システムの経営トップになり、縦割り型の組織を水平型の組織へと変革しました。「企画」「プロジェクトデリバリー」「サービスオペレーション」の3つの機能に組織を再編し、私はサービスオペレーショングループのリーダーになりました。
 
当時はあらゆる仕事が属人的で、サイロ化されていました。それらを棚卸しして、業務を標準化し、誰でも同じように仕事ができるようにしなければなりません。ITSMにもPMBOKと同様の知識体系があるはずだと考え、探し求めた結果「ITIL®」の導入を決めました。
 
当時、Glicoグループでは「グループウエアの刷新」という大きなプロジェクトが動いていました。2018年3月に「Lotus Notes」を「Microsoft 365」に切り換えるのです。しかも、海外を含めたGlico全体のプロジェクトでした。
 
ソフトウエアを切り換えることに手一杯で、その後のサービスのことが全く考えられていませんでした。1カ月後には全従業員が使い始めるのに、問い合わせ先も整備されていません。ITSMの仕組みを、1カ月で作らなければなりませんでした
 
これが「ServiceNow」を使い始めたきっかけになりました。ServiceNowには、ITSMの標準的なプロセスが最初から実装されており、導入すればすぐに使える状態になっています。時間がない中ですばやくサービスマネジメントを立ち上げるには、こういうシステムが必要だと考えてすぐに導入しました。
 
当時、ServiceNowにいた久納信之さんというエバンジェリストに「ServiceNowを入れるだけでなく、装備されている機能を活用しないと意味がない」と言われました。そこで久納さんにご紹介いただいたのが、DIG2ネクストの鈴木寿夫さんだったのです。
(以下の記事に続きます)

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