【708回】住まい(ガッサーン・カナファーニー「ハイファに戻って/太陽の男たち」その4)
自分が今、立っていられる場所。
もちろん、座っても寝っ転がってもいい。心を休められる場所。
それが居場所だ。
生きるために必要なのは、居場所だと思う。まずは、居場所。最も、身近な居場所は、住まいであろう。
「ハウジングファースト」
まさか、漫画でハウジングファーストに出会えるとは。
「ハウジングファースト」という言葉を初めて聞いたのは、ホームレス支援やオープンダイアローグで有名な森川すいめい氏の著作を通してだった。病気や障害、生活手段の確保し、収入を得てから初めて住まいにたどり着くのではない。
最初に、住まいから、である。
しかも、「住まいが得たいか」が大事だ。
相手の意志を尊重した支援になっている。
ところで、ガッサーン・カナファーニーは、書いている。
まずは住まいから。そのはずが、いきなり住まいから奪われてしまった。
「住まいを手放してくれないか」
そのような問いかけがあるわけもなく。いや、あまりにも勝手な問いかけだが。
場所の不在が、彼ら自身の不在に繋がり、先の不在にいたる。
悔しい気持ちも消えていく。怒りか、もしくは、無感情か。