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【781回】「近親殺人」「『叱らない』が子どもを苦しめる」「侍女の物語」

① 石井光太「近親殺人」

この国の家族に、それぞれ抱きそうな、不満や不安、疲れ悲しみ。じわじわと心の中に残る泥のような暗闇。究極的に追い詰められた泥はエネルギーになる。自身に向かうか、相手に向かうか。

殺人事件の半数が家族の中で発生している。家族をとりまく社会が、このままでよいはずはない。


② 藪下遊・髙坂康雅「『叱らない』が子どもを苦しめる」

「やればできる」と万能感を抱く子ども、失敗に耐えられない子ども、子どもの話を聞いて要求する保護者、無い袖を振ってしまう学校、どれも実感がある。

支援のヒント。

自分が前に出るというコミットメント。

覚悟なんだよな。この子と保護者と接する覚悟。

再読し内容をメモしておきたいくらい、情報満載の本だった。
自分の味方だ。


③ マーガレット・アトウッド、斉藤英治訳「侍女の物語」

「1984」に並ぶ、ディストピア小説の巨頭。

物語があちこち飛ぶので非常に読みにくい。とっつきにくい構成も、結末を読めば、了解できる。

それほど、この物語の世界は危険なものなのだ。

終盤にかけて、主人公の叫びがつらい。

自分が存在している!と願う。

そして、何でもいいから生きたいと懇願する。

見えない未来にとまどう主人公にハラハラしていたら、バッと目の前にカーテンが引かれてしまう。呆気ない、終わり方。

その後のエピローグがあるから、まだ救われる感じはあるけれど……

強い権力を持ち、人を屈服させる社会はおかしい。

怒りより虚しさと悲しみに包まれてしまう。

現実社会がそうならないように。特に、ショック・ドクトリンには目を光らせたいよ。

続編「誓願」も読もう。


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