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【723回】白川優子「紛争地のポートレート 『国境なき医師団』看護師が出会った人々」を読んで

数年前、体調を崩して、仕事を休みながら、教師としてもがいていた。
精神科の先生は、言った。
「あなたは、そんなに苦しんでいる。それなのに、なぜ教師の仕事を続けようと思うのか?」
今、回答を書けば、数年前とは違う答えになるのだろう。記憶は、今を生きやすくするために、都合よく書き換えられる。

白川優子さんも、同様の質問を受けた。「なぜあなたは、紛争地の看護師を、国境なき医師団の仕事を、続けていられるのか」と。
答えは、本の中にある。ここでは明らかにしない。


僕に置き換える。

「どうして教師の仕事を続けようとするのか?」

授業に再挑戦したいから?子どもの話を聞きたいから?相談業務に憧れるから?子どもの成長に携わりたいから?学校組織を改革したいから?子どもが人生を楽しんでほしいから?自分が役に立ちたいから?給与や身分が安定しているから?それとも、教師以外の仕事を知らないから?
どれも答えになる。

自分の頭の中から、視線を本に戻す。

人間を壁にした卑劣な組織があった。
ガザが天井のない監獄である意味がわかった。
スリランカ、パキスタン、シリア、イエメン、アフガニスタン、南スーダン。
紛争地での経験をしてきた当事者だからこそ、その土地で生きる人々のちょっとした明るさも含めて、文章化できる。

読了したとき立ったまま、心の中を覗いてみた。紛争地の日常を垣間見たことによる自分の無知に大きな息を吐く。それとともに、僕には僕の経験があって、特別支援学校を歩き渡る教師としての僕の日常は、僕の経験は、僕にしか表せないかもしれないという、少し傲慢な意識だった。

紛争地の日常と、日本に住む僕の日常の比較はしない。
どの場でも、自分ができることは何か、時には24時間集中して仕事に携わりながらも、夢中になって役割を果たす。
「国境なき医師団」に参加希望を出す場合、誰かに言われるより、自分の強い意志が必要だろう。自分が本当にやってみたいと思うから、自分で決めた。
僕も、結局、これからどう業務に携わるか、自分の考えを整理し、自分で決めなければならない。自分の決意が、全て受け入れられるというものではない。ただ自分がどうしたいか、どう働きたいか、自分の考えはどうなのかを、決めなければいけない。

ああ、ドキドキする。尊敬している人たちは、たくさんいる。僕は役に立ちたいんだな。恩返しがしたいのかもしれないな。

なんとか、していきたいな。

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