【705回】幸せな家庭をおいてきてしまった(ガッサーン・カナファーニー「ハイファに戻って/太陽の男たち」その2)
土地を追い出されるとき、全てを、ありのままを抱えはしない。変化がある。
自分の意志と反して、場所を追い出されるとしたら、置いていかなければいけないものがある。
それは、景色、自然、文化、人とのつながり。慣れ親しんだ生活。
そして幸福。
追い出された上に、新たな住民が入ってきた事実を知る。そうなれば、この理不尽にもだえ苦しむだろうな。
幸福は置いてきて、新たに生まれるものは、苦しみと怒りと無力感。
「ちきしょう」という叫び声さえあげる力が無くなりそうだ。