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【707回】けれども俺は、とにかくまだ溶けちまわずにいるんだって(ガッサーン・カナファーニー「ハイファに戻って/太陽の男たち」その3)

自分たちが住んでいた場所から強制的に排除された。
土地を、家を、仕事を取り上げられた。
新たな土地。それは難民キャンプ。彼らにとっては仮の住まい。戻りたい土地がある。以前住んでいた土地に。
土地が奪われた人たちは、自身の存在を問う。
そして難民キャンプは、意識されないと忘れられる。
この世に、隠されていくように。溶かされていくように。

たとえ何がどうあろうと、俺がいるってことは動かせねえ事実なんだ。今まで、暑い茶の入ったコップの中にほうりこまれた砂糖のかたまりのように、皆で俺を溶かしちまおうとしていた。そうしようとすることでは、アッラーもとくとごらんになっていることだが、あんな達は驚くほど精魂かたむけましたね。けれども俺は、とにかくまだ溶けちまわずにいるんだって。

ガッサーン・カナファーニー「ハイファに戻って/太陽の男たち」 彼岸へ p166

自分はいる。難民になって時間は過ぎても、怒りは消えず、ここに存在する!
独白に震える。

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