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食べに行こう!世界一の生ハム、豚肉、豚料理

スペインと言えば生ハム!
世界三大生ハムにも数えられる「ハモン・セラーノ」や、森のどんぐりだけを食べて育った、独特な旨味が凝縮された「ハモン・イベリコ」など、メジャーなものだけでもでも食べきれないぐらいの種類がある。

「やっぱ、ヨーロッパって肉美味いなー」と思っていたら、世界で1番豚肉を生産しているのも、1人当たりの消費量が多いのも、東南アジア人だった。


人類史とは切っても切り離せない、豚肉食

野生のイノシシが食用に家畜化された「豚」。
ヤギや羊などと並んで、人類史のほぼ最初期からペットととして長い歴史を共に歩んでいる。最も古い豚の骨は約1万年前、新石器時代頃中国で発見されたものだそう。

貴重なタンパク質源でもあった豚肉は、食べ尽くされてきただけあって料理のレパートリーも多い。
その中でも、塩漬けにすることで長期保存が出来る「生ハム」は、紀元前4800年頃には存在していた、非常に歴史の長い食べ物だ。

東南アジアが世界一!1人当たりの豚肉消費量

サムギョプサル、釜山にて

そんな馴染みの深い豚肉、世界一の生産量を誇るのは中国。

そして、1人当たりの年間消費量が世界一多い国は、EU連合を抑え、なんと東南アジアから「ベトナム」で29,97kg!

OECD 肉の消費量、2023年

2位はEU連合(もう少し細かく見たかった……。)
その後は3位韓国、4位は中国と続いており、東南アジアの豚肉消費量は、まさに欧州レベルということがわかる。
というよりも、アジア圏は10年後でも豚肉消費量が伸び続ける予想が出ておりEU連合の順位が落ちそうなので、名実共に最も豚食文化が盛んな地域は東南アジアになるかもしれない。

上位にランクインしている東南アジア諸国では、「肉」という単語自体がイコールで意味するのが「豚肉」という場合も多く、どれだけ豚肉が身近な食材であるかが実感できる結果だ。

世界の料理の様々なランキングをベスト100形式で発表しているtaste atlas社の「世界の豚肉料理ベスト100、2024年版」にも、ベトナムからは「Bún chả(ブン・チャー、豚麺)」、韓国からは「サムギョプサル(豚焼肉)」、中国からは「红烧肉(ホン・シャオ・ロー、焼き豚)」などがランクイン。

ちなみに日本からは4品、「カツ丼、とんかつ、チャーシュー、豚丼」がランクインしており、ラーメンと並んでチャーシューも和食カウントかーと感心する。

茨城発!世界一高級な豚「橅豚(ぶなぶた)」

夫作、紀州うめ豚のとんかつ

そして、日本にはギネス入りした世界一高級な豚、茨城県久慈郡大子町、常陸牧場「橅豚(ぶなぶた)」がある。

全国13県、46の生産者から出品された1000頭の豚から選ばれた橅豚、その価格はキロ単価1万7,996円、実に税抜、枝肉金額139万4,690円で落札されている。

https://bunabuta.jp/sp/bunabuta.html

品種としては三元豚【(ランドレース×大ヨークシャー)×デュロック】と、特別に珍しい訳では全くないけれど、奥久慈の自然豊かな湧水を飲んで育っており、真っ白い脂の甘味が特徴的なのだとか。
白い甘い脂……舐めたい。今すぐ食べに行きたい!

ヨーロッパの人種のるつぼスペインと生ハム

カタルーニャの様式が組み込まれるサクラダファミリア

地中海にあり、古代より様々な民族の歴史が折り重なるようにして形作られてきたスペイン。
地方ごとに育まれた豊かな郷土料理や、宗教的な葛藤を経たことによって生まれた、スペインならではの食文化が大変に魅力的な国だけど、その結晶が「生ハム」だと言ってしまっても、決して過言ではない。

豚食、キリスト教とイスラム教と。

キリスト教でも昔は豚食禁止だったとか

ところで豚肉食を考える上で必ずひっかかりになるのが、豚を不浄の象徴と考えるイスラム教徒の「ハラム」や、ユダヤ教徒の「コーシャ」だ。

特にイスラム教徒については、現在世界の総人口の約3割にあたる20億人に近い数の信者が居ると言われているけれど、2050年とか2070年とか、割と早々にイスラム教徒はキリスト教徒と並ぶ人口(約25億人)になると言われているそう。
そんな、まぁまぁマジョリティな彼らが、宗教上の理由で絶対に口にできないのが「豚肉」。

イスラム教の神であるアッラーが聖書の中で「豚肉」と名指しで禁止していることが直接の原因であるのだけど、その背景として、豚が家畜化される過程で残飯片付け要員として登用された歴史もあり、その当時は豚食による感染症関連のリスクが中東では特に高かったため、宗教的な全面禁止に至ったのではないかとも言われている。

牛生肉(boeuf tartare)、ブリュッセルにて

余談だけども、お肉類の生食、日本でも生レバーが禁止されて久しいけれど、牛はもちろんのこと、豚の生食をする国は依然として存在する。
寄生虫問題もあるけど、「この美味さには敵わんし、新鮮だから大丈夫(←新鮮は寄生虫と関係ない)」とドイツ人やロシア人は言っていた。
まさか生とは知らずに食べていた私は、確かに新鮮な生豚も猛烈に美味いと感じたけれど、東京で見た寄生虫館を思い出すにつけ、美味いのと同じ熱量で何とも言えない気持ちになった。

閑話休題。それで、スペイン。
ローマ帝国の属州になったり、ウマイヤ朝に征服されたり。キリスト教になってイスラム教になって、またキリスト教に戻ったスペインでは、それぞれの文化が融合した料理なども多く見られる。

例えばオリーブ。スペインへ持ち込んだのはローマ帝国だけど、多用する文化を醸したのはイスラム教徒だ。
というのも、イスラム教徒は豚の油が使えない。故に、調理ではオリーブオイルを重用することになり、その中で産み出されたのが、たっぷりのオリーブオイル×アラブ人が伝えたお米や西洋では敬遠されがちな一部の海鮮(タコ等)などのエキゾチックな食材を使って作る「パエリア」や「アヒージョ」。

そして、生ハム。
レコキンスタ(キリスト教徒の再征服)が完了し、イスラム教国家からキリスト教国家に戻ったスペイン。
直後は、古くからの伝統的なキリスト教徒だったことを証明するために、生ハムが踏絵的な役割を果たしていた側面もあったらしい。
イスラム教徒が絶対に口にしない生ハムとワイン(アルコール)をペアリングして美味しくいただく姿を見せるというパフォーマンスが、イスラム教ではないキリスト教徒である自分の正当性を示すことに繋がったそう。
あと普通に、食べたら美味しかったんじゃないかと思う、よっぽど。

経緯はどうあれ、美味しいものが、美味しい組み合わせが、この世に誕生してくれて私は嬉しい。

世界三大生ハム「ハモン・セラーノ」

もう何を買ったら良いのか分からないほど
生ハム溢れるスペイン……♡

そして今では、ヨーロッパいち豚肉の消費量が多いスペインには、世界三大生ハム「ハモン・セラーノ」がある。
残りの2つはイタリアの「プロシュート・ディ・パルマ」と中国の「金華ハム」。

「ハモン・セラーノ」は直訳すると「山のハム」、白豚を寒冷地で最低9ヶ月以上自然乾燥させて熟成されたものだけが、その名を名乗れる。色味は薄ピンク色で低脂肪、肉の旨味が凝縮されている。

そして、もっと厳密に管理されているのが「ハモン・イベリコ」。イベリア地方でどんぐりだけを食事にして育てられた黒豚・イベリコ豚のハムで、ハモン・セラーノと比べて色が濃く、「歩くオリーブオイル」と呼ばれるほど、融点の低い良質な脂を備えているのが特徴。セボ、ベジョータなどのランク分けがされており、中でも最高級品のベジョータは最低16ヶ月以上かけて熟成される、特級品!
「世界一高級なハム」としてギネスに登録されているものもあり、その価格は1本なんと143万円!!

マドリードでおすすめは「生ハム博物館」!

「で、どこで食べればいいんよ」と思った時におすすめなのが、「生ハム博物館」。
名前的に絶対観光客向けでは……?と思っていたけれど、「色々食べられるし、手頃だよ!」ホテルでもおすすめされたので行ってみると、スペイン語らしきものが飛び交っており、地元っ子もかなり来ている様子。
1階では立ち飲みや持ち帰り用が50g等少量から購入でき、2階はレストランになっているそう。
(立ち飲みしたので2階は見ていない。)英語注文可。
写真は撮り忘れた。
1番安いのと、イベリコ豚の高いやつ、その真ん中の値段のものと3種類を注文し、ビールとテーブルワインを1杯づついただく。

日本のスパニッシュやイタリアンの値段を基準にして考えたら、1番安いものでも「破格っ」と叫びたくなるほど、しっかり肉の味がして美味しかった。
イベリコ豚は見た目にもダントツで脂が多く、「歩くオリーブオイル」とはよく言ったもので、トンカツじゃないのにトンカツを髣髴とさせるような、つまり加熱していないのに甘くてトロける脂をレースのように纏っている。なのに(良い意味で)生豚っぽい噛みごたえもあり、もうキングオブおつまみ、永遠に食べていたい感じ。これが至福か。
ところで、真ん中の価格のやつも十二分に美味しかったので、白状すると、飲み終わった時にはどっちがイベリコ豚だったか分からないぐらい楽しんでいた。

散々うんちくを垂れといて恥ずかしい。次回は、もう少し違いのわかる人間であれたら良いなと思う。

Museo del Jamon(ミュゼオ・デル・ハモン、生ハム博物館)
住所:C. Mayor, 7, Centro, 28012 Madrid, スペイン
電話番号:+34 915 31 45 50
営業時間:日曜〜木曜日 9時〜23時半
     金曜・土曜日 9時〜0時半
マドリード市内に他2店舗あり

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