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【病気】皮膚炎の治りが遅いと思ったら、指定難病だった

最初に言っておくと、完治しない指定難病とはいえ、私の場合は日常生活に支障がない状態には戻れるらしい。
そこからは時々通院、怪我や体調に気を付けておけば、上手に付き合っていけるようだ。
不幸中の幸いと言える。
もちろん油断はできないが、健康を維持するという意味ではいい意識づけになるかもしれない。

最後に追記:今回は病気の説明と、実際に何が起こったかをざっとまとめようと思っていたのだが、想定よりしっかりと書いてしまった。
せっかくなので最後まで読んでくれると嬉しい。

2つの病気が併発

病名は二つ、「脂漏性皮膚炎」と「落葉状天疱瘡」。
前者は一般的な皮膚炎、後者が指定難病。
まず脂漏性皮膚炎が発症し、それの治療中に落葉状天疱瘡が併発、という流れだった。
結果として併発の悪影響で脂漏性皮膚炎が悪化、日常生活が困難なレベルの頭皮の痛みへと至った。

脂漏性皮膚炎

私は両サイド刈上げ+長髪を束ねるという髪型なのだが、この刈上げ部分にぽつぽつと腫れが出始めたのが3月末。
少しの痛みと髪の生え際に腫れ、少量のフケが出たりもしていたがそこまで重く捉えておらず、直後に1週間程度の東京出張も控えていたため、病院を後回しにしてしまった。
この段階で診察を受けていれば、さっさと治っていた可能性がある。
(あくまで結果論だが、今の得難い経験値が得られなかった世界線はそれはそれでもったいない気もする)

出張から戻り、4月半ばにようやく受診。
ここでは脂漏性皮膚炎の診断だった。
ストレスや傷からの菌などが原因で、頭皮や顔面の水分と皮脂のバランスが崩れ、腫れやフケが出てくるといった、比較的一般的な皮膚炎だとか。

投薬と頭皮への薬剤塗布で通常は治る病気なのだが、そこから微妙に回復と悪化を繰り返し、5月半ばまで続くことに。
あまりに治りが遅いし、なぜか本来は起こりえないはずの胴体にまで傷ができ始めたことから、血液と胴体傷の組織片の検査となった。

落葉状天疱瘡

検査の結果、指定難病である落葉状天疱瘡の診断が下った。
検査に踏み切ったタイミングが遅くなったことにも理由があり、なんでも本来発症する主な対象は、60歳過ぎの女性だとか。
40歳男性、しかも脂漏性皮膚炎との併発である私は相当のレアケースにあたるらしい。

ざっくり説明すると、病気や怪我を治すはずの抗体が暴走、過度に増えて自分自身の健康な細胞まで攻撃してしまうというもの。
有名なところだと、白血病と似ている(それよりは重症度は低い)。
具体的な症状としては胸、背中、腕などにびらん(肌が破れたような傷)ができ、酷い場合はそこから血や汁、口の中もボロボロになってしまう。
私の場合は「酷い場合」までは至らず、落葉状天疱瘡の中ではまだ症状は軽いほうだった。
とはいえ胴体全体の肌に大小無数の傷、また抗体が正しく機能しないため元の皮膚炎が悪化するという状態になってしまった。

大学病院の予約がめっちゃ先

診断後に大学病院への紹介状の準備と予約を行ってもらったのだが、この予約が曲者だった。
この当日が5/18、大学病院の予約が6/12。
どんだけ先やねんと思わなくはないが、地域で一番大きい病院なので仕方ない。
今にして思えばここで素直に従わず、紹介状だけ持ってさっさと大学病院へ向かう手もあったのかもしれない。
しかし残念ながらその発想には至らず、予約日まで様子を見ながら待つことになった。
結果としてこの期間中に、症状が悪化することとなる。

頭皮の痛みが加速度的に増していく

4月後半あたりから医師の指示で日に二度、朝と夕にシャワーを浴びていた。
しかし5月半ばあたりから、この際のお湯がだんだんと痛く感じるようになり、シャワー直後にもベタつきを感じる(汁が出ている)ようになる。
そして5月28日、自転車で10分くらいの場所へ移動しようとしたところ、この時に浴びる風がかなり痛くなり、それは数分ごとに休憩しなければ耐えられないほどだった。

その後これまでフケや汁だったものが少しずつカサブタとなっていき、最終的に頭皮全体が硬いカサブタで覆われるという状態に。
例えるならば、砂利を混ぜた接着剤を、酷く日焼けした当日の頭皮に満遍なく塗り付けて固めたような。
ほんの少しの動きが、痛んだ頭皮に容赦なく傷を付ける状態だ。
触れるだけで激痛を感じるため、この頃には横になって寝ることもできなくなっていた。

ちょっとしたあくびですら痛みを伴うようになってきたため、少しでもカサブタを柔らかくするために日に2回のシャワー+その間にさらに湯で洗髪で、1日に計4回髪を洗うという生活を強いられた。
ちなみに当時、私はこれを「地獄のシャワー」と呼んでいた。
なにせ弱い水流かつぬるま湯であるにも関わらず、頭にシャワーを浴びることを体が勝手に拒否するくらいの激痛なのだ。
さもバンジージャンプを飛ぶ前かのような覚悟が毎回必要で、声にならない悲鳴と、なぜ自分がこんな目にというやり場のない怒りと悲しみが湧いてくる。
何度か泣いた。
これを日に4回。
今考えても、やはり地獄以外の何物でもない。

入院決定

6/7、日常生活を送れなくなってきた現状に限界を感じ、かかりつけ医に相談、予約日を待たずに紹介状だけ持って大学病院へ向かうことに。
(行ってよかったんかい。)
やはり落葉状天疱瘡であり、入院が必要かもしれないと診察を受けた。
ショックは受けたが、こうなってしまった以上は仕方ない。
と覚悟を決めようとしていたところ、そのまま心電図やレントゲンへ進み、流れるように入院説明まで受けてしまった。
かもしれない、じゃなくて確定なんですね。入院。
結局、6/17に入院という手続きを終え、この日は帰路についた。

オリブ油を信じすぎた

大学病院で強めの痛み止めなどを処方してもらったのだが、なぜかその中に「オリブ油」なるものが混ざっていた。
頭に?が浮かんだものの、指示通りに頭皮全体に薄く広げてみる。
すると驚くことに、これまで頭皮に張り付いていた小石のようなカサブタが、いとも簡単に取れ始めたのである。
調べたところ、皮脂とオリーブの油は成分が非常に似ており、美容・医療の両面で頭皮ケアなどに用いられるとのことだった。
(食用とはまた成分が違うので、興味がある人は調べてみてね。)
要は、病気の症状で枯渇した頭皮の油分をオリブ油が補うことで、カサブタが頭皮から浮いてくれるのだ。
カサブタを取れば当然、その箇所の痛みは圧倒的に軽くなる。
多少ではあるが頭皮の痛みから離れることができ、オリブ油の効果に希望を感じ得ずにはいられなかった。

ただここからの自身の動きが良くなかった。
処方されたオリブ油は少量だったため、薬局で自身で購入し、頭皮全体のカサブタを取ることにしたのだ。
風呂で1時間以上かけ、ゆっくり慎重に、カサブタを取り除いていく。
引くほどの量のカサブタが取れるわけだが、ふと見るとカサブタと一緒に数本の髪束も抜けていた。
油分過多で頭皮が柔らかくなってしまい、毛根が「ごそっと」抜けたのだ。
やばい、これ以上はやばい。
慌てて作業を中断し、地獄のシャワーを済ます。
このシャワー後の頭皮は、とても快適だったことを覚えている。
痛みの最大の原因であるカサブタが激減したので当然だ。

ところが翌日、カサブタが前日よりも増え、さらに痛みの種類に刺すようなものが加わっていた。
悪化したのだ。

精神が限界へ

一体何が起こったのか。
どうやらカサブタを取る際、気を付けてはいたのだが頭皮に傷を増やしてしまったようだ。
そして中途半端に作業を止めた結果、頭皮に馴染んでいたカサブタまで浮いた状態で再度固まってしまい、逆に刺さるような形になっていた。
増えた傷からさらにカサブタ、傷がない箇所にも浮いたカサブタが刺さるという最悪の状態になってしまった。

実はその数日前から目の周りも膿が出始めていたのだが、これも日々悪化していた。
そして6/10の朝6時、頭皮の耐えがたい痛みで目が覚めるが動けず、さらに膿が固まって両目が開かないという事態に陥る。
文字通り、目の前が真っ暗になった。

張り付いたまぶたをなんとか指で開き、洗面台で地獄のシャワーを浴びる。
嗚咽。
心が折れた音が聞こえた。
意味がないとはわかりつつも、藁にも縋る思いで大学病院へ電話した。

泣きながらに痛みを訴え話を聞いてもらい、8:30になれば担当医が来るとのことだったので、それまで待つことに。
時間になり担当医と話したが、とにかく触らずに堪えて待つしかないとのことだった。

ただ歩くだけで痛いようなこの状態で、あと7日も入院を待たなければならない。
正直止めは自分で刺したようなものだが、その時は希望しかなかったのだし、過ぎたことなのでどうしようもない。
後悔と諦めと、これからどうしようかというまったく先の見えない日々に絶望して、ただ洗面台に突っ伏していた。

救いの電話

すると9時に病院側から電話が。
「今朝の病床調整で一つ空いたので、明日から入院できます!」
神よ!!!
特に信心深いわけではないのだが、そう思わずにはいられなかった。
もちろん入院したからと言って、すぐに痛みから解放されるわけではない。
それは理解している。
ただ、その解放への、大いなる一歩なのだ。
これを喜ばずにいられようか。
実際、翌日の入院が決まったという事実だけで、立ち上がる気力が湧いてきた。

そこからは痛みに耐えつつも、大急ぎで入院の準備を整えた。
Uberで美味しいものを奮発して、少しでも気力と体力を回復した。
必要なものを揃え、掃除まで終えてやった。
最後の気力だったが、朝よりも気持ちは遥かに前向きだ。
当日は親も付き添ってくれ、非常にスムーズに入院と相成った。

入院して17日目、6/27にこの記事を書いている。
治療の甲斐あって、腫れや見た目の問題はまだ残るものの、痛みはほぼなくなった。
頭皮のカサブタも全部取れ、睡眠やシャワーがストレスでなく、楽しみに変わっている。
投薬治療の性質上、まだ4週間ほど入院期間が必要だそうだが、自宅療養の日々を思えば何ということはない。
回復に向け、油断なく、そして肩の力を抜いて過ごそうと思う。
私の未来はまだまだ明るい。

感謝

本文では割愛したのだが、闘病中は本当にたくさんの方に救われている。
病院の職員の方々はもちろん、親族、入院中にお見舞いに来てくれる友人たち、自宅療養中にも息抜きや相談に胸を貸してくれた人たちがいてくれた。
SNSでも、オンライン上の友人たちがたくさんの励ましの言葉をくれた。
これを書いている今も、その温かさを思い出して涙が溢れてくる。

病気になったことは不幸な事故だが、それと引き換えて余りある経験を得たと思う。
友がいる、笑い話ができる、シャワーが気持ちいい、横になって眠れる、ご飯が美味しい。
そういった当たり前のことに、当たり前以上の幸せを感じてこれからを生きようと思う。

想定外の長文になってしまったが、恐らく今しか書けない、嘘偽りない気持ちと内容だ。
自身の大事な記録として、そして誰かの何かの糧になれば幸いである。

最後まで読んでくれてありがとう。
明日からも、笑って日々を過ごします。

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