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詩人の希望

詩人の希望

悲歌(エレジー)

濠端の柳にはや緑さしぐみ

雨靄につつまれて頰笑む空の下

 水ははつきりと たたずまひ

私のなかに悲歌をもとめる

すべての別離がさりげなく とりかはされ

すべての悲痛がさりげなく ぬぐはれ

祝福がまだ ほのぼのと向に見えてゐるやうに

私は歩み去らう 今こそ消え去つて行きたいのだ

透明のなかに 永遠のかなたに

原民喜は詩人としては原爆小景の数編が残っている。
水ヲ

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感じることの重さ軽さ

感じることの重さ軽さ

 山本周五郎の戦前の千葉県浦安の生活をえがいた「青べか物語」に貧しい女給にだまされるインテリ青年が出てくる。
原民喜も同じようなことをした。不幸な女性を助けることで自分を助けると錯覚した。そのことは恥ずかしくて一生黙っていたそうだ。小林多喜二も、似たようなことをしたらしいし、あの頃の青年のひとつの行動パターンなんだろうと思う。

それぐらい、立身出世する青年の幅は狭まっていて非人間的だったのだろう

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